Dr.コトー診療所
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『Dr.コトー診療所』(ドクターコトーしんりょうじょ)は、山田貴敏による漫画作品。
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[編集] 概要
小学館週刊ヤングサンデーで連載。単行本は450万部を超える大ヒットとなっている。2004年、第49回小学館漫画賞一般向け部門を受賞した。2005年には、小学館の学年誌小学五年生で『Dr.コトー診療所 島の子供達』を隔月で連載。
2003年には、フジテレビ系列でテレビドラマ化された。 2004年には、スペシャル版が、そして2006年には新シリーズが放送された。
同時期に「週刊モーニング」に連載され、かつドラマ化された『ブラックジャックによろしく』と比較される事が多い。Dr.コトーが人里離れた小さな診療所を女性看護師と二人で切り盛りするところや、ニヒリストで偽悪的な数々のライバルは、どことなく『ブラック・ジャック』の設定を連想させる。
本土から船で6時間かかる離島「古志木島」(TV版:志木那島)の唯一の診療所に赴任し、奮闘する青年医師・五島健助と、かたくなに心を閉ざす島民達が次第に五島に心を開く過程、人間的なふれあいを描いたヒューマンドラマ。ドラマ化によって男性だけでなく女性にも高い人気を誇る青年漫画である。
舞台の古志木島は、鹿児島県の西側にある甑島(こしきじま:薩摩川内市下甑町)がモデル、TV版(志木那島)は沖縄県の南側で日本最西端の与那国島がモデルで撮影地も与那国島。 またDr.コトーのモデルは甑島にある下甑手打診療所の所長、瀬戸上健二郎医師。 著書に「Dr.コトーのモデル Dr.瀬戸上の離島診療所日記」(2006年10月刊・小学館)がある。
三上医師と江葉都医師の赴任地は、当初は名前がなかったが、後に「増生島(ましうじま)」と命名された。おそらく山田の旧作『マシューズ』あるいは『マッシュ』に引っかけたものと思われる。
[編集] 登場人物(原作)
- 五島健助(ごとう けんすけ)
- 主人公。医師。
- 専門は外科。東京の天津堂大学附属病院に務めていたが、医療ミスの責任をとって古志木島にやって来る(実はミスで病院を追われてから島に来るまで3年間の空白期間が有る。過去にアメリカに滞在していたかをにおわす台詞があったが、空白期間に渡米していたかどうかは、今の所は不明ではある)。
- 性格は柔和で真面目だが自分のことにはだらしが無く、陸海空の全ての乗り物に弱くてすぐに乗り物酔いして嘔吐する。しかも暑がり・寒がりであるがクーラーは苦手、カナヅチでもある。さらにはカップ麺好きが祟って隠れ肥満と、まさに「医者の不養生」に相応しい人物。原には「あれで医師でなかったら最低に情けない人間」とまで言われた。ちなみに、ドラマ版ではカップ麺は「ヤシガニラーメン」という銘柄らしく、かなりこだわりがある模様。
- しかし医師としては天才的な腕を持ち、手術道具もろくに無いこの島で、数々の難手術をこなす。島民からは「コトー」と呼ばれ、親しまれている。特に患者を慮って治療方針を決めるため、口の悪い安藤重雄も「すごい(立派な医師である)ヤブ」と些か意味不明ながら賞賛している。
- 赴任当初は頼りなさげな風貌や間の抜けた行動もあり、またかつて島に居た医者が揃いも揃って「僻地に飛ばされてくるようなロクでも無い医者」であったことから島民らの医者不信が根強く、周囲との関係もギクシャクしていたが徐々にその人となりに触れ、信頼・理解を深めて行き、今では絶大な信頼を受けている。怪我や病気を治すだけでは無く、精神的なケアも同時に行う為、星野等には「癒師」とも言われておち、本人もそれを目指している。
- 祖父の良庵も医師で、ハワイ在住。祖父はコトーにとっての目標の存在の一人でも有る。父親との関係は悪いらしい。ちなみに父親も医者に関連する仕事をしてると思われる。
