近鉄20100系電車

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第6回（1963年）
ブルーリボン賞受賞車両

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20100系電車（20100けいでんしゃ）とは、近畿日本鉄道に在籍し、1962年2~4月に製造された世界初のオール2階建て電車。「あおぞら」号の愛称がある。

主に修学旅行の小学生を中心とした、団体専用列車（修学旅行列車）向けとして製造された。

1959年に登場した、10100系「新ビスタカー」を使用した近鉄特急が利用者に好評を得ていたが、その当時、伊勢志摩方面へ向かう修学旅行の児童たちは2200系・2250系（大阪線）、6421系（名古屋線）などの旧型車両を使っていた。2階建て電車が人気を得る中、小学生たちにも2階建てに乗るチャンスを与えること、また短い編成で多くの乗客を運べることなどのメリットを生かし製造されたものである。

なお「あおぞら」号の愛称は、公募によって大阪市立玉川小学校の児童の案が選ばれた。

全車2階建て車であることが評価され、1963年に鉄道友の会のブルーリボン賞を授賞した。

[編集] 特徴

3両編成の全車が2階建て構造となっている。このうち、中間車（サ20200形）に機器類やパンタグラフ、トイレを集中的に配置し、両先頭車（モ20100、モ20300形）は収容力を最大限に取った構造とした。2階建てのため、前面はおでこの広い大型の断面であり、この車両の特徴となっている。塗装は、クリームと赤のツートンカラーで、車体側面には10100系と同様に「VISTA CAR」のロゴも入れられた。

車内は、同じく修学旅行用電車として運行していた日本国有鉄道 155系電車に範を取り、通路を挟んで片側を3人掛け、反対側を2人掛けのボックス型クロスシートとし、座席と並行に網棚を設置して収容力を高めた。ただし、クロスシートの通路側にはひじ掛けを装備していない。また、階上席の階段近くはロングシートとなっている。車端部は平屋となっており、この部分もボックス型クロスシートである。運転席後部の座席は引率者用として、放送装置や救護用の折りたたみベッドを用意した。

乗降扉は片引き戸で、1両に2ヵ所設けられている。また、妻部分の貫通扉は自動扉（マジックドア）が採用されている。トイレは中間車に和式が2ヵ所設置されている。

冷房装置は、特急車ではないことや設置スペースの問題から見送られ、代わりに外気より2度程度温度を下げた空気を送る冷風装置を設ける形とした。このため、側窓は開閉式の2段窓となった。

性能面では、当時の青山越え対応型通勤車である1480系に準じたものとし、主電動機は三菱電機製MB-3020-D（端子電圧340V時定格出力125kW/1,800rpm）を両先頭車に搭載、制御装置は三菱製ABFM型単位スイッチ式である。なお、ギア比は1480系と共通で、平坦線釣合速度は125km/hである。制動（ブレーキ）装置は電磁直通式のHSC-Dで、常用自動制動、電気制動と抑速制動も装備する。台車については、特急車に準じて近畿車輛製空気バネ付きシュリーレン式台車であるKD-43が採用されている。制御装置や補機類は、中間車の階下部分にまとめて搭載されている。

[編集] 運用・廃車

3両固定で5編成、計15両が近畿車輛で製造された。3編成が大阪線、2編成が名古屋線の所属となっていた。

主に大阪・名古屋方面から伊勢志摩への修学旅行を初めとする、団体輸送で使われたが、夏期の一般旅客向け臨時快速急行列車や大阪線沿線の高校野球応援輸送列車、天理臨に運用されたこともある。また、当初は通勤列車にも使う計画があったとされる。特別料金不要の2階建て列車の草分けとも言えよう。その際、本来20100系が就くべき団体輸送にはクロスシートの通勤車である2600系や2610系が充当されていた。この処置は団体輸送に冷房車を当てるという方針から本来の製造目的とは入れ替わった使い方となったとされている。

約四半世紀にわたって活躍したが、老朽化に加えて冷房装置がないことが問題となり、かつ冷房化するスペースも車内に確保できないため、1989年10月に18200系を改造したあおぞらIIを代替車両として、お別れ運転を行い事実上の引退となった。第1編成を残して間もなく廃車解体され、残った第1編成も休車状態となり、1993年12月に保有車両数2000両突破記念のイベントで走行したのを最後に1994年1月に廃車となり、現存していない。

なお、1990年に登場した団体専用車である20000系楽の編成と20100系第1編成の車両番号は、形式こそ違えど一部重複している（20100系のモ20101、サ20201と20000系のク20101、モ20201）。

[編集] 関連商品

エンドウより1980年代初頭に真鍮材一体プレス成型によるNゲージ規格の鉄道模型として当時の実車に取材した完成品が発売された。この製品は生産数が比較的少なく、しかもその後増産されなかったため希少性が高まり、中古市場で価格が高騰した。その後今世紀に入ってグリーンマックス系列のクロスポイントブランドでNゲージの真鍮製キットが原型、晩年の2種で発売され、更に2006年1月に入ってマイクロエースよりNゲージ鉄道模型で発売されている（完成品）。この製品は原型（登場時）、晩年(改造後）の2種を基本とし、お別れ運転時の9連セットも別途発売された。なお、HOゲージでは谷川製作所が真鍮製ボディーキットの形態で長期に渡って販売している他、エンドウが2005年に車体キットおよび完成品として新たに模型化している。