木幡山
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木幡山(こはたやま)は福島県二本松市東部にある標高666mの低山。阿武隈高地に属している。全山を杉林が覆っており、その美しさから福島県名勝及び天然記念物に指定されている。毎年12月には日本三大旗祭りの一つ・木幡の幡祭りが開催される。
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[編集] 概要
木幡山は天台密教の山として開かれ、その後は神仏習合の山として栄えた。山の中腹には式内社・隠津島神社、山麓に治隆寺が建てられ、さらに山中の岩石には千手観音像などの仏像が彫られている。また、山頂にはかつて蔵王宮といわれる神社があったといわれ、現在は山頂尾根上に6基の経塚と花崗岩の立石が残されている。また、中腹の門神社には国天然記念物に指定されている樹齢800年の「木幡の大スギ」が生育している。歴史的に見ると、南北朝時代の建武4年(1337年)に木幡山で合戦があったことが史料で確認され、また、天正13年(1585年)の伊達政宗の仙道(現在の福島県中通り地方)侵攻の際に兵火で山中の神社仏閣が焼き払われたといわれる。その後、江戸時代に二本松藩主・丹羽氏によって復興再建された。現在第一社務所及び麓の一の鳥居から参籠所にかけて散見される石垣はこの時のものであろう。
[編集] 隠津島神社
木幡山中腹にある隠津島神社は奈良時代に建立されたといわれ、延喜式の式内社にも選ばれている。天正13年(1585年)の伊達政宗の仙道侵攻の際に兵火で社殿が焼き払われて衰微したが、その後、領主となった蒲生氏、加藤氏、丹羽氏によって木幡山は保護され、現在の拝殿は寛政元年(1789年)、本殿は寛政12年(1800年)に完成した。本殿の北側奥には養蚕神社、八坂神社、白山神社、疱瘡神社が祀られ、それに至る参道沿いには石仏が彫られ、かつての神仏習合の形跡を窺うことができる。また、拝殿より一段下には延宝2年(1674年)に改築された三重塔が残されている。三重塔の創建はそれ以前であるのは確実だがいつ頃なのか又は創建当初はどのような形だったのかは不明である。ただ戦国期の戦乱の影響でかなり衰微しており、寛永20年(1643年)頃はわずかに初層のみを残していただけだったという。その後、延宝2年(1674年)及び享保元年(1716年)の改修で現在の形となった。明治時代に倒木により破損したため大修理をおこなっている。なお、隠津島神社への参道途中にある門神社の社殿は、現在の本殿が完成するまで隠津島神社の本殿だった建物で、現本殿完成後に現在の地に移された。
[編集] 木幡山経塚群
木幡山山頂尾根上には6基の経塚が東西一直線上に並んで残されている。経塚は小型の積石式で、円形、方形、長形をしており、高さは約1mである。発掘調査では石製外筒、和鏡片、刃子、銅経筒、土師器などが出土し、これらの出土品から12世紀頃の造営と推定されている。また、経塚群の西端には祭祀遺跡と思われる花崗岩の立石も残されており、学術的価値の高い宗教遺跡として福島県史跡に指定されている。
[編集] 木幡の大スギ
門神社前に生育している幹囲9m、樹高27m、樹齢800年の杉の巨木は「木幡の大スギ」と称され、国天然記念物に指定されている。現在は落雷の影響などで幹内の腐蝕が進んで大きな空洞ができている。そのため、10数本の支柱が取り付けられている痛ましい姿となっている。なお、大スギは福島県緑の文化財にも指定されている。
[編集] 木幡の幡祭り
この祭りはさまざまな色の細長い旗をもった白装束の一行がホラ貝を鳴らしながら木幡山山中及び山麓を練り歩く行事で、毎年12月第一日曜日に開催されている。祭りの由来は、平安時代に源義家と安倍貞任の戦いの際に、木幡山に立て籠もった源氏軍を安倍軍が攻めようとしたが、山に積もった雪を「源氏の白旗」と見誤って源氏軍が多勢であると勘違いし退却したという伝説によるものである。ただ、源氏と安倍氏が木幡山で合戦した史実はなく、絹の幡が使用されていることからみて、おそらくかつてこの辺りで盛んだった養蚕業の信仰に源氏の白旗伝説が重なって生まれた祭りであるといえるだろう。なお、祭りは日本三大旗祭りの一つに数えられ、平成16年(2004年)には国指定重要無形民俗文化財に指定された。
[編集] 木幡山の文化財
木幡山は歴史・自然が豊かな山であり、そのため文化財が豊富である。関連する主な文化財は以下のとおりである。
[編集] 国指定
[編集] 県指定
- 隠津島神社三重塔(建造物)
- 治隆寺木造阿弥陀如来坐像(彫刻)
- 木幡山経塚群(史跡)
- 木幡山(名勝・天然記念物)
[編集] 市指定
- 隠津島神社拝殿・本殿(建造物)
- 門神社本殿(建造物)
- 一の鳥居のマツ(天然記念物)
- 木幡山の銅鐘(工芸品)
[編集] 登山
木幡山は全山が福島県名勝及び天然記念物に指定されており、また、うつくしま百名山にも選定されている。山の西麓・二本松市木幡にある遙拝殿(JR二本松駅より車で約30分)近くに駐車場が整備されており、一般的にはここからの登山となる。登山といっても隠津島神社までは参道が整備されており、登山道らしくなるのは神社から山頂までの約20分のみである。山頂は木々に囲まれて展望には恵まれていない。なお、ほかに川俣町福沢からの登山道もある。
- 遙拝殿-(20分)-林道-(10分)-隠津島神社本殿-(15分)-経塚-(10分)-山頂