The 7th Blues
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
The 7th Blues | ||
---|---|---|
B'z の アルバム | ||
リリース | 1994年3月2日 | |
録音 | - | |
ジャンル | ブルースロック ハードロック J-POP |
|
時間 | Disc1 48分31秒 Disc2 54分20秒 合計 102分51秒 |
|
レーベル | BMGルームス | |
プロデュース | 松本孝弘 | |
レビュー | ||
|
||
チャート順位 | ||
|
||
売上枚数 | ||
|
||
B'z 年表 | ||
FRIENDS (1992年) |
The 7th Blues (1994年) |
LOOSE (1995年) |
『The 7th Blues』(ザ・セブンス・ブルーズ)は、日本のロックグループ、B'zが1994年3月2日にBMGルームスからリリースした、7枚目のオリジナルアルバムである。なお、アルバムタイトルの「Blues」の読み方は「ブルース」ではなく、「ブルーズ」である。アルバム未収録シングル曲は「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」、「裸足の女神」。
目次 |
[編集] 内容
B'z初の2枚組オリジナルアルバムである。タイトルにブルーズとなっているが、ブルースの曲が大半を占めているわけではなく、むしろブルースはわずかであり、アレンジとしてはジャズ寄りとも取れる。ロックを基調としながらも、ブルースの雰囲気を取り込んだ作品という方が正確であろう。DISC1は従来のポップ、ロック路線の曲が多く、DISC2はリフの重いハードロックや60~70年代の洋楽を髣髴させるブルーズロック色の強いナンバーが多い。価格もCDとしては破格の5,600円。これまで意識して売れる作品を提供してきたB'zが、あまり深く考えず思いついた曲をどんどんレコーディングするという方針をとった(2人のルーツである洋楽のオマージュが意図的にあったり、20曲というボリュームになったのもこのため)。一般にアイドルとしてのB'zが好きなファンを振るいにかけたアルバムとして位置づけられており、事実、このアルバムでファン離れした人も少なくなかったようである。しかしそれとは逆にこのアルバムからファンになった(特に男性ファン)もいたことも事実である。もともと有名な歴史の長いアーティスト(特にロックバンド)にはこのようなタイプの、単にアーティスト側の一種の「快感」だけを求めたものや資本主義に対する反抗とも見れるアルバムが存在することが多く、B'zもこのような流れに意思とは関係なく乗っかったものと思われる。そして現在ではこのアルバムがB'zの最高傑作と呼ぶファンも多い。実際に隠れた名曲と言われる曲も多いアルバムである。また2枚組にもかかわらず、シングル曲は「LADY NAVIGATION」、「Don't Leave Me」の2曲しか収録されていない。しかも、「LADY NAVIGATION」はオリジナルの面影がないほどリメイクされている。ミキシングエンジニアは、後にグリーン・デイなどを手がけるクリス・ロード・エルジ。また、東京スカパラダイスオーケストラなど、多くのミュージシャンが参加している。
ちなみにタイトルはアルバムが7枚目であったことに加え、ブルースでよく使われる「7thコード」をもじったもので松本曰く「酔った時の思いつき」だそうである(同年のツアータイトルは9回目のツアーということから『B'z LIVE-GYM '94 "The 9th Blues"』となった)。アルバムの内容や、稲葉の長髪等、今までに無い位に暗い雰囲気を出している作品だったこと、1年にも及ぶツアーでメディアへの露出が極端に少なかったこと、そして、ライブもこれまでになく渋い内容だったため、このアルバムが発売された1994年をファンの間では「B'zの暗黒時代」と呼ばれている。また、このアルバムを最後に、アルバムのカセットテープの発売をやめている(シングルのカセットの発売は「love me, I love you」が最後である)。
