幻想交響曲
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幻想交響曲(Symphonie Fantastique)はルイ・エクトル・ベルリオーズが作曲した交響曲。ベルリオーズの代表作であるのみならず、音楽史上最も重要な作品のひとつに数えられ、初期ロマン派音楽を代表する楽曲である。現代でもオーケストラの演奏会で頻繁に取り上げられる。
「恋に深く絶望しアヘンを吸った豊かな想像力を備えたある芸術家」の物語を音楽で表現したもの。
目次 |
[編集] 概要
この作品の特徴を端的に表すキーワードとして、「標題音楽」と「固定観念」を挙げることができる。
「標題音楽」とは音楽以外の何かを表現することを意図した音楽であり、この作品においては失恋した自分自身の体験を告白することを意図している。
「固定観念」とは、楽曲全体を通して繰り返し現れる主題(旋律)である。この作品においては、作曲者が失恋した相手である、ハリエット・スミッソンへの愛を表す旋律がこれに該当し、楽曲のさまざまな場面において登場する。
標題音楽、固定観念のいずれも、古典派音楽の交響曲にはほとんど見られない特徴である。
全曲を通して、ハリエット・スミッソン(アイルランドの女優。ベルリオーズが恋に落ちた人物で、後に結婚した。)への愛をあらわす旋律が何度も現れる。
この旋律は、曲の中での彼女の登場の仕方によって変化している。たとえば、第一楽章では、曲の主人公となる人物が彼女を想っている場面で現れ、また牧歌的であるのに対して、終楽章では、魔女が主人公の死を告げに来るとき?に彼女を見るときにあらわれる。そして旋律は速く、「やかましくくだらない踊り?」になって、またキーキーとしたE♭管クラリネットで演奏される。
ベルリオーズはこの繰り返される旋律を「イデー・フィクス」(idée fixe)と呼んだ。これはワーグナーが後に用いたライトモティーフと同じである。純粋な管弦楽作品で、この技法をこれほどまで使ったのは幻想交響曲が初めてであろうが、ウェーバーは、それ以前から彼のオペラ作品の中で、人物や物を表現するときに同じ動機の繰り返しを用いていた。また、ベートーヴェンの交響曲第5番では、一つの動機が姿を変えて複数の楽章に登場する。
レナード・バーンスタインは、この交響曲を、音楽の初の幻想世界への冒険だとした。 これは、この交響曲が幻覚的、幻想的な性質があり、またこの交響曲は、少なくとも少しは、ベルリオーズがアヘンを吸った状態で作曲されたという歴史があることなどによる。
[編集] 作曲の経緯と初演
[編集] 後世への影響
ピョートル・チャイコフスキーやグスタフ・マーラーはこの作品の強い影響下にある。
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[編集] 楽器編成
- ピッコロ(フルート2番奏者持ち替え)
- フルート(2)
- オーボエ(2)
- コーラングレ(オーボエ2番奏者持ち替え)
- クラリネット(2)
- 小クラリネット(E♭管)(クラリネット1番奏者持ち替え)
- ファゴット(4)
- ホルン(4)
- トランペット(2)
- (ピストン付き)コルネット(2)
- アルト・トロンボーン
- テナー・トロンボーン(2)
- オフィクレイド(2, 現在はテューバで演奏)
- 打楽器
- ハープ(少なくとも4)
- 弦五部
管弦楽法の面でも、コーラングレ、E♭管クラリネット、コルネット、オフィクレイド(チューバが発明されるまで使用された金管の低音楽器)、複数のハープ、鐘の交響曲への導入、コル・レーニョ奏法の使用、コーラングレと舞台裏のオーボエの対話、4台のティンパニによる雷鳴の表現など、先進的なものを多く見せている。
ベートーヴェンの交響曲第9番など、本作のわずか数年前に作曲された交響曲と比較しても、大きな時代の隔たりが感じられる。
この進取性こそが、ベルリオーズを「近代管弦楽法の父」たらしめている所以でもある。
[編集] 曲の構成
感受性に富んだ若い芸術家が、恋の悩みから人生に絶望して服毒自殺を図る。しかし薬の量が足りなかったため死に至らず、重苦しい眠りの中で一連の奇怪な幻想を見る。その中に、恋人は1つの旋律となって現れる……
全曲の構成面では、ベートーヴェンの交響曲第6番との類似性が指摘できる。
[編集] 第1楽章 夢、情熱
- 原題:Rêveries,Passions。不安な心理状態にいる若い芸術家は、わけもなく、おぼろな憧れとか苦悩あるいは歓喜の興奮に襲われる。若い芸術家が恋人に逢う前の不安と憧れである。
[編集] 第2楽章 舞踏会
- 原題:Un bal。賑やかな舞踏会のざわめきの中で、若い芸術家はふたたび恋人に巡り会う。だれとは知らぬ見知らぬ男とワルツを踊る恋人は、人並みにのまれ遠ざかっていく。「固定概念」の旋律が随所に現れ、最後はテンポの速い流麗なメロディーと共に華やかに終わる。交響曲ではじめて「ワルツ」を用いた楽章でもある。
[編集] 第3楽章 野の風景
- 原題:Scène aux champs。ある夏の夕べ、若い芸術家は野で交互に牧歌を吹いている2人の羊飼いの笛の音を聞いている。静かな田園風景の中で羊飼いの二重奏を聞いていると、若い芸術家にも心の平和が訪れる。無限の静寂の中に身を沈めているうちに、再び不安がよぎる。「もしも、彼女に見捨てられたら……」1人の羊飼いがまた笛を吹く。もう1人は、もはや答えない。日没。遠雷。孤愁。静寂。
[編集] 第4楽章 断頭台への行進
- 原題:Marche au supplice。若い芸術家は夢の中で恋人を殺して死刑を宣告され、断頭台へ引かれていく。その行列に伴う行進曲は、ときに暗くて荒々しいかと思うと、今度は明るく陽気になったりする。激しい発作の後で、行進曲の歩みは陰気さを加え規則的になる。死の恐怖を打ち破る愛の回想ともいうべき”固定観念”が一瞬現れ、それを断ち切るように断頭台の刃が落とされる。
[編集] 第5楽章 サバトの夜の夢
- 原題:Songe d'une nuit du Sabbat-Ronde du Sabbat(「ワルプルギスの夜の夢」と訳される事もある)。若い芸術家は魔女の饗宴に参加している幻覚に襲われる。魔女達は様々な恐ろしい化け物を集めて、若い芸術家の埋葬に立ち会っているのだ。奇怪な音、溜め息、ケタケタ笑う声、遠くの呼び声。”固定観念”の旋律が聞こえてくるが、もはやそれは気品とつつしみを失い、グロテスクな悪魔の旋律に歪められている。地獄の饗宴は最高潮になる。弔鐘が鳴り響き、地獄の裁判が始まる。悪魔たちの奏する”怒りの日”が鳴り響く。判決が下り、芸術家は地獄で永遠に苦しむことになった。芸術家は魔女や悪魔たちに取り巻かれ、こづき回されながら、地獄の奥深くへと引きずり込まれていく。悪魔たちの奏でる”怒りの日”と魔女たちの輪舞が一緒に奏され、全管弦楽の咆哮のうちに圧倒的なクライマックスを築いて曲が閉じられる。
第5楽章ではグレゴリオ聖歌『怒りの日』(Dies Irae)が主題に用いられている。また曲の終結部近くでは弓の木部で弦を叩くコル・レーニョ奏法まで用いられている。
[編集] 外部リンク
- [1] ベルリオーズ「幻想交響曲」概要
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