- 当初の頃は星野彩佳に対しては信頼・尊敬するナースと言う意識しか無かった様だが、何時の頃からか大切な存在に成っていたと思われる。彩佳の乳癌発覚後、それがはっきりする様になる。手術後彩佳にプロポーズするが、承諾を貰えぬまま、翌日島を出て行った彩佳を黙って送り出すことになる。
- マンガ版とドラマ版では容姿のイメージがかなり異なるために、原作派からはドラマ版を「吉岡コトー」と呼ぶことも多い。
- ドラマ版では剛洋が乗り物酔いによって発音が聞きづらく「五島」を「コトー(コトウ)」と勘違いしたことで、漫画版では特に何の言及も無く「コトー」の名称が付けられた。
- 星野彩佳(ほしの あやか)
- 看護師。
- 健助のことが好きだが、第一部ではいずれ本土に帰ってしまうだろうと考えており、恋愛対象としては意識すまいと決め込んでいる。将来は看護以上の仕事をしたいため医師免許をとろうと考えている。中日ドラゴンズのファン(ちなみに、作者の山田貴敏氏も大のドラゴンズファンである)。何度か乗物酔いしたコトーに、頭からあらぬものを浴びせられるという不幸に見舞われている。
- コトーの治療の仕方に最初は戸惑いながら次第に優秀さを発揮、時には無茶な手術をするコトーの数々のサポートを見事にこなして行く。
- 第2部では乳癌が発覚。手術は成功し現在療養中だが、今後5年間での生存率は50~70%。コトーから婚約指輪を受け取るも返上し、医師になるために島を出て行った。尚ドラマ版では医者では無く理学療法士を目指している設定である。
- 今は亡き母親も看護師だった。父親の正一は彩佳と母をおいて愛人(?)と島を出て行ってしまったが、後に大病を患って戻ってくる。ドラマ版では父親(村役場の民生課長で、医師探し担当)も母親も島に健在で両親と同居している。父親のモデルは、下甑村の民生課長の西秀人氏と思われる。著書に「先生助けて!Dr.コトーをさがして」(2006年11月刊小学館)がある。
- なお、原作では健助から「星野さん」、ドラマでは初回から「彩佳さん」と呼ばれるという違いもある。
- 時代背景からか、原作で使用しているナースキャップは現在の看護師も殆ど使用していないこともあり、ドラマではかぶっていない。これは他の医療ドラマでも多く、2000年代に入ってからほぼ全ての医療ドラマのナースはキャップをかぶっていない。
- 仲依ミナ(なかい みな)
- 彩佳の病気療養中に、診療所に赴任した准看護師。愛称は自称「ミナチン」でお転婆系だが、アイドルタレントの愛称を意識した当人のイメージとは別に、素朴で流行とは無縁な島民からは「~チン」が別のモノを連想させるのか微妙な笑顔や赤面を向けられている。なお本人は気付かず、アイドルっぽく振舞っている。
- ただ看護婦としては未熟で、手術中の血を見て倒れたり、注射が下手だったりと、精神性や技術はまだまだ。ドラマ版での性格はおとなしい。面識のある彩佳を「立派な先輩」とみなしており、彼女のようにコトーのサポートをできるようになるのが目下の目標で、意外と「出来ることからコツコツと」という性格も発揮している。
- とある事情により古志木島に赴任したのだが、実は既婚者で夫のDVに悩まされていた。
- 原健裕(はら たけひろ)
コトーに憧れる少年。 急性虫垂炎で死にかかったところを健助が船上で手術して一命を取りとめる。中学では心臓病の持病があることが判明したが、コトーの手術(ロス手術)により回復。 健助に憧れており、将来の夢は医師。当初の学業成績は良くなかったが、医師を志すことにより、現在は全国模試で18位をとるなど成績優秀。 ドラマ版では名前は「剛洋」となっている。読みは同じく「たけひろ」。 なお、ドラマ版では「コトー」の名づけ親でもあり、原作第二部にあたる2006シリーズまで富岡涼によって演じられている。
- 原剛利(はら たけとし)
- 漁師。健裕の父親。
- 朴訥で融通も利かず漁業組合でも浮いてしまいがちな性格だが、漁師としての腕は良く、また性格も一本筋がとおっているため、仲間にも一目置かれている。
- 妻が前の島の医師の診察ミスで死んでいて医師に不信感を持っていたが、無茶な方法ながら息子を救われて健助を信じるようになる。健助の名字を「コトー」と勘違いして診療所に「Dr.コトー診療所」の看板と大漁旗を寄贈した。船の名前は「はらたけ丸」。
