皇室典範に関する有識者会議
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皇室典範に関する有識者会議(こうしつてんぱんにかんするゆうしきしゃかいぎ)は、第87・88・89代内閣総理大臣小泉純一郎の私的諮問機関。
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[編集] 概説
2004年12月27日に設置され、皇位継承やそれに関連する制度について2005年1月より17回の会合を開き、同年11月24日には皇位継承について女性天皇・女系天皇の容認、長子優先を柱とした報告書を提出した。
同年5月31日に行われた第6回会合では、大原康男(国学院大学教授)、高橋紘(静岡福祉大学教授)、八木秀次(高崎経済大学教授)、横田耕一(流通経済大学教授)の4人から、また同年6月8日に開かれた第7回会合では、鈴木正幸(神戸大学副学長)、高森明勅(拓殖大学客員教授)、所功(京都産業大学教授)、山折哲雄(国際日本文化研究センター名誉教授)の4人からそれぞれヒヤリングを行った。
[編集] 報告書の主な内容
- 女性天皇及び女系天皇を認める。
- 皇位継承順位は、男女を問わず第1子を優先とする。
- 女性天皇及び女性の皇族の配偶者も皇族とする(女性宮家の設立を認める)。
- 永世皇族制を維持する。
- 女性天皇の配偶者の敬称は、「陛下」などとする。
なお、女性天皇の配偶者の具体的な呼称については触れられていない。 - 内親王の自由意志による皇籍離脱は認めない。
[編集] 皇室典範に関する有識者会議のメンバー
- 岩男壽美子 (武蔵工業大学教授・慶應義塾大学名誉教授、女性学の大家)
- 緒方貞子 (国際協力機構理事長)
- 奥田碩 (日本経済団体連合会会長)
- 久保正彰 (東京大学名誉教授)
- 佐々木毅 (学習院大学教授・元東京大学総長)
- 笹山晴生 (東京大学名誉教授)
- 佐藤幸治 (近畿大学法科大学院長・京都大学名誉教授)
- 園部逸夫 (元最高裁判事・外務省参与(監察査察担当)・座長代理)
- 古川貞二郎 (前内閣官房副長官)
- 吉川弘之 (産業技術総合研究所理事長・元東京大学総長・座長)
[編集] 会議への批判
会議のメンバーの中に、過去に「天皇廃止」を公式・非公式に意見したことがある人物や極端なジェンダーフリー論者が含まれていること、座長の吉川弘之(専門はロボット工学)をはじめとしてメンバーのほとんどが皇室について十分な学識がないことなど、皇室の重要な問題を会議するには問題があるという意見もある。
2006年2月17日付の産経新聞は、2004年5月に政府内で非公式検討会が開かれ、予め「女帝・女系容認」の方向を打ち出していたと報じており、「始めから女帝・女系ありきの会議だったのではないか」との疑惑がもたれていた。同年3月11日付の産経新聞と毎日新聞の報道により、メンバーの岩男壽美子が海外向け雑誌「ジャパンエコー」に発表した論文で、「皇位継承問題は7、8年前から内閣官房内のグループによって研究されていた」と執筆していたことが明らかになり、継続的に審議されていた事が分かった。
[編集] 親王誕生の余波
2006年9月6日、秋篠宮文仁親王に悠仁親王が誕生した。41年ぶりの皇族男子誕生であり、現行の皇室典範に基づいて皇太子徳仁親王、秋篠宮文仁親王に次ぐ第3位の皇位継承資格を有する。これによって当面の間、皇統断絶の危機は回避されたといえる。そのためポスト小泉とよばれていた当時の自民党総裁候補安倍晋三・麻生太郎・谷垣禎一らはいずれも改正に慎重な姿勢を示すようになった。「有識者会議の結論に法的拘束力はない」「あと40年は大丈夫」などの発言も相次いでいる。事実上、有識者会議の報告書は棚上げされたものと見られる。だが現行の皇室典範のままで、今後皇室に男子が誕生しなければ、現在のところ最年少である悠仁親王が成人になった頃には他の親王や内親王は全て死没する、あるいは他家に嫁いでしまっている可能性があり、どちらにしても男子一人きりではこの先の不安要素は多い。
[編集] 関連項目
- 小泉純一郎
- 皇位継承問題 (平成)
- 御落胤
- 皇室財産詐欺
- 天皇制廃止論
- 皇室追っかけ
- 悠仁親王