ドラグーティン・ディミトリエビッチ

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ドラグーティン・ディミトリエビッチ(セルビア語 Драгутин Димитријевић Апис 1876年 8月17日 - 1917年 6月27日)はセルビア王国の軍人で民族主義者。秘密組織黒手組の指導者である。黒い手は1903年に国王アレクサンダル・オブレノビッチを暗殺し、また1914年のオーストリア・ハンガリー帝国のフランツ・フェルディナント大公暗殺へも関与した。このサラエボ事件を原因として第一次世界大戦が勃発した。

ディミトリエビッチ(右)とその同僚

[編集] 生涯

ドラグーティン・ディミトリエビッチは1876年にセルビアで生まれた。18歳になるとベオグラードの士官学校に入学し、優秀な成績で卒業した。卒業後直ちに参謀本部での勤務を命じられたが、自身ではセルビア民族のためにテロの専門家と成ることを夢見ていた。

1903年ディミトリエビッチ大佐と彼の信奉者たちは独裁的で国民にも人気のなかった国王の暗殺を計画した。一派は王宮に押し入り、アレクサンダル国王とその妃ドラガを殺害した。襲撃の際にディミトリエビッチは負傷し、体内には3発の弾が残ったままになった。

セルビアの国会はディミトリエビッチを母国の救世主と呼び、陸軍大学の教官に任命した。傷が癒えた後彼はドイツ帝国とロシア帝国を訪れ、最新の軍事技術を習得した。1912年に始まったバルカン戦争ではセルビア軍の作戦を立案し、セルビアを勝利に導いた。

ディミトリエビッチはアピスという暗号名を用いて秘密組織黒手組の指導者となった。このグループはセルビア民族主義を奉じ、セルビアがオーストリア・ハンガリー帝国の軛から脱することを目的とする組織であった。1911年にはフランツ・ヨーゼフ1世の暗殺が計画された。この計画が失敗におわった後、目標を後継者のフランツ・フェルディナントに変更した。

1914年大公がサラエボを訪れることを知ったディミトリエビッチは黒手組のメンバー3人ガブリロ・プリンチプ、ネジェルコ・シガノビッチ、トリフコ・グラベをサラエボに派遣した。

しかしこの計画はセルビア政府に漏洩していた。タンコシッチ少佐はニコラ・パシッチ首相に陰謀について情報を提供していた。パシッチは黒手組の目的自体には賛同していたが、大公の暗殺によってオーストリアとの戦争が始まることを恐れ、暗殺計画に反対した。そこで3人がセルビアを離れる兆候を見せたら直ちに逮捕するように命じた。しかしこの命令は実行されず、3人はボスニアに向かいその地の賛同者4人と合流した。

1914年6月28日に大公が暗殺された後暗殺犯たちはオーストリアの当局に逮捕され、黒手組が暗殺の計画を立てたことを自白した。6月25日にオーストリア政府はセルビア政府に黒手組のメンバー3人ディミトリエビッチ、ミラン・シガノビッチ、Major Voja Tankosicを逮捕しウィーンに送るように要求した。

7月25日にパシッチ首相は引き渡しがセルビア憲法に違反することを理由にこれを拒否した。3日後にオーストリアはセルビアに対し宣戦布告した。

第一次世界大戦が開始されるとセルビアはオーストリアの進撃を一時はくいとめたものの、ドイツ軍とブルガリア軍の参戦もあり全面的な敗北を喫した。セルビア軍と政府はギリシャのイオニア諸島コルフ島とテッサロニキに逃れ、亡命政府を樹立した。パシッチは黒手組が戦争の原因であると断じ、組織を解散させディミトリエビッチを始めとする指導者たちを逮捕した。1917年の6月27日ディミトリエビッチはテッサロニキ郊外で銃殺された。