教会暦
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
教会暦(きょうかいれき)とは、キリスト教で用いられる暦のこと。典礼暦(てんれいれき)ともいわれる。1年を周期とする。以下では教会暦を、東方正教会とカトリック教会の具体例を挙げて説明する。
目次 |
[編集] 東方正教会の教会暦
[編集] 概説
東方正教会(以下この項では「正教会」と呼ぶ)では典礼暦にしたがって、移動祝日などが決められ、典礼や朗読・聖歌の配分、祭服の色などが決まる。現在では朗読箇所の配分は復活大祭を基準として毎年同じであるが、過去には三年周期で配分されたとの記録もある。
東方正教会の教会暦には二つの数え方がある。ひとつは9月を始まりとする一年に固定祭日を配したものである。9月を始まりとするのは、旧約時代からの伝統を継承する(ユダヤ暦の正月は9月である)ものである。太陽暦によるため、日は固定している。クロノロギオンと呼ばれる諸聖人および固定祝日を配置したイコンは、これに従って、9月と3月を区切りとする。
もうひとつの暦は、移動祭日である復活大祭を基準とする。他の移動祭日は復活祭によって決まる。また主日(日曜日)を初めとする年間の朗読も基本的に復活祭を基準として決まる。ただし、聖神降臨祭後は、聖神降臨祭を数える起点とする。また主の降誕祭など一部の祭日の前後は、これを基準に日を数える。さらに祭日のための典礼を行う場合にも、朗読や聖歌はその祭日に記憶する聖人や出来事によって決まる。
また正教会の特色として、斎などの規定がある。特別の祭日を除き、水曜日および金曜日には肉・魚・乳製品・オリーヴ油を避ける。詳しくは斎の項を参照。
[編集] 基本的構造
以下、現在の正教会の基本的な教会暦の構成を示す。固定祝日の日付はユリウス暦による表示をグレゴリオ暦に換算したものを示す(ロシア正教会などではユリウス暦を使用している)。
- 復活大祭 聖大パスハとも。春分の後の満月の次の日曜日。十字架行の後、王時課と呼ばれる復活大祭の典礼が行われる。祭服は赤。復活大祭において王門(イコノスタシスの正門)が開かれる。復活大祭以降、聖神降臨祭までが復活節。復活節の間は、聖体礼儀の際にも伏拝を行わない。これは立拝が喜びの姿勢であるからである。
- 光明週間 一週間毎日聖体礼儀が行われる(ただし日本では行われない)。この期間は王門(イコノスタシスの正門)が開放される。また一切の斎を行わない。
- 聖神降臨祭 復活大祭の50日後。主日(日曜日)。祭服は緑。これ以降、大斎準備期間に入るまで、この日を基準に日を数える。この後の一週間は斎を行わない。
- 諸聖人の主日(聖神降臨祭後第一主日) 聖神降臨祭の次の主日。この翌日より聖ペトロ・パウェル祭までは「使徒の斎」を行う。
- 聖ペトロ・パウェル祭 7月12日。十二使徒の首座であるペトロと「異邦人の使徒」パウロの記憶。中祭。
- 使徒フィリップの記憶日 11月27日より、「フィリップの斎」を行う。本来は40日で、西方教会の待降節にほぼ相当する。
- 主の降誕祭 日本、ギリシア、アメリカの一部で12月25日。ロシアなどで1月6日(ユリウス暦の12月25日)。キリストの誕生と三博士の礼拝を記憶。主の洗礼祭までは降誕節。
- 大斎準備期間(Triodion)3週間にわたって大斎の準備期間がある。通常、聖神降臨祭後第32主日の翌日からはじまるが、年によっては第33主日の翌日からになる。
- この時期および大斎中におこなう祈祷は「三歌斎経」と呼ばれる聖歌集におさめられている。これは赦しと和解の時期であり、斎の節制が緩められ、主日には「放蕩息子の喩え」などの箇所が三週にわたって朗読される。そして「赦罪の主日」と呼ばれる大斎準備期間の最後の主日の晩課には、信者は互いに伏拝(相手の前に跪く。通常の聖体礼儀において聖体に跪拝するのと同じ姿勢である)し、相手に犯した罪の赦しを請う。
- 大斎 大斎(おおものいみ)は復活祭の前40日間(ただし土曜日と日曜日を除く)の節制の時期である。日曜日の日没、赦罪の晩課から始まる。祈りと節制の時期であり、多くの教会では、毎日公祈祷が行われる。司祭の祭服は土曜日と日曜日は紫、平日は黒を用いる。聖堂も黒布で覆ってきわめて厳粛なよそおいとなる。
- 聖枝祭 復活大祭の一週間前。正式にはこれ以降は大斎には属さない。
- 受難週
- この週は金曜日(聖大金曜日)を除き毎日聖体礼儀を行う。聖大土曜日晩課に、祭服を白に改め、また聖堂の装飾を改める。