[編集] 売上
- 2枚組オリジナルアルバムでありながら、初動103万枚、累計売上163万枚を売り上げた。この記録は2枚組オリジナルアルバムとしては日本一の記録である。(2006年現在)またこのアルバムがミリオンセラーを達成して以降、2005年10月5日にサザンオールスターズの13thアルバム『キラーストリート』が発売されるまで11年8ヶ月もの間、2枚組オリジナルアルバムでミリオンを達成した作品が無かった。(そもそも2枚組オリジナルアルバムでミリオンヒットを記録したのはこの2作のみである。)
- 1994年年間アルバムチャート4位。
- 余談ではあるが、先行シングルとして発売された「Don't Leave me」は1994年2月21日付~1994年3月7日付の3週連続で1位を獲得し、1994年3月14日付にて本アルバムが初登場1位を獲得したが、シングルチャートでは「Don't Leave me」が中山美穂の「ただ泣きたくなるの」に3000枚差で破れ2位であった。
売上はいずれも(株)オリコン調べ。
[編集] 記録
- 歴代アルバム売上チャート110位
- 歴代2枚組オリジナルアルバム売上チャート1位
[編集] 収録曲
曲の解説やタイアップ等はB'zで解説しているため一部簡潔に解説する。
[編集] DISC1
- LOVE IS DEAD (6:18)
- いきなり外国人同士の電話から始まるシリアスな歌詞とは裏腹なポップなロックナンバー。外人の会話をよく聴いてみると「B'z」という単語が出てきており、一方がもう一方にB'zを「聴いてみろよ!」と言っている内容のようである。重々しいイントロが特徴的である。2003年の『B'z LIVE-GYM The Final Pleasure "IT'S SHOWTIME!!"』ツアーでも演奏された。
- おでかけしましょ (3:27)
- パンク調で、曲名通り明るい雰囲気がするポップでスピーディな曲である。キーボードによるポップなリズムであるものの、どこか深く重いような感じが受けられる。稲葉のテンションがやたらに高い。
- 未成年 (4:33)
- 楽しげな雰囲気がしつつも、どこか哀愁漂うナンバー。後奏はロック調→ジャズ調→ロール調とめまぐるしく展開が変わる。大人の世界に入れてもらえない未成年のことを歌っているが、タイトルとは裏腹に渋くて大人っぽい。また、曲終了直前が「GIMME YOUR LOVE -不屈のLOVE DRIVER-」の間奏の一部と同じに聞こえる。
- 闇の雨 (4:48)
- タイトルに「闇」という単語が付いているせいか、聴いていると歌詞もとても切なく聴こえる。曲自体は明るめに作られているのだが、ラストの歌詞のつぶやきのような儚い期待のこめられた部分が心に深く染み渡る。一つの恋をテーマにしたもので、穏やかで稲葉の低音が心地よく響きわたるバラード。歌詞が深いとよく言われる。ファンの間でも隠れ名曲として人気の高い曲。
- MY SAD LOVE (3:58)
- 前曲と打って変わって明るいポップでキャッチーなナンバー。昔の恋をわずらい、悩んでいる女性と付き合っている男性の感情をテーマにした曲。稲葉は、最初はこの曲があまり好きではなかったらしい。
- Queen of Madrid (4:49)
- ヒミツなふたり (4:01)
- こちらもポップな曲である。歌詞の中の「男は無口な方がいいと誰か歌ったなあ」の誰かとは八代亜紀のことで、「舟唄」(この曲では「男」ではなく「女」であるが)が元らしい。2003年の『B'z LIVE-GYM 2003 "BIG MACHINE"』ツアーでまさかの披露があり、ファンを騒然とさせた(稲葉によるリクエストだったらしい)。
- Strings of My Soul (5:51)
- 松本のギターソロによるインストゥルメンタル。元々はライブのソロコーナーで披露していたもの。ギターのソロとはいえ、消えていくように演奏された儚い情景はどこか切なさを覚える。松本のソロアルバム『House Of Strings』には別バージョンが収録されている。
- 赤い河 (6:21)
- WILD ROAD (4:20)
