擦過傷
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擦過傷(さっかしょう)とは擦りむいてできた傷、いわゆる擦り傷の事。
切れているのではなく、皮膚が剥けただけの状態をいう。
[編集] 手当て
擦過傷の場合には、砂などの異物が傷口に付着し、感染源となる場合が多いため、まず水道水でよく洗うことが必要である。
これに限らず創傷治療において、かつては消毒液を塗布して化膿を防止するべきとする考えが主流であった。しかしこの方法で消毒をすると、消毒液は体液のタンパク質との反応や希釈によって速やかに細菌を殺すのに必要な濃度を維持できなくなる一方、その濃度でも白血球やリンパ球など免疫に預かる細胞群や、組織再生の基盤となる真皮の結合組織、傷口を被覆しようとする上皮細胞など皮膚の再生に必要な細胞群は容易に殺すため、傷口内に消毒液を入れない方法が国際的にも推奨されつつある。傷の状況によっては医師の判断で化膿を防止するための抗生物質を投与する必要もある。
また、かつては傷は乾燥させてかさぶたができた方が早く治ると言われたが、組織再建に与る細胞群を乾燥死させるダメージのほうが大きく、実際には傷口を湿潤状態に保つ創傷被覆材を1日2~3回貼り替えて傷が乾かないようにした方が創傷面が速やかに上皮細胞のシートで覆われ、早く治るうえに傷跡があまり残らないとする考え方が臨床現場で普及しつつある。そのため、日本では2000年代に入ってガーゼのような創傷面を乾燥させる被覆材を用いるのではなく、アルギン酸被覆材のような乾燥させない被覆材による湿潤療法を実践する医師が増加しつつある。