- ドラマ版では健助の島民への誠実さを理解しながら、その関係に一定の距離を置いているという設定になっている。また、剛洋の将来のために漁師を辞め、沖縄本島で建設業の仕事に携わっていたが、事故で借金を背負い、島に戻り、漁師に戻った。
- 内つる子(うち つるこ)
- 通称「内さん」。産婆歴50年のベテラン。
- 伝統的な煎じ薬を作っていて、コトー以前の医者がいいかげんであったことから、診療所に来る医者などロクな者では無いと見限っていた。夫は既に他界。本土に一人息子がいる。
- 腹部大動脈瘤・狭心症を患ったが、健助に命を救われたことから信頼するようになり、原とともにコトーや星野を精神的に支えている。時々は診療所を手伝っているが、同時に診療所の医者に懐疑的な島民との間のクッション役にもなった。
- 彼女の作る煎じ薬は島民に信頼されており、大病を患った際には島民大勢が駆け付けている。
- 第3巻の時点から、コトーと星野の仲を見抜いていた。
- 安藤重雄(あんどう しげお)
- 漁労長。通称「しげさん」。
- お調子者で口が悪く、変なところで頑固な老人。コトーのことは「ヤブ」と呼んでいる。最初のうちこそ懐疑的であったことから本気で中傷交じりに「ヤブ」と呼んでいたものの、後に立派な医師であることを度々目の当たりにして、相変わらず「ヤブ」呼ばわりするものの、次第に腕が悪いという意味でではなく、ある種の親しみを込めたニックネームとして呼ぶようになっている。
- 妻は既に他界。息子と娘がいる。息子の伸幸は報道写真の第一人者。青年団の団長でもあるがもういい加減に高齢なので、しょっちゅうからかわれている。船の名前は「第一しげ丸」。
- モデルは古志木島のモデルとなった島の漁師。
- ドラマ版で彼を演じる泉谷しげるは原作者に「シゲさんよりもシゲさんだ!」と言わしめたハマリ役である。
- 和田一範(わだ かずのり)
- 小学校の校務員。
- 普段はボーっとしており、ぼさぼさパーマにたらこ唇のやや冴えない風貌をしているが、やる時には男を見せる中年男性。無類の猫好きで、自宅にはものすごい数の猫を増えるに任せて飼っており、名前をつけるのに苦労している。スズメバチの巣の駆除を役場から請け負っているが、これは仕事というより趣味の範疇で、スズメバチの巣を(中身は抜きで)コレクションしている。
- 島固有の微生物が縁で海洋生物学で微生物を研究している一回り以上年下の西尾環と結婚。息子の不二彦も生まれる。環がアメリカの大学の特別研究員として招かれたため、息子ともども1年間渡米。西尾環の父親も大学教授だった。
- ドラマ版では役所勤務でありながら、診療所でコトーを手伝い、カメラ好きという全く違った設定。エンディングでは彼の撮った写真が毎回登場しており、公式HPでは彼の撮った写真を見ることができる。
- 演じた筧利夫は「自分にとってやっと真面目な役が回ってきた」と誇りに思っている様子。
- 巽記者(たつみ)
- 「週刊トポス」の記者。
- 交通事故で妹を亡くし、その責任がコトーにあると思っていて、コトーの医師生命を断とうと島内部にかつての醜聞を広めた。しかし土砂崩れに巻きこまれて大怪我をした際、事実を打ち明けられると共に患者に真摯に接するコトーの誠実さに気づいた。
- 三上新一(みかみ しんいち)
- 医師。
- 研修医の時に大学病院でのミスのために健助を追いやることになった。外科部長の奥村浩生の太鼓持ちとして振舞っていたが、コトーの言動・行動を目の当たりにして使命感に目覚め、奥村にたてつき離島「増生島」へ飛ばされる。
- 最初の頃は不安や悩みからなかなか打ち解けられなかったものの、精一杯努力する性格が認められて次第に島の人たちから受け入れられていった。島の林業家の娘である藤原恵と結婚し子供をもうけるも、新婚旅行先の古志木島でデング熱にかかり、他人を救う中で亡くなった。
- 芦田ゆき(あしだ ゆき)
- 医師。
- コトーに憧れている。父の雄一郎は代議士で、診療所にESWLを送った。星野とはコトーを巡った(?)恋愛のライバルでもある。
- 江葉都怜(えばと れい)
- 医師。
