誘導放出
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誘導放出(ゆうどうほうしゅつ、induced emissionまたはstimulated emission)とは、励起された電子や原子が他の定常エネルギー状態に移る際、外部から加えられた電磁波(光)などのエネルギーと同じ位相や周波数のエネルギーを放出する現象である。各種のレーザーの発振などで応用される。
誘導放出の強さは、外部から加えられたエネルギーの強さに応じて変化する。外部からのエネルギーに関係なく放出されるエネルギーは自然放出と呼ばれる。
- 誘導放出を利用することで、光のコヒーレントな増幅が可能となり、位相や波長の揃ったレーザー光の発振に用いられる。この際には誘導放出が、自然放出や吸収(誘導吸収)よりも強く起こるようにする必要がある。たとえば半導体レーザーなどの場合、nm単位の大きさの量子井戸にエネルギー準位の揃ったキャリアを集中的に注入して反転分布を形成させ、さらに光共振器で放出光をフィードバックすることで効率よく発振させる工夫が施される。
- 誘導放出は、発光遷移の確率を高めることで発光ダイオードなどの発光効率の向上にも応用できる。このような誘導放出による高効率発光はスーパールミネセンス(superluminescence)などと呼ばれる。
- 原子(または分子)における誘導放出現象は、マイクロ波の増幅や、発振器に用いられる。原子周波数標準に用いられる水素メーザーなどが代表的な応用例である。