香木
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香木(こうぼく)とは、心地よい芳香を持つ木材のこと。沈水香木(ぢんすいこうぼく、または沈香、ぢんこう、ちんこう)と白檀(びゃくだん)が有名である。香りのことを香という。
薄片に削ったものを加熱して芳香を楽しむのに用いられる。白檀は熱することなく香るため、それ以外にも仏像などの彫刻や扇子や数珠などの材料として用いられる。
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[編集] 沈水香木
沈水香木(沈香)は代表的な香木。東南アジアに生息するジンチョウゲ科アクイラリア属(学名 アクイラリア・アガローチャ Aquilaria agallocha)の植物である沈香木などが、風雨や病気・害虫などによって自分の木部を侵されたとき、その防御策としてダメージ部の内部に樹脂を分泌、蓄積したものを乾燥させ、木部を削り取ったものである。原木は、比重が0.4と非常に軽いが、樹脂が沈着することで比重が増し、水に沈むようになる。これが「沈水」の由来となっている。幹、花、葉ともに無香であるが、熱することで独特の芳香を放ち、同じ木から採取したものであっても微妙に香りが違うために、わずかな違いを聞き分ける香道において、組香での利用に適している。
沈香は香りの種類、産地などを手がかりとして、いくつかの種類に分類される。その中で特に質の良いものは「伽羅」(きゃら)と呼ばれ、非常に貴重なものとなっている。沈香の分類に関しては香道の記事に詳しい。
また、シャム沈香とは、インドシナ半島産の沈香をさし、香りの甘みが特徴。タニ沈香は、インドネシア産の沈香をさし、香りの苦みが特徴。
強壮、鎮静などの効果のある生薬でもあり、奇応丸などに配合されている。
[編集] 歴史
推古天皇3年(595年)4月に淡路島に香木が漂着したのが沈香に関する最古の記録であり、沈香の日本伝来といわれる。漂着木片を火の中にくべたところ、よい香りがしたので、その木を朝廷に献上したところ重宝されたという伝説が日本書紀にある。東大寺正倉院宝物の中には長さ156cm、最大径43cm、重さ11.6kgという巨大な香木「黄熟香」(おうじゅくこう)[1]が納められている。これは、鎌倉時代以前に日本に入ってきたと見られており、以後、権力者たちがこれを切り取っている。室町幕府8代将軍足利義政、織田信長、明治天皇の3人は付箋によって切り取り跡が明示されている。東大寺の記録によれば、信長は1寸四方2個を切り取ったとされている。
現在では、1992年(平成4年)4月に、全国薫物線香組合協議会が、上記の日本書紀の記述に基づいて沈水香木が伝来した4月と、「香」の字を分解した「一十八日」をあわせて4月18日を、「お香の日」として制定している。
[編集] 脚注
- ↑ 別名は蘭奢待(らんじゃたい)。これには各文字にそれぞれ「東」「大」「寺」が隠れていることから、こちらの名称のほうが有名である。