栗本慎一郎
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
栗本 慎一郎(くりもと しんいちろう、1941年11月23日 - )は、経済人類学研究者・法社会学研究者、評論家。栗本慎一郎自由大学学長、東京農業大学国際食料情報学部教授、拓殖大学客員教授、帝京大学客員教授。元衆議院議員。元経済企画庁政務次官。 父は最高裁判所判事の栗本一夫。
目次 |
[編集] 略歴・人物
東京学芸大学附属世田谷中学校 - 東京都立戸山高等学校 - 慶應義塾大学経済学部 - 同大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。大学時代のバイトで仮面ライダーシリーズにカルビーのスポンサーをつけ、かっぱえびせんの「やめられないとまらない」というコピーを作ったなどの逸話がある。
天理大学専任講師、奈良県立短期大学(のちの奈良県立商科大学、現在の奈良県立大学)助教授を経て、明治大学法学部助教授に着任し、のち教授に昇格。明大時代の自身のゼミには、体育会の学生を多く集め、教え子にタレントの大川豊や元野球選手の平田勝男がいる。
明治大学教員時代に雑誌『現代思想』に著した連載が評判を呼び、いわゆる「ニューアカ(ニュー・アカデミズム)」ブームの先鋒をつとめる。経済人類学(カール・ポランニー)の紹介や「過剰-蕩尽理論」の提示、マイケル・ポランニー等の科学哲学やジョルジュ・バタイユの積極的な紹介、当時流行した「全ては幻想である」との唯幻論の理論構築をおこなったほか、脳内伝達物質にいち早く注目し、太陽からの磁気が経済の波を引き起こす説の紹介や、議論の技術を向上させるディベートの普及に尽力するなど、山口昌男らを端緒とするジャーナリスティックな活動をより積極的におこない、新人類という言葉を作り出し、1980年代の日本のニューアカデミズムなどの思想界に対し、栗本自身によれば学者のマスコミ進出とそれによる保守化をもたらした(鉄の処女、読書原論等)。
その活動と活力はアカデミズムのなかだけにとどまることなく、フジテレビの番組料理の鉄人では審査員を務めるなど、多彩な活動でマスコミに知られるようになる。1991年に、大学の腐敗と学生の怠惰に抗議すると表明して、突如教授を辞任。
1993年7月には、衆議院議員総選挙に新生党の推薦を受けて無所属で出馬(東京3区)し、当選する。しかし、1994年12月の新進党の結党には参加せず、自由連合所属を経て、自由民主党に入党して、国会議員を引退した石原慎太郎の選挙区を譲り受けた。1996年10月の総選挙にも、自民党公認候補として立候補し、新進党公認の松原仁などを破り再選される。1999年4月の東京都知事選挙では非自民だった舛添要一候補の選対本部長をつとめたが、後に離反。通信傍受法(盗聴法)に田中真紀子とともに採決の際に反対し、単独で離党届をだす。田中真紀子はそのまま自民党に残ったが、栗本の離党届は受理されず除名処分となる。宮崎学率いる電脳突破党に参加する。同年の10月に脳梗塞で倒れたが、リハビリののち、復帰している。
2000年6月の総選挙では、通信傍受法成立時の郵政大臣だった八代英太と同じ選挙区(東京12区)から電脳突破党・自由連合公認で出馬するが、最下位落選し、政界からも事実上足を洗う。
近年は、大学の教壇に立つかたわらで、自身が経験した脳梗塞に関する仕事も精力的におこなっている。
新生党時代は小沢一郎の側近として動いたが、袂を分かった後は小沢批判の急先鋒となり、メディアなどで「馬鹿」呼ばわりして罵倒するなどして話題になった。栗本によれば小沢が旧社会党を追い詰めずにそのまま待っていれば、都市部の自民党が分裂し真の政界再編がなし得るはずだったが、小沢に過去の反省を細かく求められた社会党は連立政権を離脱し、小沢憎しで自社政権を誕生させ、自衛隊は合憲とまで突っ走ったのである。栗本によれば、このことによって真の政界再編・官僚政治の打破は数十年単位で遠のいたのである。
前首相の小泉純一郎とは慶大時代の同窓で、栗本の自民党入り後小泉のブレーンを勤めるなど近い関係にあったが、小泉純一郎に対しても2005年、週刊誌上において政策音痴で性格も悪いと痛切に批判した。これは、小渕政権時に日本のアメリカ従属がエスカレートした(盗聴法反対・自民党離脱も同じ意味)ことの延長線上に小泉もいるとの栗本の判断からで、「何度も小泉・小沢にレクチャーしたのに」というかれの思いがつまっている。
