自動車アセスメント
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
自動車アセスメントとは自動車の安全性能評価のこと。
目次 |
[編集] 概要
実車を使用した衝突試験など実際のデータを計測することにより個々の車種別にその衝突安全性を評価するもの。ユーザーが安全性の高い自動車を選択できるよう情報を提供する。また、自動車関連メーカーにはより安全な自動車の開発を促す。そのために信頼できる安全性能評価をおこないそれを公開するもの。通常は新車が評価対象となっている。
行政サービスとしておこなわれているもの、自動車メーカー関連団体や自動車保険の団体がおこなうもの、ユーザー団体がおこなうものなどがある。日本では行政サービスとして国が、国土交通省管轄でおこなっているものがある。安全の為には、自動車自体と同時に道路の側の安全の検証も必要となる。この「自動車アセスメント」は自動車自体の検証となる。
- NCAP、 ユーロNCAP、および 自動車アセスメント (日本)も参照。
[編集] 世界
[編集] 米国
- 詳細はNew_Car_Assessment_Programmeを参照。
米国で1979年からNCAP(New Car Assessment Programme)として実施された。
実施団体には、米国運輸省の道路交通安全局(NHTSA)がおこなっており、一般には、政府5つ星評価(government 5-star ratings)として知られている。前方衝突安全性を提供。1996年(1997年モデルイヤー)から側面衝突安全性、2000年(2001年モデルイヤー)からは転倒時安全性も加えられた。その目的は、車両購入時の意思決定に正確な安全性データを提供することにある。星マーク1個から5個で評価され5個が最高点。[1]
また、保険業界の非営利団体米国道路安全保険協会(IIHS)では、自動車の衝突事故における人、車両、道路環境の3要素すべてを視野に入れた事故防止策、および事故発生前、事故発生時、事故発生後のそれぞれの損傷の軽減に焦点を置いた調査研究を行っている。en:Insurance Institute for Highway Safety、[1] 業界を代表して乗用車に対する衝突安全試験を実施。結果も公開され、専門家や車両ユーザーに利用される。前面、背面、側面衝突試験などがおこなわれる。
自動車購入者は、双方の情報を比較することができる。NHTSAとIIHSの評価が異なることもある。
[編集] 豪州
- 詳細はANCAPを参照。
オーストラリアでは、オーストラレイシアン自動車アセスメント (ANCAP:Australasian New Car Assessment Program)1924年設立のオーストラリア自動車連盟(Australian Automobile Association (AAA))が、オーストラリアとニュージーランドの自動車クラブ、オーストラリア連邦を構成する各州の道路安全局(ニューサウスウェールズ州、ビクトリア州、、サウス・オーストラリア、クイーンズランド、タスマニアおよび西部オーストラリア)、ニュージーランド政府およびFIA(国際自動車連盟)の下部機関「FIAファウンデーション」の支援を得て実施。ANCAP 概要パンフレット
[編集] 欧州
- 詳細はユーロNCAPを参照。
欧州で、各国の交通行政組織、自動車クラブ、保険団体が合同でおこない結果が公表される。実事故の調査はSNRA (スウェーデン国有道路管理局)およびSARAC(Safety Rating Advisory Committee:欧州共同体(EC)資金援助団体:実事故分析に基づく安全評価手法に関する国際会議)によりおこなわれている。
[編集] アジア
中国:中国自動車技術研究センター(CATARC)、韓国:建設交通部(KMOCT)でも事業が開始され、また、インド:国立自動車試験・研究開発基盤プロジェクト(NATRIP)などでも検討されている。
[編集] 日本
- 詳細は自動車アセスメント (日本)を参照。
日本では、「自動車アセスメント」は国土交通省が実施している。1995年から運輸省主導で、自動車アセスメント(Japan New Car Assessment Program:JNCAP)が開始され、自動車事故対策センターが評価実施をおこなった。実施機関はのち、独立行政法人自動車事故対策機構に組み替えられ、実車衝突試験に基づく車種別衝突安全性評価がおこなわれている。
前面衝突安全性能、ブレーキ性能、側面衝突試験、2000年度からはオフセット前面衝突安全性能、2003年度からは歩行者頭部保護性能試験を追加している。
[2]車種別に「衝突安全性能試験」、「歩行者頭部保護性能試験」、「ブレーキ性能試験」の三種の指標(評価結果)を公開している。
[編集] 世界NCAP会議
- 詳細は世界NCAP会議を参照。
独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)は2006年10月31日から11月2日まで、世界の自動車アセスメント(NCAP)機関がNCAPの協力強化を図るための第4回世界NCAP会議を、オーストラレイシア自動車アセスメント(ANCAP)と共催した。
[編集] 比較
- NCAPによる車種別の衝突安全性評価は、規定された試験条件下における実車衝突試験結果の比較。
- 豪州や欧州では事故データによる車種別の衝突安全性評価がおこなわれ、NCAPとの関係も検討されはじめている。同等な条件で車種別の衝突安全性を示すかが課題
- 日本自動車研究所ではJNCAP評価結果との対比をし、JNCAPの評価が実際の衝突安全性を反映しているかどうかの検証をおこなっている。
[編集] 有効性
衝突安全性能を購入する際の指針として考えたとき、これらのデータがユーザーのクルマ選択に活かされているかとなると疑問符が付く。残念ながら自動車アセスメントは、クルマ選択のアイテムとして認知度が十分高いとは言えない。
シンポジウム後のパネルディスカッションでも同様の意見が聞かれ、一般ユーザーに向けた親しみやすい形でのデータ開示方法は要検討だ。
また、自動車アセスメントが一定の成果をあげていくなかで、今後の課題とされているものもある。たとえば、ともに衝突安全性能が高いとされる重量車と軽量車の衝突では、軽量車のダメージの大きさが目立つ。歩行者も含めた交通弱者の保護は今後の大きな課題なのだ。
もちろん、交通事故の死傷者ゼロを目指すためには、クルマの安全性だけを追求しても限界がある。そのためには、自動車アセスメントだけでなく、クルマの設計も包括した交通システム全体の再整備が必要だろう。そんなクルマ社会がいつの日か訪れるかもしれない。
自動車専門家の中にも批判的な意見もある。[3]