活性酸素
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活性酸素(かっせいさんそ)は、酸素が化学的に活性になったもので、非常に不安定で強い酸化力を持つ。分子構造は本来の酸素分子とそれほど大きく違わない。 本来、活性酸素のみならず、酸素は生物にとって極めて有毒であった。酸素があると生存できない嫌気性単細胞生物が存在するのはこのためである。これを進化の過程で、ミトコンドリアやその他反応回路で酸素のエネルギーを取り出し、副産物である活性酸素を酵素で分解することができる、好気性生物が出現した。酸素はそれまでに比べて遥かに高いエネルギー効率を有していたため好気性生物は活発に動き回り、劇的に進化をとげ、果てには人類にまで進化したといわれている。
[編集] 活性酸素の種類
一般に活性酸素とフリーラジカルは混同されることが多いが、活性酸素にはフリーラジカルとそうでないものがある。スーパーオキシドアニオンラジカルやヒドロキシルラジカルはフリーラジカルである。過酸化水素や一重項酸素はフリーラジカルではない。広義の活性酸素には一酸化窒素、二酸化窒素、オゾン、過酸化脂質などがある。
- 狭義の活性酸素
- スーパーオキシドアニオンラジカル
- ヒドロキシルラジカル
- 過酸化水素
- 一重項酸素
- 広義の活性酸素
- 狭義の活性酸素
- 一酸化窒素
- 二酸化窒素
- オゾン
- 過酸化脂質
[編集] 活性酸素と人体の関係
活性酸素は激しいスポーツをする、煙草を吸う、紫外線、大気汚染、加齢、ストレス等で、日常生活のさまざまな場面で体内で発生しているといわれている。 また、肥満により増加するともいわれている。実際には、あらゆる好気性生物は呼吸によって酸素を消費する際に活性酸素を発生させており、それを酵素により無毒化している。
活性酸素はがんや生活習慣病、老化等、さまざまな病気の原因であるといわれており、遺伝子操作によって活性酸素を生じやすくした筋萎縮性側索硬化症のモデル動物も存在するが、因果関係がはっきりとしていないものも多い。
従来、活性酸素を老化の有力な原因の一つとするのが定説であったが、2005年7月、東京大学食品工学研究室の染谷慎一をはじめとする東京大学・ウィスコンシン大学・フロリダ大学の共同研究チームは活性酸素は老化に関与していないとする研究結果を発表した。
以上のように基礎研究のレベルでは疾患への関与が指摘されているが、実際には議論の余地が多い。健康情報や、健康食品の分野では、影響が拡大解釈され概念だけがひとり歩きしている感がある。
[編集] 抗酸化物質と酵素
抗酸化物質にはビタミンC、ビタミンE、ベータ・カロチン、ビタミンAなどがある。 活性酸素を除去する酵素にはカタラーゼ、スーパーオキシドディスムターゼなどがある。
近年アメリカでは、食材や健康食品の抗酸化能力の指標としてORACを採用する傾向にある。
抗酸化作用で酸化ストレスを抑制する、とされている各種ビタミンの科学的根拠は立証されていない。ベータ・カロチンでは逆に、過剰摂取によって癌や心血管死のリスクを増す可能性が指摘されている。
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