雲龍型航空母艦
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雲龍型航空母艦(うんりゅうがたこうくうぼかん)は、日本海軍が太平洋戦争中に運用された航空母艦である。竣工が1944年以降となったために、搭載機がなく、また出撃機会もなかった。
[編集] 概要
太平洋戦争の開戦直前の1941年8月に日本海軍は、戦力整備計画である第5次充実計画(通称:マル5計画)を改定し、昭和十六年度戦時艦船建造及航空兵力拡充計画(通称:マル急計画)を策定した。このマル急計画において、建造が比較的容易な中型空母の整備計画が盛り込まれていた。この計画に則り、中型空母である雲竜型航空母艦の開発が開始された。マル急計画では1隻のみの整備予定であったが、ミッドウェー海戦で4隻の空母を喪失したことに伴って策定された改マル5計画において、15隻の整備計画があげられた。ただし、その後の戦局悪化。資源不足などにより実際に起工されたのは6隻に留まる。
雲龍型は先に建造された飛龍の改良型である。これは、飛龍の大きさが中型で建造が行いやすかったこと、航空艤装が適切であったことによる。ただ、艦橋の位置は飛龍では左舷にあったものが、雲龍型では排気口と同じ側の右舷前部に移されている。航空機用エレベーターの数も3基から2基に減少している。中央エレベータは廃止されたものの、新型機に対応し、各エレベーターは14メートル四方と大型化している。このほか、不燃性塗料の使用や吸気口の位置の改善や消化装置の充実、ガソリンタンクの周りをコンクリートで囲み誘爆防止を行うなど、防御力の強化も図られている。また、着艦制動装置も新型の三式着艦制動装置となり、新型・大型の艦上攻撃機に対応するものとなっている。雲龍型の舵は蒼龍と同じ2枚舵に変更されている。
搭載機数は65機を予定しており、内訳は艦上戦闘機15機、艦上爆撃機30機、艦上攻撃機20機である。武装として、12.7cm連装高角砲6基を舷側に装備、そのほか高角機銃多数を装備していた。
機関は蒸気タービンであるが、時局上、その製造・調達が困難であったために、駆逐艦や巡洋艦など建造予定の他艦からの転用も多い。そのため、艦によって出力が異なっている。なお、排気口は日本海軍独特の下方排出である。
起工したのは6隻であるが、竣工したのは雲龍・天城・葛城の3隻であり、笠置・阿蘇・生駒の3隻は建造中止となっている。
また、雲龍と天城の竣工直後に起きたレイテ沖海戦の後、海軍軍令部は「神武作戦」とよばれるレイテ湾への再突入計画を立てたのだが、雲竜型はその際の主力と位置づけられた。それに備えて雲龍と天城は航空戦隊を編成しているが、神武作戦が中止されたため、戦闘任務で出撃した経歴はない。 竣工した雲竜型は2隻が戦没(雲龍は潜水艦の雷撃により戦没、天城は空襲により大破着底)し、終戦まで健在だったものは3番艦の葛城1隻のみである。
[編集] 要目
- 公試排水量:20,400t
- 全長:227.35m
- 全幅:22.0m
- 航続距離:8,000海里(18ノット)
- 最大速力:32から34ノット(艦により異なる)
- 機関:蒸気タービン4軸(出力 10万馬力から15万馬力 艦により異なる)
- 乗員:約1,500名
[編集] 同型艦
- 雲龍(うんりゅう 302号艦):1944年8月6日竣工。1944年12月19日、物資輸送任務中、ガトー級潜水艦レッドフィッシュ(SS-395)の雷撃により撃沈。
- 天城(あまぎ 5001号艦):1944年8月10日竣工。1944年7月28日、呉港外三ツ子島沿岸で被爆、大破横転。
- 5002号艦 : 信濃を建造する代償により建造取止。
- 葛城(かつらぎ 5003号艦):1944年10月15日竣工。呉港外の三ツ子島沿岸に停泊中、爆撃を受けるも本艦のみ軽微な損傷で敗戦まで残り、戦後復員船として使用される。
- 笠置(かさぎ 5004号艦):1945年4月1日建造中止、完成度84パーセント。戦後、解体。
- 5005号艦 : 信濃を建造する代償により建造取止。
- 阿蘇(あそ 5006号艦):1944年11月1日建造中止、完成度60パーセント。特攻機用爆弾「さくら弾」の標的として使用。なお、このときに得られたデータは特攻が有効な攻撃方法ではないことを表す、誠に皮肉な結果を示したという。
- 生駒(いこま 5007号艦):1944年11月17日建造中止、完成度60パーセント。
- 鞍馬(くらま 5008号艦): 生駒の次に建造予定が戦況の悪化により建造取止。
- 5009号艦 : 戦況の悪化により建造取止。
- 5010号艦 : 戦況の悪化により建造取止。
- 5011号艦 : 戦況の悪化により建造取止。
- 5012号艦 : 戦況の悪化により建造取止。
- 5013号艦 : 戦況の悪化により建造取止。
- 5014号艦 : 戦況の悪化により建造取止。
- 5015号艦 : 戦況の悪化により建造取止。