石に泳ぐ魚
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
文学 |
ポータル |
各国の文学 記事総覧 |
出版社・文芸雑誌 文学賞 |
作家 |
詩人・小説家 その他作家 |
『石に泳ぐ魚』(いしにおよぐさかな)は、作家・柳美里の小説(はじめての小説作品)。実在の韓国人女性をモデルとし1994年に文芸誌「新潮」(9月号)に発表された。
目次 |
[編集] 訴訟と社会への反響
モデルとなった女性は作品を読み、自分の国籍、出身大学、専攻、家族の経歴や職業などがそのまま描写されたことを知り、出版差止めの仮処分を申請。その後東京地裁で出版社と著者に対する訴訟を提起して、出版差し止めと慰謝料を請求。訴訟は最高裁まで争われた。最高裁は名誉・プライバシー・名誉感情の侵害を認めた。
これらの経緯は仮処分の段階から「小説表現の自由」をめぐって論議が起き、マスコミ・論壇・文学界から大きな注目を集めた。しかし、作家から柳美里への支援はほとんどなかった。最高裁の判決は名誉権侵害と表現の自由をめぐる重要判例のひとつとされている。しかしこの裁判の社会的意味について考察はあまりにも少ない。
[編集] 文献
[編集] 『石に泳ぐ魚』
- 改訂版『石に泳ぐ魚』新潮社、2002年10月、ISBN 4104017019
- 同『石に泳ぐ魚』新潮文庫、2005年10月、ISBN 4101229309
[編集] 柳美里の主張
- インタビュー(東京新聞2002年12月4日夕刊)
- 「交換日記」(「新潮45」2003年1月号 - 7月号)
[編集] 評論
- 鹿砦社編集部編『「表現の自由」とは何か? プライバシーと出版差し止め』鹿砦社、2000年6月、ISBN 4846303837
- 丸山昇「芥川賞作家・柳美里の処女作『石に泳ぐ魚』浮沈の危機」を所収
- 皓星社編『過去への責任と文学 記憶から未来へ』皓星社、2003年8月、ISBN 477440361X
- 青弓社編集部編『プライバシーと出版・報道の自由』青弓社、2001年2月、ISBN 4787231812
- 宝島社編『まれに見るバカ女 社民系議員から人権侵害作家、芸なし芸能人まで!』宝島社、2003年1月、ISBN 4796630988
- 石井政之編『文筆生活の現場 ライフワークとしてのノンフィクション』中公新書ラクレ 2004年5月 ISBN 412150139X
- 法学セミナー編集部編「法学セミナー」2003年1月第577号、2002年12月[1](以下を掲載)
- 「柳美里『石に泳ぐ魚』最高裁判決をめぐって 判決が投げかけているもの」(座談会: 木村晋介・三田誠広・田島泰彦)
- 山家篤夫「『石に泳ぐ魚』 公共図書館での掲載雑誌の利用制限をめぐって」
- 資料: 柳美里訴訟の概要、一審・二審判旨、最高裁判決、引用判例
[編集] 外部リンク
[編集] 判決
- 第一審 東京地裁(東京地判平11・6・22、判時1691・91 @須賀博志の憲法講義室)
- 控訴審 東京高裁(東京高判平13・2・15、判事1741・68 @須賀博志の憲法講義室)
- 上告審 最高裁(最判平14・9・24、判事1802・60 @須賀博志の憲法講義室)
[編集] その他
- 学習院大学・戸松秀典 - 憲法演習戸松ゼミ: 「『石に泳ぐ魚』判例研究(2003年6月2日)
- 日本図書館協会(図書館の自由委員会): 「石に泳ぐ魚」利用禁止措置の見直しについて(国立国会図書館へ要望)(2003年3月6日)
- 日本ペンクラブ「電子文藝館」: 田島泰彦「柳美里作『石に泳ぐ魚』最高裁判決について」(2002年10月23日)
- ジャーナリストが書いた電子小説の店-Play_Fellow(インターネット格闘記第53回): 表現の自由と私小説をめぐる裁判(2002年9月26日)
- 弁護士 梓澤和幸のホームページ(今、コミットしている現場から): 「『石に泳ぐ魚』事件・勝訴」(2002年9月24日)、「『石に泳ぐ魚』事件に関するコメント」(2002年10月11日)、「『石に泳ぐ魚』改訂版に対する声明」(2002年10月30日)、インタビュー「『報道の自由』の危機」(2004年4月7日)
- Webダ・ヴィンチ: 「柳美里インタビュー」(2002年、改訂版刊行時のインタビュー)
- 柳美里論 http://d.hatena.ne.jp/yumiriron/