大鳳 (空母)

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大鳳（たいほう）は、日本海軍の航空母艦。

空母機動部隊として艦載機を載せて実戦に参加した日本海軍の正規空母の中では最後に竣工した。

目次 1 概要 2 諸元 3 大鳳、謎の迷彩 4 不運の最期 5 沿革 6 参考文献 7 関連項目

[編集] 概要

1939年に策定された第4次充実計画（通称マル4計画）において計画された航空母艦であり、重防御を特徴としていた。

大鳳以前の日本空母の飛行甲板は、同時期のアメリカ空母と同様にほとんど無防御だった。急降下爆撃機の発達により、爆撃によって空母の発着能力が容易に奪われてしまうことを憂慮した日本海軍は航空母艦の飛行甲板には装甲防御が必須であると考えた。この考えに基づき建造された大鳳は、日本海軍が待望久しかった飛行甲板に装甲を施した空母であった。また電気溶接も一部採用された。

• 装甲された飛行甲板

飛行甲板として、25mmの特殊鋼板（DS鋼板）に75mmのCNC甲板を張り、500kg爆弾の急降下爆撃に耐える防御力とした。ただし、飛行甲板全てを装甲とした場合、艦の重心を押し上げることになるため、離着艦に必要な部分のみにほどこし、他は従来どおり木の甲板とした（中央切断構造図に木の甲板の使用を裏付ける記述がある）。なお、以下の特徴も、重心上昇を防ぐために施された物である。

• ハリケーン・バウ

重心上昇を防ぐため、大鳳の甲板は他の空母より一段少なくなっており、結果、乾舷（海面から飛行甲板までの距離）が艦の大きさに対し低くなっている（満載時で、飛龍とほぼ同じ12メートル）。そのため艦首が波を被っても浸水しないよう、同時期の英国空母や現代の米空母のように艦首外板を飛行甲板まで延長するハリケーン・バウ（エンクローズド・バウ）という形式をとり、艦首部と甲板が一体化していた。

• アイランド（傾斜煙突）

大鳳は飛鷹・隼鷹と同様、煙突と艦橋を一体化したアイランドを右舷に有していた。もともと、このアイランドは大鳳に装備予定であり、実験を兼ねてこの二艦に設けられた。またこれも飛鷹・隼鷹と同じく、煙突は飛行機の運用を妨げないよう右舷側（外側）に傾けられており、大鳳も含めて大戦後半の日本空母の特徴となっている。それまでの日本空母で一般的だった湾曲型煙突を採用しなかったのは、飛行甲板が装甲化によって厚くなったため、この下に湾曲煙突を設けた場合、位置が低すぎて先端が海面に接近し、傾斜した場合や悪天時での浸水が危惧されたためであった。なお、このアイランドと傾斜煙突を新造時から装備した空母は大鳳のみであり、他は全て改造艦であった。

• 少ない搭載機

大鳳の艦載機の搭載数は61機（資料によっては53機）と、他の大型空母が80～90機前後なのに比べるとやや控え目である。これも飛行甲板の装甲化による重心の上昇と艦内容積の減少によるもので、この点はイギリスのイラストリアス級と類似している。また、烈風・流星といった大戦後期の大型艦載機を基準に搭載機の定数が計算されているため、大戦前建造の空母に比べて定数は少なくなっており、一般に言われているほど攻撃力が不足しているわけではない。ただし、艦載機については他の空母に補完させるという案もあった。すなわち防御力のある大鳳が危険な前方に進出、より安全な後方に控えた他の空母の艦載機を受け入れ、補給の上で再出撃させるという、「洋上の補給基地」的な運用法である。現代の空中給油にも通じる航空機の行動距離の延長策で、日本海軍が追求し続けたアウトレンジ戦法の究極の形とも言える。しかし、これは基礎研究段階での一案に過ぎず、実際にこのような運用がなされたことはない。

[編集] 諸元

• 基準排水量 29,300t
• 出力 160,000馬力
• 機関 タービン4基4軸
• 全長 260.6m
• 全幅 27.7m
• 飛行甲板全長 257.5m
• 速力 33.3kt
• 航続距離 18ノットで10,000浬
• 武装 10cm連装高角砲6基12門・25mm3連装機銃37基
• 艦載機 61機
• 定員 2,038人

[編集] 大鳳、謎の迷彩

大鳳には、戦争後期の空母と同じく、「あ号作戦」（マリアナ沖海戦）直前、2日がかりで迷彩が施されたが、写真などの資料は現在まで見つかっておらず、迷彩のデザインや塗装をした士官らは大鳳とともに戦死。迷彩デザインは謎となっている。もっとも、飛行甲板はゴム系の黒塗料で塗りつぶしたと言われている。

[編集] 不運の最期

大鳳の沈没は、格納庫内に充満した気化燃料（ガソリン）に引火、爆発したことが原因だった。これは閉鎖式格納庫が持つ弱点が最悪の形で現れたものだったが、たった1発の魚雷で沈没に至るまでにはいくつかの不幸な積み重ねが存在した。

• タンクからのガソリン漏れは被雷の衝撃で継ぎ目がはずれたために生じたが、この継ぎ目の溶接に不具合があったと言われている。大鳳には電気溶接も取り入れられていたが、当時の日本はこれらの新技術を十分吸収・体得できていなかった。
• これも被雷の衝撃で、艦載機用エレベーターが故障・停止し、飛行甲板の開口部を塞いでしまった。もしエレベーターを降ろすことができれば、気化燃料を、あるいは万一引火したとしても爆風を、開口部から逃がすことができたかもしれなかった。
• 外部からの攻撃には強みを発揮する装甲甲板が、内部からの爆発では仇となった。爆風が上に抜けず、ダメージが艦全体に及ぶことになってしまった。（装甲化はされていないが、やはり飛行甲板に強度を持つ米空母レキシントンが、同様の経過で最期を迎えている。）

また当時、敵潜・アルバコアは日本艦隊を捉えてはいたものの、うまく射点につくことができず、振り切られる寸前に、いわば「腰だめ」で魚雷を放ったと言われている。まぐれ当たり同然の一発で落命したとあっては、つくづくこの時の大鳳は運に見放されていたとしか言いようがない。

なお、閉鎖式格納庫の持つ危険性を日本海軍も把握していた模様で、次の空母信濃では日本空母として初めて、半開放式の格納庫を取り入れている。しかし、この時はまた別の問題（突貫工事による工作精度の低下など）から所期の性能を発揮できず、やはりあえない最期を遂げてしまうのである。

[編集] 沿革

• 1941年（昭和16年）7月10日 川崎重工業神戸造船所にて起工
• 1943年（昭和18年）4月7日 進水
• 1944年（昭和19年）3月7日 竣工
• 1944年（昭和19年）6月19日 マリアナ沖海戦に参加。米ガトー級潜水艦アルバコア (USS Albacore, SS-218) の魚雷1本をガソリンタンク付近に受け損傷。損傷により漏れたガソリンが艦内に充満、引火爆発して大火災を起こし同日16時28分沈没。

[編集] 参考文献

• 「歴史群像」編集部『「歴史群像」太平洋戦史シリーズ45・帝国海軍 真実の艦艇史」学習研究社、2005年、ISBN 4-05-603412-5

[編集] 関連項目

• 大日本帝国海軍艦艇一覧

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