- 臓器移植の世界的な権威。しかし性格は冷徹かつ傲慢なところがあり、人付き合いも悪かった。
- 幼い頃に母親から虐待を受けていたことで後にPTSDになるが、健助のおかげで克服。その後に紆余曲折を経て三上のいた離島「増生島」へ赴任。無愛想な性格は相変わらずだが、元から持ち合わせていた鋭い観察眼を人間関係に生かし、また生真面目な性格もあって陰ながら周囲には立派な人格者だと好感を持たれている。
- 後に嘗ての教え子でも有った鳴海の幻肢痛の克服を手助け、医者としての信念を取り戻した鳴海に後を託し、増生島を去った。
- 容姿や人物像のモデルはおそらくジョン・レノン(長髪ともみ上げ、辛辣な皮肉屋、ドイツ語に通暁、ニヒリスト、主人公との葛藤、生母との複雑な関係(マザー)、Dr.エバト←ドクター・ロバート)。
- 小沢先生
- 古志木島の小学校の教師。健裕と同い年の息子がいる。
- 下山恵美(しもやま えみ)
- 看護師。
- 医療ミスの全責任を押しつけられ、もといた病院から追い出され古志木島に来る。古志木島村長の姪でもある。
- 登場当初は自己憐憫と敵愾心に凝り固まっていて、他人を見下すような行動が目立ったが、後に人のためになりたいという初心を取り戻して、介護士の免許を取るため島を出て行く。
- 鳴海慧(なるみ けい)
- 医師。聖ミハイロ病院勤務。
- 三上と瓜二つの風貌・外見を持つが、性格は正反対で無闇に膨れ上がった自尊心の持ち主。
- 研修医時代の事故により、右足の膝から下は義足となっている。また、そのときから幻肢痛(ファントムペイン)に悩まされている。かつて、江葉都の教え子だったが、彼の執刀による負傷した足の復元手術と後の壊死による切断によって幻肢痛になったと思い込んでおり、また江葉都が鳴海の傲慢な性格を見抜き批判して病院を追われたと恨んでいる。
- 江葉都やコトーのような天才肌の医者を嫌っている。その思いから二人の彩佳の手術の邪魔をするが上手く行かず、幻肢痛の治療の為、亡き三上が居た「増生島」に江葉都と共に赴き、三上の忘れ形見である健一の手術により三上と一卵性双生児の双子であったことが明かされ、更に島民の救助などを経て、幻肢痛を克服した。三上に対して抱いていた誤解を解いて後、単なる優劣を競うための技量ではなく、患者を救う医者としての信念を取り戻す。
[編集] 単行本
- 第1巻 Dr.コトー、島に着く。ISBN 4-09-152501-6
- 第2巻 Dr.コトー、狙われる。ISBN 4-09-152502-4
- 第3巻 Dr.コトー、殴られる。ISBN 4-09-152503-2
- 第4巻 Dr.コトー、上京する。ISBN 4-09-152504-0
- 第5巻 Dr.コトー、苦悩する。ISBN 4-09-152505-9
- 第6巻 Dr.コトー、遭難する。ISBN 4-09-152506-7
- 第7巻 Dr.コトー、誓う。ISBN 4-09-152507-5
- 第8巻 Dr.コトー、帰島する。ISBN 4-09-152508-3
- 第9巻 Dr.コトー、訣別する。ISBN 4-09-152509-1
- 第10巻 Dr.コトー、導く。ISBN 4-09-152510-5
- 第11巻 Dr.コトー、受けいれる。ISBN 4-09-153121-0
- 第12巻 Dr.コトー、笑う。ISBN 4-09-153122-9
- 第13巻 Dr.コトー、動揺する。ISBN 4-09-153123-7
- 第14巻 Dr.コトー、絶望する。ISBN 4-09-153124-5
- 第15巻 Dr.コトー、宣言する。ISBN 4-09-153125-3
- 第16巻 Dr.コトー、悩む。ISBN 4-09-153126-1
- 第17巻 Dr.コトー、吐露する。ISBN 4-09-153127-X
- 第18巻 Dr.コトー、感動する。ISBN 4-09-153128-8
- 第19巻 Dr.コトー、思いを告げる。ISBN 4-09-151078-7
- 第20巻 Dr.コトー、ずっこける。ISBN 4-09-151123-6
[編集] 外部リンク
- ヤマダタカトシネット (作者の公式ウェブサイト)