[編集] 十二大祭と他の祭
上記の基本的構造に加え、いくつかの重要な祭日がある。特に重要なものを「十二大祭」と呼ぶ。復活大祭は別格に重要な祭であるため、十二大祭には含まれない。ほかに中祭・小祭があり、地域ごとに選択して祝う。なお中祭のうちには、ペトル・パウェル祭のように全世界的に祝われるものもある。
- 主の洗礼祭 1月19日。ヨルダン川でのキリストの洗礼を記憶。神顕祭とも。これをもって降誕節が終わる。
- 主の迎接祭 2月。キリスト生後40日に、マリヤが浄めのため神殿に詣でたところ、預言者シメオンらとであい、イエスがメシアであること等を予言されたことを記憶。
- 生神女福音祭 4月7日。年により大斎の最中に祝われる。このときには大斎中であっても、魚がゆるされる。
- 聖枝祭 復活大祭の一週間前。エルサレム入城を記憶。主日。正式にはこれ以降は大斎には属さない。
- 主の昇天祭 復活大祭の40日後。キリストの昇天を記憶。木曜日。
- 聖神降臨祭 復活大祭の50日後。主日。この後の一週間は斎を行わない。
- 主の変容祭 8月19日。キリストの変容の記憶。
- 生神女就寝祭 8月28日。神の母マリヤが地上の生命から永遠の生命に移ったことを記憶。この直前に「生神女就寝祭の斎」を行う。
- 生神女誕生祭 9月21日。神の母マリヤの誕生。
- 十字架挙栄祭 9月27日。コンスタンティヌス1世とその母ヘレナのエルサレムにおける十字架発見の記憶。
- 生神女進堂祭 12月4日。
- 主の降誕祭 日本、ギリシア、アメリカの一部で12月25日。ロシアなどで1月6日(ユリウス暦の12月25日)。キリストの誕生と三博士の礼拝を記憶。
以下は、上に加えて、現在、日本の正教会で守られている祭りの一部である。
- 聖ニコライ祭、日本に正教を広めた聖ニコライの祝日。日本の守護聖人であり、日本各所で盛大に祝われる。
- 聖ペトロ・パウェル祭 7月12日。12使徒のひとりペトロと「異邦人の使徒」パウロの記憶。中祭。
- 生神女庇護祭 10月14日。コンスタンティノポリスを生神女が庇護した故事を記憶する。ロシアなどで大いに記憶された。中祭。
[編集] カトリック教会の典礼暦
カトリック教会では、伝統的にその一年が待降節(アドベントとも)から始まり、「王であるキリスト」の祝いで終わるサイクルになっている。
カトリック教会では典礼暦にしたがって、移動祝日などが決められ、典礼や朗読の配分、祭服の色などが決まる。基本的に以下のような構成になっている。
- 待降節 クリスマスを準備する期間であり、典礼暦の始まりである。
- 降誕節 「主の降誕(クリスマス)」から始まり「主の公現」にいたる期間である。
- 年間 年間といわれる日曜日(主日)は通常33から34あり、それぞれ「年間第~主日」といわれる。年間主日は四旬節に入るといったん中断する。
- 四旬節 復活祭を準備する時期であり、「灰の水曜日」から始まり「聖木曜日」に終わる。
- 聖なる過越の三日間 復活祭(日曜日)前の木曜日、金曜日、土曜日の三日間であり、特別な典礼がおこなわれる。
- 復活祭 年間を通じ、キリスト教の最も大きな祝い日である。イエスが十字架上でなくなってから三日目に復活したことを記念する。移動祝日といって日付が固定しない祝日である。通常は春分の日のあとの最初の満月に最も近い日曜日が復活祭となる。(2005年は3月27日)
- 復活節 復活祭から49日の間は復活節といわれる。
- 主の昇天 復活後のイエスが弟子たちの前から天に昇ったことを記念。復活祭からかぞえて六回目の主日の後の木曜日が正しい日付けであるが、キリスト教国でない日本では信徒の都合を配慮して日曜日に祝われる。
- 聖霊降臨(ペンテコステ) 主の昇天の木曜日から10日後の日曜日。(日本では翌週の日曜日。)弟子たちの上に聖霊が下ったことを記念。キリスト教会が誕生した日であると考えられている。
- 年間 中断していた「年間」の時期が再開する。年間は「王であるキリスト」の主日で終了し、降誕節から新しい典礼暦が始まる。
- 11月1日 諸聖人の日 固定祝日。すべての聖人の祝い日。
- 11月2日 死者の日 すべての死者のために祈る日。
- 王であるキリストの祭日 移動祭日。年間の最終主日。
他にもフランシスコ・ザビエルは12月3日など、聖人の祝日・記念日が特定の日にあてられている。一般的に聖人の祝日はその聖人の亡くなった日になっている。(聖人暦参照)
[編集] 関連項目
カテゴリ: キリスト教 | ヨーロッパの年中行事 | 暦法