ナスカ文化

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』

ナスカ文化（-ぶんか）は、現在のペルー共和国、ナスカ市周辺に、紀元前後から600年ごろまで栄えた文化。ナスカの地上絵で有名。宗教的中心(巡礼地であるとされる)は、カワチ遺跡とされている。

初期の土器や織物は、パラカス文化を継承しているため同一の文化とみなす意見も強い。基本的にパラカスとナスカを分けるのは、主要伝達メディアが織物から土器に代わったことによるものである。パラカス期から製作されていた、双注口土器などの南海岸特有の器形はナスカ期をも特徴付けるものである。。ナスカの土器は図像の特徴、器形、発掘コンテクスト等をもとに第1期から9期に分けられる。ただし、現在の研究では8－9期は山岳部から侵入したワリの影響が強く、ナスカ期独自とするかどうかは研究者の意見の分かれるところである。ナスカ初期の土器では顔料彩色による焼成前着色の技法が使われ始める。同じ初期の図像の特徴は動物や植物等の自然的表現、神話的表現の一つである神人同型図像(Mythical Creature)である。ナスカの特徴である「多彩色」土器はアンデス文明のなかでも屈指とされており、特に第3期から6期の土器には目を見張るものがある。第５期以降になるとメイン図像を描いた後の余白部分に、より細かい図像要素を使って埋めるような傾向が強まり、[増殖]]的な表現が多くなる。また、戦いに関わる図像が増え、首級(Trophy Head)がしばしば描かれる。第7期になると前段階の文様をより省略したような図像となり、図像モチーフ自体の同定が難しくなる。さらに山岳部の影響を受けて土器の地色は白地から赤地となる。