抜刀術
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抜刀術(ばっとうじゅつ)は、日本刀(打刀とは限らない)を鞘に収めた状態で帯刀し、鞘から抜き放つ動作で一撃を加えるか相手の攻撃を受け流し、二の太刀で相手にとどめを刺す形、技術を中心に構成された武術のことである。
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[編集] 概要
通常抜刀術という名称はまれで、居合、居合術、抜合、居相、鞘の内、抜剣などと呼ばれることが多い。この場合、居とは座っているという意味であると説明する流派もある。また"抜刀術"と書いて"いあい"と読ませる場合もある。室町時代末に居合を創始したという林崎甚助を遠祖とする流派が多いこと、型のひとつとして剣術の流儀に組みこまれているものもあることなどが特徴である。林崎甚助を祖とする流派に伝わっている伝書によると、居合とは
- 「弥和羅(やわら、柔術)と兵法(剣術)との間今一段剣術有る可しと工夫して、刀を鞘より抜くと打つとの間髪を入れざる事を仕出し、是を居合と号して三尺三寸の刀を以て、敵の九寸五分の小刀にて突く前を切止る修業也」
とされる。実際、林崎甚助を祖とする、古い形態を残す流派(林崎夢想流、神夢想林崎流、関口新心流など)では、間近に座した相手が小太刀や短刀で突いてくる想定の型を伝えている。現代武道化したものには居合道、抜刀道などがある。また、抜刀術と書いて「いあい」と読む事も古流には多々ある。
剣術の抜刀状態(=あとは斬るだけの状態)に対して、納刀状態で立ち向かう技術であり、これは「抜いて、それから斬る」という工夫や研鑽の無い通常のままでは、相手より動作が遅れてしまい死につながるため、抜刀術はその不利を有利に変えるべく研鑽された。
刀が鞘に収まった状態であっても、抜刀状態と同じようになるように、胴体からの動きを以て「刀を抜くのではなく、鞘を刀から引き抜く技術」も極く初期の段階としてあった。また、いかなる状態からも相手を斬れるように、座構えや足運びなどの研究を重ね、鞘に収まりながらも抜刀している技術として発展していった。なお、座位の抜刀法 (居合) については、大刀を差したままで座すことは、江戸時代の殿中・屋内では礼法上ありえ無い為、実用的でないとする者もいる。しかし、江戸時代においても殿中・屋内で帯刀のまま座る事例はあり、決して非実用的な想定ではない。礼法から大刀を差したままで座すことがありえないという誤解から、これは不利な状態から優位にたつための修行法であるとする流派も多い。 (実用的でないとする流儀であっても、立居合を重視するだけで、座位における居合も伝えている事はある。また、座位において大刀を腰に差す居合術を、「実戦技法」とする流派は少ない。)
初めに抜刀術と称したのが何者かは判らないが、「鞘抜きから始める剣術」として認識しておけばよい。
過去の日本人の平均的な身長を考えると、三尺(約90cm)以上の刀身をもつ刀は非常に長大なものだが、現代人の身長ならば、二尺五寸~三尺三寸程度は丁度いい長さであるとする者もいる。
なお、居合の概念を、日本刀以外に用いる場合もある(分銅鎖参照)。
一般に、あるいは居合道以外の武道家ですら「居合抜き」と呼ぶことがあるが、これは長い刀を鞘から抜いてみせたり、刀を素早く抜刀し野菜や果物などを切断し、素早く納刀してみせる大道芸のことで、武術の居合とは全く異なるものである。
[編集] 居合の能力
なお、江戸時代から、本当に剣術に対抗できるのか、存在意義はあるのか、といった論争がある。居合の初撃(抜き打ち・抜き附けなど)にはかなりの速度があり伸びもあるのだが、片手打ちであるためどうしても諸手の威力には敵わない。ただ、相手の虚(動作の始まりなどの隙)を突く技術(気合に近い)をもってすれば、剣術に対抗することも可能であるとされる。もちろん、初動作が制限されてしまうため、不利であることに変わりは無い。 護身用・危機回避のための技術であり、積極的に使うものではないと考える流派が多い。尚、居合の理合いには「鞘の中の勝」というものがあり、「刀を抜かずして勝つ」という意味である。修行によって磨き上げた百錬不屈の心魂をもってすれば、自然と敵を威圧できるというもの。殺人剣ではなく活人剣とすることが武道の真髄とされる。
[編集] 使用する道具
日本刀、模擬刀、角帯など(一部流派では鞘付き木刀、兵児帯などを使用)
- 日本刀については江戸時代から刃引きしてある居合刀を使用する場合がある(流派によって異なる)。由緒ある伝世刀や有名刀工の刀は、貴重であるとして、使用しないものが多い。
[編集] 流派
[編集] 林崎系
- 神夢想林崎流(林崎新夢想流系に同名の流派あり)
[編集] 林崎系以外
- 片山伯耆流(片山流)
- 浅賀流
- 山岸流
- 立身流
- 貫心流
- 溝口流居合
- 力信流
- 影山流
- 制剛流
- 柳生制剛流
- 新陰流居合(新陰流併伝の柳生制剛流居合の名称と別伝の抜刀術から新しく作られた居合)
- 柳生制剛流
- 新陰流二刀居合
- 今枝流-初実剣理方一流
- 初実剣理方一流甲冑抜刀術(昭和に初実剣理方一流の免許者によって創始)
- 神道無念流
- 無限神刀流(昭和に大東流の山本角義によって創始)
- 神変自源流
- 本體楊心流(昭和に高木流の皆伝者によって創始)
- 天眞正自源流
- 弧刀影裡流
- 陽真流抜刀術
- 石尊真石流居合
- 不変流(棒術、薙刀術、柔術を含む)
[編集] 関連項目
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