4本のホルンと管弦楽のためのコンツェルトシュテュック
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4本のホルンと管弦楽のためのコンツェルトシュテュックヘ長調作品86はロベルト・シューマンが1849年に作曲した楽曲であり、通常、協奏曲に分類される。「コンツェルトシュテュック」(Konzertstueck)については「コンチェルトシュトゥック」の表記のほか、「小協奏曲」「協奏的小品」などという邦訳が用いられることもある。
目次 |
[編集] 経緯
ドレスデン在住時代の1849年に作曲された。この年は他にも、歌劇『ゲノヴェーヴァ』を始め、多数の楽曲が作曲され、作曲の油が乗っていた年といえる。
この作品は、4本のホルンを独奏群にしているが、特定のホルン奏者や演奏機会を想定して作曲されたという形跡は残っていない。「もともとピアノ協奏曲として書かれた」という説もあり、実際、ピアノ協奏曲のバージョンもCD録音されている。
1850年に初演された。
[編集] 楽曲の評価
シューマン自身は、この作品を「非常に奇妙な作品」と述べた、と伝えられる(ただし訳によってニュアンスの異なるものがある)。
シューマンの作品群の中では、例えば交響曲で言えば交響曲第2番と交響曲第3番の間の時期に書かれており、管弦楽の扱いも手慣れている。
ホルンの扱いという点では、吹奏可能な音域の限界まで用いており、難曲の一つと言われることが多い。ただしシューマン自身は、その前にホルンとピアノのための『アダージョとアレグロ』作品70も作曲しており、この曲も、ホルンの音域の広さと運動性に、かなり挑戦している。この作品は、その挑戦をさらに推し進めたものであると言える。(もっとも、ホルン奏者の立場から、「シューマンは高音域の輝かしい効果を狙ってスコアを書いたと思われるが、現実には、こんな極端な高音は、やせ細った音になるのがオチだ。ホルンの使い方として、必ずしも優れているものではない」という批判は、少なからずある。)
そもそも、クラシック音楽の世界における、管楽器と管弦楽のための協奏曲のレパートリーの中で、ロマン派時代の著名な大作曲家が残した楽曲は、極めて少ない。その意味でも、この作品は、貴重である。
[編集] 楽曲構成
冒頭のファンファーレを除き、いずれの楽章も、まず管弦楽で旋律が一節奏でられた後、独奏群が旋律を奏で始めるのだが、同一の旋律の模倣となっておらず、微妙に違った旋律となっている。そのため、この曲のアナリーゼ(どれが楽章の主題であるか)が、解説書によって若干異なる部分がある。
[編集] 第1楽章 生き生きと
ヘ長調。一旦終止し、そのまま次の楽章に続く。
[編集] 第2楽章 ロマンツェ。かなりゆっくりと、しかしひきずらずに
ニ短調。楽章最後は、緩徐楽章の旋律が続く中、トランペットが割り入るように次の楽章の主題を予告し、次第に曲想を変えながら、そのまま次の楽章に繋がる。
[編集] 第3楽章 とても生き生きと
ヘ長調。シューマン自身の交響曲第4番最終楽章を彷彿とさせる、リズミックな楽章。
[編集] 実演
難曲と評される割には、実演で演奏される機会は必ずしも少ないわけではなく、コンスタントに演目に取り上げられている。演奏効果があること、曲調が明るいこと、そのほかオーケストラのホルンセクションでそのまま独奏群が組めること、などが、背景にあると思われる。独奏群としては、前記のようにオーケストラのホルンセクションでそのまま結成することが多いが、客演奏者を含める、あるいは全員客演奏者で結成する場合もある。
シューマンの管弦楽曲は吹奏楽編曲で演奏される機会がほとんどないが、このコンツェルトシュテュックは例外的に、吹奏楽編曲で演奏される機会がある。例えば東京佼成ウインドオーケストラでは、1986年と1996年に、近藤久敦の編曲により、定期演奏会でこの曲を演奏している。
もっとも、演奏機会がコンスタントにあるとはいえ、演奏の出来不出来は別問題である。著名な演奏家が演奏しても、この曲が難曲であることを再認識させられることが非常に多いのも、事実である。
[編集] レコーディング
古くから、多数の演奏家が録音している。ただし、古い時代のものには、粗末な演奏のものも含まれる。曲名に「4本の」ホルンと明記してあるにもかかわらず、5人以上のホルン奏者で独奏群を演奏した演奏もある。
概して、シューマンの交響曲全集の余白扱いで録音されたものと、ソリストをフィーチャーして録音したものとがある。最近は前者のような扱いのものも増えており、この曲が指揮者視点からも興味を引く曲であることを伺わせる。
独奏群がホルンではなくピアノになっている録音も存在する。このCDのリーフレットの中では、この曲が「もともとピアノ協奏曲として書かれた」との説を紹介してある。
[編集] オーケストレーションの変更
シューマンの管弦楽曲は、スコアのオーケストレーションを一部細工して演奏することがしばしばある。この曲においては、以下の2点において、少なくない指揮者が、スコアを変更している。
- 第2楽章、独奏群の1番ホルンが長い旋律を奏でるのを、独奏群の2番ホルンが1小節遅れで模倣する部分があるが、スコアでは、この模倣する2番ホルンに、アルトトロンボーンがユニゾンで重なっている。このユニゾンで重なっているアルトトロンボーンは、しばしば割愛される。