あかねさす紫の花
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「あかねさす紫の花」は演劇作品(ミュージカル)。宝塚歌劇団で公演された。
奈良時代を舞台に、中大兄皇子(後の天智天皇)・大海人皇子(後の天武天皇)の兄弟と、2人に愛される額田女王との恋愛模様、という古代史上に名高い伝説(真相は定かでない)をとりあげた作品。歌劇団専属劇作家・柴田侑宏によるオリジナル作品。
表題は、「萬葉集」にある、額田が大海人に贈ったといわれる歌「あかねさす 紫野ゆき 標野(しめの)ゆき 野守は見ずや 君が袖ふる(歌碑が八日市(現在の東近江市)にある)」による。この歌を歌詞に取り入れた主題歌「紫に匂う花」(大海人が歌う)をはじめ、数首の萬葉歌が劇中のミュージカルナンバーに取り入れられている。作曲は柴田との共同作業が多かった寺田瀧雄。題名の前に「万葉ロマン」と銘うたれている。
1976年花組公演として宝塚大劇場で初演。77年雪組でも公演。95年雪組で再演。96年雪組が地方公演(東北~九州7都市にて)、2002年花組により福岡、2006年月組が名古屋で公演。
巧みな人間ドラマで知られる柴田作品の中でも傑作とみなされており、上記の通り再演の多い人気作品となった。執筆は一貫して柴田により、初演から1995年までは柴田演出だったが、病による柴田の視力低下により、2002年からは、尾上菊之丞が振付・演出を担当している。
柴田が初演出時以来、しばしば執筆してきた“王朝ロマン”の中でも人気の高い一編となったが、この作品の姉妹編として、柴田は「あしびきの山の雫に」・「たまゆらの記」(「あしびきの…」項目参照)を執筆している(柴田自身、「あかねさす…」を加えた三部作のつもりで書いたと述べている)。また、柴田の2004年作品「飛鳥夕映え/蘇我入鹿」は入鹿を中心に「あかねさす…」のやや前の時代の宮廷を描いた作品であった。
[編集] あらすじ
額田は、大和・額田郷(ぬかたのさと)の豪族の家にうまれ、宮廷生活を夢見る闊達な娘。同郷の若い仏師・天比古(あめひこ)は彼女に想いを寄せていたが、身分の違いから結婚できないため、彼女の顔を原型として菩薩像を彫ることで、想いを芸術に昇華させようとしていた。
やがて額田は、大海人皇子が中大兄皇子について額田郷を訪れた時、大海人に見初められ、憧れの宮廷に。心優しい大海人と妃となった額田は仲睦まじく、2人の間には皇女(ひめみこ)も生まれる。
一方、政治力に優れた皇太子・中大兄は中臣鎌足たちに支えられ、大化の改新を推進していたが、皇女を生んであでやかさを増した額田に惹きつけられ、強引に額田を自分の妃にしてしまう。尊敬する兄からのこの仕打ちに、大海人は無力感に打ちのめされる。
額田をめぐって葛藤する大海人、中大兄、そして兄弟間の亀裂を懸念し政略をめぐらす鎌足、また天比古も、遊女・小月の自分への愛を感じながらも額田を忘れられずにいた。様々な人々の思いを巻き込みながら、歴史が動いていく…
[編集] 公演記録
1976年花組 | 1977年雪組 | 1995年雪組 | 2002年花組 | 2006年月組 | 2006年月組(全国) | |
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中大兄皇子 | 榛名由梨 | 麻実れい | 高嶺ふぶき/轟悠 | 春野寿美礼 | 霧矢大夢 | 大空祐飛 |
大海人皇子 | 安奈淳 | 汀夏子 | 一路真輝 | 瀬奈じゅん | 瀬奈じゅん | 瀬奈じゅん |
額田女王 | 上原まり | 東千晃 | 花總まり | 大鳥れい | 彩乃かなみ | 彩乃かなみ |
天比古 | 松あきら | 常花代 | 高嶺ふぶき/轟悠 | 愛音羽麗 | 彩那音 | 龍真咲 |
中臣鎌足 | 麻月鞠緒 | 尚すみれ | 香寿たつき | 矢吹翔 | 嘉月絵理 | 嘉月絵理 |
ピンク枠が主役。
上記の他、1996年には、雪組が地方公演している。
[96年版主要配役]大海人:一路/中大兄:轟[固定]/額田:花總/天比古:高倉京/鎌足:香寿。
- 1976年・花組公演/宝塚大劇場・東京宝塚劇場で公演
初演版。当時、花組は榛名由梨・安奈淳のダブルトップ体制。
トップ2人の個性から、榛名(演技派として知られた)を個性の強い中大兄に、安奈(純粋な雰囲気と歌唱力で知られた)を大海人に配役し、安奈に美しい主題歌「紫に匂う花」が与えられた。
- 1977年・雪組公演/宝塚大劇場・東京宝塚劇場で公演
副題「大海人皇子の章」。
涼しげな舞台姿で人気だったトップスター汀夏子を大海人に、長身で強い印象のある二番手麻実れいを中大兄に配役、汀演じる大海人を前面に出した脚本となった。
76年版に比べて、大海人の出番や彼に言及するセリフが増え、また大海人のナンバー「宇治の思い出」が追加されている。
- 1995年・雪組公演/宝塚大劇場で公演
“大海人皇子版”として再演。東京では公演されていない。
二番手格の2人高嶺ふぶきと轟悠が中大兄と天比古を役替りで演じ、天比古にナンバーが追加されている。
トップスター一路真輝は歌唱力に定評があったため、大海人の歌唱場面が増えた他、鎌足を演じた香寿たつき、小月を演じた星奈優里など、脇役まで充実していた当時の雪組にあわせ、鎌足にもナンバーが追加された。この95年版から寺田に師事していた吉田優子が作曲陣に加わっている。
95年版は宝塚のみでの公演だったが、翌96年に若干メンバーを入れ替えて地方公演。
- 2002年・花組公演/福岡・博多座で公演
初演以来久々の花組公演で、トップスター春野寿美礼の御披露目公演となった。
“中大兄皇子版”となって、中大兄が額田への想いを語るセリフ、大海人が歌う「紫に匂う花」と中大兄の歌う「恋歌」が重なり合う場面などが加筆され、最終場面にも新場面が取り入れられた。
- 2006年・月組公演/名古屋・中日劇場で公演
“大海人皇子版”。2002年に引き続き瀬奈じゅんが大海人皇子を演じる(主演・準主演両方で大海人を演じたのは瀬奈が初めて)。
最終場面などを含め、全体的に95年版・2002年版を組み合わせた上演となっている。
[編集] 関連商品など
初演版と1977年版はそれぞれ公演を実況収録したLPが発売された。
1995年版は、[中大兄:高嶺/天比古:轟]の配役で、公式実況ビデオと実況CDが発売された(以上全商品は現在生産中止)。95年版の実況ビデオは生産中止になったが、2006年にDVDで復刻され、DVD版は現在入手可能。また、公演当時には[中大兄:轟/天比古:高嶺]の配役で、舞台中継もされていた(NHK-BS2)。
2002年版は公式実況DVD、同ビデオが現在発売中で、この映像をもとに、舞台中継もされている(WOWOW)。2006年版も公式実況DVD、同ビデオが発売されている。