- タイトルの通りワイルドな感じのするアメリカンなロックナンバーである。生と死について歌っており、現代社会にとても通じる内容である。曲の後半では高嶋りんが歌詞中に出てくる「街一番の女」の台詞を歌っている。
[編集] DISC2
- Don't Leave Me (4:23)
- シングル曲。このアルバムのカラーを象徴するナンバー。ベストアルバム『B'z The Best "Pleasure"』にも収録される。
- Sweet Lil' Devil (6:13)
- 稲葉の低く唸るようなボーカルで始まるハードロックナンバー。非常に重い曲でこのアルバムの象徴ともいえ、完全にコア向けの曲である。間奏におけるブルースハープがかなり渋さをかもし出している。歌詞は男の「性(さが)」について歌っており、B'zの曲の中でもかなりエロチックである。ギターソロの後に疑似ライブのようなパートがあるが演奏している曲はレッド・ツェッペリンの「HeartBreaker」であり、『B'z LIVE-GYM '94 "The 9th Blues"』ツアーではアルバム『RISKY』に収録されている「GIMME YOUR LOVE」だった。
- THE BORDER (4:50)
- 前々曲、前曲とは打って変わって、とても温かで穏やかなバラードである。ここでの『BORDER』とは歌詞にも出てくる通り、「国境」の意味である。ライブではなぜか未演奏のままである。
- JAP THE RIPPER (5:51)
- 1993年の『B'z LIVE-GYM Pleasure '93 "JAP THE RIPPER"』ツアーで未発表曲として発表されたハードロックナンバー。ライブではよく歌われるがこの曲も非常に重くコア向けで、ライトファンの間では好みが分かれやすい。歌詞も過激で男臭さを放っている。曲のタイトルは「切り裂きジャック(JACK THE RIPPER)」に由来する。
- SLAVE TO THE NIGHT (5:08)
- 1stシングル「だからその手を離して」の2nd beatの「ハートも濡れるナンバー ~stay tonight~」のリメイクバージョン。歌詞は全英詩で作り直されており、タイトルもオリジナルと全く別のものとなり、サウンドも近作に合わせた渋くて重厚なものとなっている。『B'z LIVE-GYM '94 "The 9th Blues"』ツアーでは、松本がソロでこの曲のイントロを用い、ジミ・ヘンドリックスの「LITTLE WING」を歌っている。
- 春 (5:39)
- タイトルとは裏腹に暗く、絶望的な歌詞が印象的な儚いバラード。しかし、ファンの間では非常に人気が高い隠れた名曲であり、のちに発売されたバラードベスト『The Ballads ~Love & B'z~』に収録されなかったことに一部のファンが不満を持ったほどである。
- 破れぬ夢をひきずって (6:26)
- シンセチックな音色にギターが絡まってくるイントロから始まるロックバラード。メッセージ性が強く、ファンによる評価も高い。始めのほうは明るい曲として聴いていても、歌詞のシチュエーションなどを知るうちにエンディングのストリングスの壮大なソロはとても切なく聴こえる。前曲の「春」とともに聴くのを好む人が多い。
- LADY NAVIGATION (6:09)
- 8thシングル「LADY NAVIGATION」のアレンジバージョン。原曲はB'zのシングル曲の中でも最もポップなサウンドだったが、ここでは暗くて渋いブルースで、原曲の雰囲気は微塵も感じられず、B'zの曲の中でも最も渋い曲のひとつであろう。歌詞は全英詞で、ミニアルバム『MARS』に収録されている「LADY NAVIGATION ~Cookie&Car Stereo Style~」と大体同じだが、一部が変更されている(「N・A・V・I・G・A・T・I・O・N」が別のものに置換されるなど)。1993年の渚園ライブで披露したアコースティックバージョンが元になっている。
- もうかりまっか (3:16)
- おもちゃの銃の発する電子音で始まる、陽気なブルースナンバー。歌詞が全て関西弁で面白おかしく書かれているのだが、稲葉の歌唱力によってあまり気にならない仕上がりになっている。B'zの曲の中でも最も異色なナンバーのひとつである。バンド全体を一度に尾録音するいわゆる一発録りされており、各パートにおいてスポンテニアスさがよく出ている。
