蛍光
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蛍光(けいこう、fluorescence)とは、
- 最も広義にはルミネセンスによって放出される光全般を指す。
- 1.の中で電子の励起が短波長の電磁波によって行われるものを指す。
- 2.の中で励起のための電磁波を止めるとすぐに発光が消失する発光寿命が短いものを指す。
1.の場合の蛍光は、夜光塗料のように放射性元素から出る放射線による励起による発光や ルミノールの発光のように化学反応によって生成した励起状態にある分子からの発光を含む。
2.の場合の蛍光は、X線や紫外線、可視光線が照射されてそのエネルギーを吸収することで 電子が励起し、それが基底状態に戻る際に余分なエネルギーを電磁波として放出するものである。
蛍光を観測するのは吸収を観測するのに比べて感度的に優れているため、HPLC(高速液体クロマトグラフィ)などで微量分析を行うときなどには 対象物を蛍光を発する誘導体に変換して分析する方法がしばしば用いられる。
物質に波長の短いX線を照射するとその構成元素の内殻の電子が原子外に弾き飛ばされる。そのようにしてできた 空の軌道に外側の殻から電子が遷移し、余分なエネルギーをX線として放出する。このX線は蛍光X線と呼ばれる。 蛍光X線のエネルギーは放出する元素によって決まっている。そのため特性X線や固有X線とも呼ばれる。 そこである特性X線がどれくらい出てくるかを調べることで物質中のある元素を定量することができる。 このような元素分析法を蛍光X線分析という。
蛍光を発する染料は蛍光染料と呼ばれる。これは蛍光インクなどに使用されている。 可視光では無色で青色の蛍光を発する染料は紙や布の黄ばみを隠蔽する効果があるため、蛍光増白剤として使用される。
蛍光灯は低圧水銀灯の表面に水銀の発する紫外線を吸収し蛍光として可視光線を発する物質を塗布したものである。
蛍光を発している物質に対して、そのエネルギーを吸収できるような適切なエネルギー準位をもつ物質を添加すると 蛍光が消失する。これを消光といい、消光を起こす物質を消光剤という。
3.の場合の蛍光に対して、励起のための電磁波を止めても発光が持続する発光寿命が長いものは燐光という。 しかし蛍光と同じ状態間の遷移に由来するにも関わらず発光寿命が長い遅延蛍光と呼ばれる現象もあることから 現在では別の分類の仕方がされている。
この分類によれば分子では発光過程の始状態と終状態のスピン多重度が同じものを蛍光といい、そうでないものを燐光 という。スピン多重度が異なる遷移は禁制であるから寿命が長くなる。遅延蛍光では励起された後に一旦スピン多重度の 異なる状態への遷移が起こり、そこから禁制遷移を起こして発光過程に入るので寿命が長い。
結晶では分子と異なりスピン多重度の特定が困難であるので、発光の寿命が発光過程の遷移確率で決まっているものを 蛍光、励起されてから発光過程に移るまでの遷移確率で決まっているものを燐光という。