栗本の意見は決してわかりやすいとは言えず、栗本は喧嘩別れが多く、またテレビ出演時の皮肉めいた口調や論破されるとすぐに意見を変えるように見える等から、政界や学術界にも敵が多いことが、何れの分野でも大成できなかった要因であると思われるが、かれの言わんとするところを検討するのは極一部の人間であり、後世の評価にまかされている。栗本自身の弁明は、最近著『パンツを脱いだサル』に書いてある。
[編集] 著書
- 『経済人類学』、東洋経済新報社、1979年。 ISBN 4492311181
- 『幻想としての経済』、青土社、1980年。 ISBN 4791750667
- 『光の都市 闇の都市』、青土社、1981年。 ISBN 4791750314
- 『パンツをはいたサル』、光文社、1981年。 ISBN 433406003X
- 『法・社会・習俗』、同文舘出版、1981年。 ISBN 4495456822
- 『ブダペスト物語』、晶文社、1982年。 ISBN 4794937776
- 『鉄の処女』、光文社、1985年。 ISBN 433406017X
- 『パンツを捨てるサル』、光文社、1988年。 ISBN 433406034X
- 『意味と生命-暗黙知理論から生命の量子論へ』、青土社、1988年。 ISBN 4791750381
- 『ニッポンの終焉』、現代書林、1989年。 ISBN 4876203091
- 『幻想としての文明』、講談社、1990年。 ISBN 4062049694
- 『人類新世紀終局の選択-「精神世界」は「科学」である』、青春出版社、1991年。 ISBN 4413030184
- 『大転換の予兆』、東洋経済新報社、1992年。 ISBN 4492220968
- 『間違いだらけの大学選び』(疾風編/怒濤編)、朝日新聞社、1994年。 ISBN 4022566752 ISBN 4022568224
- 『栗本慎一郎の脳梗塞になったらあなたはどうする-予防・闘病・完全復活のガイド』、たちばな出版、2000年。 ISBN 4813312381
- 『パンツを脱いだサル-ヒトは、どうして生きていくのか』、現代書館、2005年。 ISBN 4-7684-6898-5
- 『シリウスの都 飛鳥』、たちばな出版、2005年。 ISBN 4813319068
- 『純個人的小泉純一郎論』、イプシロン出版企画、2006年。 ISBN 4903145107
[編集] 共著・対談・鼎談
- 『経済の誕生-富と異人のフォークロア』、工作舎、1982年。※小松和彦との対談。ISBN 4875021119
- 『相対幻論』、冬樹社、1983年。※吉本隆明との対談。
- 『俺たちはノイズだ』、冬樹社、1983年。※糸井重里との対談。
- 『闇の都市-血と交換』、朝日出版社、1985年。※笠井潔との対談。ISBN 4255850321
- 『現代思想批判/言語という神』、作品社、1985年。※小阪修平との対談。ISBN 4878936045
- (青木孝平・石川晶康・加藤哲実・北構太郎・和崎春日・三苫民雄)『法社会学研究』、三嶺書房、1985年。 ISBN 4914906287
- 『恋愛幻論』、角川書店、1986年。※吉本隆明、林真理子との鼎談。ISBN 4048750178
- 『罵論・ザ・犯罪-日本「犯罪」共同体を語る』、アス出版、1986年。※小室直樹、長谷川和彦との鼎談。ISBN 4900402125
- (大塚明郎・慶伊富長・広田鋼蔵・児玉信次郎)『創発の暗黙知-マイケル・ポランニー その哲学と科学』、青玄社、1987年。 ISBN 4915614107
- 『死角のなかのアメリカ』、毎日新聞社、1988年。※石川好との対談。ISBN 4620306568
- 『闘論 2000年の埋葬-日本人になにが起こっているか』、ネスコ、1989年。※田原総一朗との対談。ISBN 4890367721
- 『立ち腐れる日本』、光文社、1991年。※西部邁との対談。ISBN 4334060625
- 『加速する変容』、扶桑社、1991年。※吉本隆明、石原慎太郎、中沢新一との対談。ISBN 4594006795)
- 『闘論 政治はこう動く』、講談社、1994年。※舛添要一との対談。ISBN 4062068850
- (安倍晋三・衛藤晟一)『「保守革命」宣言-アンチ・リベラルへの選択』、現代書林、1996年。ISBN 4876209391
- (阿部謹也・山口昌男・加藤哲実・大和雅之)『経済人類学を学ぶ』、有斐閣、1995年。ISBN 4641182388
[編集] 関連図書
- 伊勢史郎『快感進化論』、現代書館、2003年。 ISBN 4768468713