赤鉄鉱
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赤鉄鉱(せきてっこう、hematite(米)・haematite(英))は、酸化鉄(III)(Fe2O3)の鉱物である。鉱石はときどき少量の二酸化チタンを含有する。装飾品として加工されるときには、しばしばブラックダイヤモンドとも呼ばれる。
赤鉄鉱はとてもありふれた鉱物で、色は黒から銀灰色、茶色から赤茶色ないし赤色である。主要な鉄鉱石として採掘されている。同種のものには、血石、アイアンローズ、腎臓状赤鉄鉱、マータイト、鏡鉄鉱、レインボーヘマタイト、およびチタノヘマタイトがある。赤鉄鉱の形状はさまざまだが、どれも赤錆色の筋模様を持つ。
灰色の赤鉄鉱の層は、流れていない水があったかまたは鉱泉だった場所、例えばイエローストーンなど、に多く見られる。この鉱物は水中で沈殿し、湖、鉱泉やその他の流れていない水の底に層をなして集積する。水がない場合でも、火山活動の結果として生成することもある。
粘土レベルの大きさの赤鉄鉱の結晶は、土壌の風化作用によって形成される二次鉱物としても生じる。他の酸化鉄または針鉄鉱(goethite)のような水酸化鉄と共に、熱帯、古代、または高度に風化した土壌が赤色を呈する原因になっている。
英語のヘマタイトという名は、ベンガラ(赤鉄鉱の粉末化したもの)のようにしばしば鉱石が赤色であることから、ギリシア語の「血」に由来している。ヘモグロビンと同じ語源を持っている。ヘモグロビンは赤血球に含まれる酸素を運ぶ分子で、血液を赤く見せているのは鉄である。 赤鉄鉱の色は顔料としてもよく用いられる。
特に上質の赤鉄鉱はイングランド、メキシコ、ブラジル、オーストラリア、および米国とカナダのスペリオル湖で採取される。
赤鉄鉱は反強磁性物質である。
[編集] 火星上の赤鉄鉱
赤鉄鉱は水成過程、風化過程または水なしで形成される。
2004年に火星探査機オポチュニティが、部分的または大部分が赤鉄鉱でできていると思われる小さな球を発見した。この球は直径数ミリメートルで、火星がまだ水で覆われていた数十億年前に、水中で形成されたものだと信じられている。ローバーは、搭載した機器によって火星のメリディアニ平原で見つかったその赤鉄鉱を分析した。