スタージョン級原子力潜水艦
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スタージョン級原子力潜水艦 | |
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艦級概観 | |
艦種 | 攻撃型原子力潜水艦 |
艦名 | 魚名、人名。 |
前級 | パーミット級原子力潜水艦 |
次級 | ロサンゼルス級原子力潜水艦 |
スタージョン級原子力潜水艦(-きゅうげんしりょくせんすいかん、Sturgeon class submarine)はアメリカ海軍の攻撃型原子力潜水艦。パーミット級の後継で、パーミット級(14隻)を上回る37隻が建造され、1960年代末から1980年代前半にかけて攻撃型潜水艦の主力をなした。
目次 |
[編集] 概要
本級は、対潜戦を第一の任務とし、速力よりも静粛性と探知能力を重視して設計され、初めて7翼のハイスキュード・プロペラが採用された。本級以前の潜水艦開発を踏まえて、安全対策、兵装、居住性を改善する機軸が盛り込まれた。これにより本級は高い評価を得たものの、排水量の増大と船型の大型化は避けられなかった。特に、涙滴型から魚雷型(こちらの方が水中抵抗が増大する)に船型が変更されたにもかかわらず、出力の向上がなかったため、速力はいっそうの低下(パーミット級の28ノットから25ノットに)を見た。
就役期間中に、トマホーク巡航ミサイル、ハープーンなどの新兵器が登場し、魚雷とサブロック対潜ミサイルのみだった攻撃型潜水艦の兵装は著しく多様化したが、兵装搭載可能量の増大は小幅にとどまったため、搭載量の分配にやや悩まされた節がある(注1)。
冷戦後の研究により、設計命数は当初の20年間から30年間に延長可能であることが示され、ソナー・システムの改良、燃料交換、新型の曳航式ソナー・アレイの増設を含む改装が検討された。しかし、冷戦後の軍縮により、情報収集任務に従事するパーチ (Parche、SSN-683)を除く全艦が1990年代末までに、また、2004年10月19日にパーチが、それぞれ退役したことにより、スタージョン級は米海軍から完全に姿を消した。
[編集] 派生型
[編集] グレナード・P・リプスコム (SSN-685)およびナーワル (SSN-671)
本級の船体を元に、自然循環循環式原子炉を搭載するナーワル (SSN-671)と、ターボ・エレクトリック方式推進を採用したグレナード・P・リプスコム (SSN-685)の2隻が建造され、さらなる静粛性の向上を含んだ次世代攻撃原潜の原型が模索された。詳細は各記事を参照。
[編集] 特殊任務艦
1979年、パーチ (SSN-683) (英語版記事)は、シーウルフ (SSN-575)、ハリバット (SSN-587)に続く特殊任務艦に改装された。この場合の「特殊任務」とは、ソ連領海内に進出しての情報収集任務に従事することを意味し、同年、電子情報収集及び分析装置を増載する改装を受けた。1987~1991年には、「研究開発(Research & Development)」計画に従い、メア・アイランド海軍工廠で、セイル前方に約30mの区画を挿入し、船体を延長する工事が行われた(同時に炉心交換も行われた)。これにより、海底作業用の区画および無人遠隔作業艇(ROV: Remote Operation Vehicle)格納庫が増設され、さらに72名の追加人員を輸送可能となる。これに伴い要目は大きく変わり、水中排水量は7800tに増大し、速力はさらに低下した。
また、この大改装に伴って、交代艦として、リチャード・B・ラッセル (Richard B. Russell、SSN-687)が所要の改装を施された上で、4隻目の特殊任務艦に指定された(1987年)が、パーチの復帰に伴って指定は解除された。
[編集] 要目
スタージョン級は全部で37隻が建造されたが、最後期に建造された9隻(SSN-678~687、以下後期建造艦)は船型が拡大されたため、また、上述の様にパーチ(SSN-683)は大規模な改装を受けているため、要目に変化がある。以下では、後期建造艦およびパーチの要目については、前期建造艦と異なる部分のみ特に記し、共通部分は前期建造艦の要目に一括する。
[編集] 前期建造艦
- 計画番号:SCB 188A、SCB 188M(SSN-678~684、686、687)
- 種別:攻撃型原子力潜水艦(SSN)
- 同型艦:37隻(SSN-637~639、646~653、660~670、672~684、686、687)
- 全長:89.1m
- 全幅:9.7m
- 喫水:7.4m
- 排水量(水上/水中):4,229t/4,762t
- 予備浮力:12.6%