- farewell song (6:22)
- 前曲から打って変わって二枚組の大作を締めくくるのに相応しい、暖かで壮大なバラードである。稲葉にしては珍しく、歌詞にファンタジー要素が入っている。「さよなら」という言葉が向けられている部分にとても心を揺さぶる人も多いはず。ラストはザ・ビートルズの名曲「Hey Jude」を意識したものになっている。ちなみに、曲終了直前の歓声の中に、よく聞くと「こひしかるべき~」と「LADY-GO-ROUND」の一節が歌われているのが分かる。
[編集] 参加ミュージシャン
- 松本孝弘:ギター、作曲、編曲
- 稲葉浩志:ボーカル、コーラス(DISC1 #8,DISC2 #7,8,9除く)、作詞
- 明石昌夫:ベース、マニピュレーター、編曲
- 青山純:ドラム、ティンパニ(DISC2 #6)
- 増田隆宣:キーボード(DISC1 #1,2)、ハモンドオルガン(DISC1 #6,10,DISC2 #1,5)、アコースティックピアノ(DISC1 #8)
- 小野塚晃(DIMENSION):アコースティックピアノ(DISC1 #1,2,DISC2 #6,8,9,10)、KORG SG-1(DISC1 #5)、ローズピアノ(DISC2 #3)、エレクトリックピアノ(DISC2 #7)
- 勝田かず樹(DIMENSION):ホーン配置(DISC1 #1)
- 数原晋:ホーンセクション(DISC1 #1)
- JAKE.H.CONCEPTION:ホーン(DISC1 #1)
- DE LA LUZ HORN SECSSION(オルケスタ・デ・ラ・ルス):[寺内茂:トランペット、佐々木史郎:トランペット、福本佳仁:トランペット、中路英明:トロンボーン、青木タイセイ:トロンボーン](DISC1 #2,7)
- SKA-PARA HORNS(東京スカパラダイスオーケストラ):[名古屋君義(現・NARGO):トランペット、北原雅彦:トロンボーン、冷牟田竜之:アルトサックス、GAMOU(現・GAMO):テナーサックス、谷中敦:バリトンサックス](DISC1 #5,DISC2 #1,5)
- 菅坂雅彦:トランペット(DISC1 #9,DISC2 #6,10)
- 横山均:トランペット(DISC1 #9,DISC2 #6,10)
- 村上準一郎:トロンボーン(DISC1 #9,DISC2 #6,10)
- 西山健治:トロンボーン(DISC1 #9,DISC2 #6,10)
- 山岸博:ホルン(DISC1 #9,DISC2 #6,10)
- 飯笹浩二:ホルン(DISC1 #9,DISC2 #6,10)
- 妹尾隆一郎:ブルースハープ(DISC2 #1,2)
- HIIRO Strings.(日色ストリングス):ストリングス(DISC1 #4,8,9,DISC2 #3,7,10)
- 高嶋りん(現・浦嶋りんこ):コーラス(DISC1 #3,10,DISC2#1,2,3,5,10)
- 岩切玲子:コーラス(DISC1 #2)
- 生沢佑一:コーラス(DISC2 #1,8)
- MICHELLE MURPHY:ギャングボイス(DISC2 #2,4,10)
- KURT SCHAELER :ギャングボイス(DISC2 #2,10)
- CAROL DAVIS:ギャングボイス(DISC2 #2,10)
- BILL KINSLEY:ギャングボイス(DISC2 #2,10)
- JEFF LOAD-ALGE :ギャングボイス(DISC2 #2,4)
- KOJI NUMAZAKI :ギャングボイス(DISC2 #2,4)
- J.D.COUNTS :ギャングボイス(DISC2 #4)
前作 | B'zのオリジナル アルバム | 次作 |
---|---|---|
RUN | LOOSE |
オリコン週間アルバムチャート第1位 1994年3月14日付~1994年3月28日付 (3週連続) |
||
前作: hide 『HIDE YOUR FACE』 |
B'z 『The 7th Blues』 |
次作: 中西圭三 『Starting Over』 |