できちゃった結婚
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できちゃった結婚(-けっこん)とは、婚姻関係にない男女による性行為(婚前交渉)によって妊娠したため、急遽結婚すること。狭義には男女の一方、もしくは両方が、予定しないにも関わらず妊娠してしまった場合のみとすることもある。かつては修飾語と被修飾語が逆の婚前妊娠と呼ばれた。
英語では、shotgun wedding (marriage)という。妊娠した娘の父親が相手に散弾銃を突きつけて婚約を迫ったという故事に由来する。
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[編集] 概説
1990年代後半より、様々な複合的要素により、婚前妊娠をきっかけにする結婚が急増し、実態が徐々に世間にも認知されて来るにつれて「できちゃった結婚」という名称が使われるようになった。2006年現在、ほぼ一般に定着している名称であるが、定着した要因として、深刻になることなく「思いがけず」「うっかり」「びっくり」「後ろめたい」「観念」「覚悟」などの気持ちを程よい具合に表せる利便性にあるともされている。若者の間では省略してでき婚と呼ばれる場合がある。
多分に否定的なニュアンスを含む言葉であるため、ブライダル業界の間ではこれを避け、妊娠した事を表現する「おめでた」を用いおめでた婚、子宝を授かる意から授かり婚、等と呼称するようになりつつある。それ以外にも、結婚・出産と二重の喜びを意味する「ダブルハッピー」(『ゼクシィ』の用語)、ママ+マリッジ(marriage、結婚)で「ママリッジ」、ほか「マタニティウェディング」等々、様々な造語が考案されている。
このようにブライダル業界がイメージアップを図る一方で「できちゃった結婚」の持つ否定的な印象は根強い。産経新聞が2005年6月にインターネット上で行ったアンケート[1]によれば64%が「風潮を受け容れられない」としている。肯定派も「中絶するよりはまし」「少子化傾向にある中、結婚のきっかけになるなら」といった、消極的肯定・現状追認的な意見が多く、積極的に受け容れる意見は少数派である。
[編集] 統計にみる増加傾向
厚生労働省の資料[2]によれば、日本において嫡出第1子出生数のうち妊娠期間よりも結婚期間の方が短い(つまり結婚前に妊娠している)割合は、1980年(昭和55年)に12.6%だったものが2000年(平成12年)には26.3%と、20年間で倍増している(出産の割合であり、結婚の総件数に占める割合ではないことに注意)。また、若い年代ほどこの割合は大きくなる傾向にあり、20~24歳では58.3%、15~19歳では81.7%にも及ぶ(いずれも2000年)。
増加の原因として、国民生活白書では
- 婚前交渉を許容する意識が一般化したこと
- その上で、法律婚を重視する伝統的な意識が増加に繋がっている
と分析している[3]。 また、結婚情報誌『ゼクシィ』の編集者は、芸能人のできちゃった結婚が多数報道されていることも影響がある、としている[4]。
山田昌弘や三浦展は、結婚相手の収入に対する(特に女性の)要求水準が高まり晩婚化、少子化が進む一方、収入の不安定なパラサイトシングル同士のできちゃった結婚が増えることで、今後ますます社会階層(ないし階級)の固定化及び世襲化が進むとしている。
[編集] 結婚式
出産予定日が近くなるにつれて、母体への負担がかかり結婚式の開催自体が困難になるため、早急に式を執り行うカップルが多い。そのため、従来の結婚式ではこだわる傾向の強い大安などの日取りなどには特にこだわらない場合が多い。
新婦が身重の状態のままで挙式したり、子供を生んで母子ともに落ち着いてから子連れで挙式する人もあり、その形態は様々である。また、妊婦用のウェディングドレスも、現在では一般用と大差なく作られるようになってきた。
[編集] 関連項目
[編集] 参考資料
- ↑ YES? NO? 私も言いたい(産経新聞 できちゃった婚に関するアンケート)
- ↑ 結婚期間が妊娠期間より短い出生の傾向(厚生労働省資料『「出生に関する統計」の概況 人口動態統計特殊報告』)
- ↑ 平成17年版 国民生活白書 法律婚を重視する伝統的な意識が「できちゃった婚」に反映されている
- ↑ できちゃった結婚をちょっとまじめに考えてみる 結婚が先か、妊娠が先か