- 機関:原子力ギアド・タービン方式 —— WEC S5W型加圧水型原子炉×1基/タービン×2基/7翼ハイスキュード・スクリュー×1軸
- 出力:15000SHP
- 電池:ガピーIC型×126個1群
- 速力(水上/水中):15kt/25kt
- 乗員:107名(士官12名、先任兵曹12名、下士官兵83名)
- 安全潜入深度:396m
- 発射管:533mm水圧式魚雷発射管Mk63×4 —— 魚雷・ミサイル(サブロック対潜ミサイル、後にハープーン、トマホークが追加)×23、または機雷
- ソナー:BQQ-1Bシステム(BQS-6B、BQR-7、BQS-8)、BQG-3 PUFFS、WLR-9A
- 水中射撃指揮装置:Mk113 Mod6
- 電子戦機材:BPS-14またはBPS-15、BRD-6、WLR-4
[編集] 後期建造艦
- 全長:92.1m
- 喫水:9.1m
- 排水量(水上/水中):4460t/4960t
- 予備浮力:11.2%
[編集] パーチ(SSN-683 Parche)
注:以下は1987~91年の改装後の数値
- 全長:122.4m
- 喫水:8.8m
- 排水量(水上/水中):不明/7800t
- 水中速力:20kt以上
- 乗員:179名(士官22名、先任兵曹含め下士官兵157名)
[編集] 同型艦一覧
同型艦の一覧を示す。艦名の後ろの略号は追加的な能力が付与されていることを示す。
[編集] 略号
- (DDS):ドライデッキシェルター(Dry Deck Shelter)の搭載・運用能力。海軍特殊部隊の人員と装備を収容し、水中からの出動を可能にする装備。
- (DSRV):深海潜水救難艇(Deep Submergence Rescue Vehicle)の搭載・運用能力。
- (R&D):「研究開発(Research & Development)」計画による改装。上記「特殊任務艦」の項を参照。
[編集] 前期建造艦
- SSN-637 スタージョン(Sturgeon)
- SSN-638 ホエール(Whale)
- SSN-639 トートグ(Tautog)
- SSN-646 グレイリング(Grayling)
- SSN-647 ポーギ(Pogy)
- SSN-648 アスプロ(Aspro)
- SSN-649 サンフィッシュ(Sunfish)
- SSN-650 パーゴ(Pargo)
- SSN-651 クエールフィッシュ(Queenfish)
- SSN-652 パッファー(Puffer)
- SSN-653 レイ(Ray)
- SSN-660 サンド・ランス(Sand Lance)
- SSN-661 レイポン(Lapon)
- SSN-662 ガーナード(Gurnard)
- SSN-663 ハンマーヘッド(Hammerhead)
- SSN-664 シー・デヴィル(Sea Devil)
- SSN-665 ギターロ(Guitarro)
- SSN-666 ホークビル(Hawkbill) (DSRV)
- SSN-667 バーゴール(Bergall)
- SSN-668 スペードフィッシュ(Spadefish)
- SSN-669 シーホース(Seahorse)
- SSN-670 フィンバック(Finback)
- SSN-672 ピンタド(Pintado) (DSRV)
- SSN-673 フライング・フィッシュ(Flying Fish)
- SSN-674 トレパン(Trepang)
- SSN-675 ブル-フィッシュ(Bluefish)
- SSN-676 ビルフィッシュ(Billfish) (DSRV)
- SSN-677 ドラム(Drum)
[編集] 後期建造艦
- SSN-678 アーチャーフィッシュ(Archerfish) (DDS)
- SSN-679 シルヴァーサイズ(Silversides) (DDS)
- SSN-680 ウイリアム・H・ベイツ(William H. Bates、ex-Redfish) (DSRV)
- SSN-681 バットフィッシュ(Batfish)
- SSN-682 タニー(Tunny) (DDS)
- SSN-683 パーチ(Parche) (R&D)
- SSN-684 カヴァラ(Cavalla) (DDS)
- SSN-686 L・メンデル・リヴァーズ(L. Mendel Rivers) (DDS)
- SSN-687 リチャード・B・ラッセル(Richard B. Russell) (DSRV)
[編集] 関連事項
[編集] 外部リンク
- Sturgeon class —— アメリカ科学者連盟(FAS)公式サイト内の記事
- Purche SSN-683 —— FAS公式サイト内の記事。「研究開発」計画による改装後の艦容の変化を示す対比図あり。
- Parche683.net —— パーチの元乗員が運営するサイト