衛紹王

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衛紹王（えいしょうおう（廃帝）、？－1213年、在位は1208年－1213年）は金の第七代皇帝で、第五代皇帝である世宗の第七子。生母は李元妃。諡は紹王。幼名は興勝。諱は允済（ユンジ）、後に永済。女真名は果縄（ハヒェン）。子に皇太子で梁王従恪らがいる。同母兄に鄭王允蹈、同母弟に潞王允徳

[編集] その生涯

父の存命中には薛王・滕王に封じられ、甥の章宗から、潞王、韓王に任じられた後に承安2年に衛王に封じられる。この頃、異母兄である宣太子允恭（章宗の実父）が皇帝位（顕宗）を追贈されたために名前を「永済」と改めている。

長身の美男子で質素な人物としての評価がある一方で、暗愚な人物と見る向きもあった。ある時に章宗の命でモンゴルへ金の正使として、宗室の福興（完顔承暉）を副使に従えて、モンゴル平定直前のチンギスハーンの所へ赴いた。だが衛王の容貌を見たチンギスハーンは｢金の皇族と申すから、どんな人物かと思ったらこんな愚鈍な男であったか｣と言い出して、南の方面に唾を飛ばしたという。そしてチンギスハーンは正使の衛王を無視して、副使の福興に対応し、やがて用が済むと自分の幕舎に帰った。今までにない屈辱を受けた衛王は帰途して、甥の章宗に｢野蛮なモンゴル族を直ちに滅ぼすべきである｣と直訴した。

数年後、章宗が崩御する際に、六人の皇子が夭折したために跡継ぎを失った章宗は個人的に親しく年齢が近かった叔父である彼を後継者に推挙して亡くなった事から、重臣達と永済の生母・李氏の工作によって即位した。衛王即位の報を聞いたチンギスハーンはこれを喜び｢金にあんな馬鹿が即位しおったか。よし先祖代々の仇敵である金を滅ぼすよい機会である｣と述べて、遠征の準備を始めた。新皇帝の衛王もモンゴルに備えて、戦争の準備を調えた。1210年春、チンギスハーンは勇猛なモンゴル軍20万の精鋭を率いて金遠征に動き出した。

こうしてモンゴルの快進撃に対して衛王はなんの対策も無く、ただ手を拱いているだけであった。衛王は定薛将軍に命じてモンゴル軍を防御させたが、定薛将軍を初め金の軍隊は壊滅した。また、遼の旧宗族（広義の皇族）であった契丹人の耶律留哥が自ら遼王と称して、モンゴルに呼応し、謀反を起こした。

1213年の秋8月辛亥の日に衛王は敗戦の責任を追及される事を恐れた将軍・胡沙虎のクーデターによって、捕らわれて幽閉された。翌月に胡沙虎の命を受けた宦官の李思中によって毒殺された。

死後、胡沙虎は海陵王の例に倣って称号の剥奪を画策したものの、朝廷内に衛王に同情的な勢力があることを知り、東海郡侯への降格が決められた。胡沙虎が殺害された後の貞祐4年に即位直前の衛王に復されて「紹」の諡号が贈られた。なお、彼の娘の哈敦（ハトン）公主は跡を継いだ従兄の宣宗の命で、モンゴルに嫁いで行ったという。彼の息子である太子の従恪は父が毒殺された後も20年間も幽閉されたというが、1234年の金滅亡時にモンゴル軍によって処刑されたという。