臍帯血
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さい帯血(臍帯血;さいたいけつ)とは、胎児と母体を繋ぐ胎児側の組織であるへその緒(臍帯;さいたい)の中に含まれる血液。造血幹細胞が多量に含まれていることが知られている。白血病や再生不良性貧血などの難治性血液疾患の根本的治療のひとつである造血幹細胞移植において、幹細胞の供給源として骨髄および幹細胞動員末梢血とともに利用される。さい帯血は、細胞提供者(ドナー)の負担がほとんどないことから理想的な供給源といえる。
最近、造血幹細胞以外の体性幹細胞である間葉系幹細胞がさい帯血中から見出された。これまで間葉系幹細胞は骨髄中に存在することが報告されていたが、骨髄だけでなくさい帯血も間葉系幹細胞の供給源として、骨や軟骨の組織工学的修復あるいは再生医療への臨床応用へ適用できる可能性が示された。さらに、神経細胞や肝細胞、上皮細胞など、より広範な組織への多分化能を有する前駆細胞の存在も示唆されており、世界各国で熱心に研究がすすめられている。
日本国内では公的さい帯血バンクが、善意の提供を受けたさい帯血を保存するという体制がととのえられており、造血幹細胞移植ではこれらのさい帯血でまかなわれている。一方、さい帯血の将来の再生医療での利用に期待して、さい帯血を子供本人のために保存しておくというビジネス(民間さい帯血バンク)が米国を中心に拡大している。日本でも数社がさい帯血保管事業をおこなっている。