酢酸エチル
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酢酸エチル | |
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IUPAC名 | Ethyl acetate |
別名 | |
分子式 | C4H8O2 |
分子量 | 88.11 g/mol |
CAS登録番号 | [141-78-6] |
形状 | 無色透明の液体 |
密度と相 | 0.9005 g/cm3, |
相対蒸気密度 | 3.0(空気 = 1) |
融点 | −83.6 ℃ |
沸点 | 77.15 ℃ |
昇華点 | {{{昇華点}}} ℃ |
SMILES | CC(=O)OCC |
出典 | 国際化学物質安全性カード |
酢酸エチル (さくさん-、 ethyl acetate)とは、示性式 CH3CO2C2H5 で表されるエステル化合物である。引火点 −2 ℃の果実臭のする無色の液体である。
極性が高く、最大で 3重量% ほど酢酸エチルに水が溶解する。逆に水に対しては 10体積%(25℃)ほど溶解し温度が低いほど増大する。また、エタノール、エーテル、ベンゼン、ヘキサンなどのほとんどの有機溶媒と任意の割合で混ざり合う。
日本では消防法により危険物第4類引火性液体(第一石油類 水溶性液体)に、また毒物及び劇物取締法により劇物に指定されている。
目次 |
[編集] 反応性
湿気(水分)を含むものは徐々に加水分解し、酸が存在すると加速する。アルカリ水溶液中ではけん化により加水分解する。酸触媒の場合は平衡反応であるため可逆であるが、アルカリ触媒の場合は加水分解のみが進行する。
[編集] 合成法
一般的なエステル合成法のいずれでも合成することは可能であるが、酢酸エチルは低沸点であることから、硫酸を酸触媒として酢酸とエタノールとを加熱して、生成する酢酸エチルを連続的に蒸留で取り出すことで効率よく合成することができる。
工業的には酢酸とエチルアルコールとを酸触媒でエステル化する方法と、アセトアルデヒドを触媒により反応系内で不均化して酢酸とエチルアルコールへと転換させエステル化する方法(ティシチェンコ反応)が知られている。後者は日本国などエタノールに対して課税する国では原料コストの高いエタノールを利用せずにすむ為、利用されることがある。
酢酸エチルの2004年度日本国内生産量は 246,462 t、工業消費量は 2,692 t である。
無水酢酸、塩化アセチル、ケテンなどとエタノールが反応しても酢酸エチルを与えるが、合成法としての価値はない(下図)。
[編集] 利用
酢酸エチルはシンナー・ラッカーなど塗料の溶剤として利用される。また、パイナップル・バナナ等天然の果実油の中にも広く含まれる果実臭成分の一つであり、エッセンスなど食品添加物の成分としても利用される。
有機化学実験では、アミン、ヒドリド還元試薬など広く求核試剤(試薬)と反応したりエステル交換反応することがあるので、反応溶媒としての利用は限定的である。したがって実験室での利用は抽出溶媒あるいはクロマトグラフィー法の展開溶媒としての利用が主である。