山田文法
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山田文法(やまだぶんぽう)は国語学者の山田孝雄による文法理論である。
理論の骨子は「文の成立の契機とはどのようなものか」と言うことができる。そこでは「統覚作用」が重要な役割を果たす。この統覚作用についてはドイツのヴントの影響が大きい。
山田は、統覚作用が一回のものが単一の思想を表すものとして「句」と呼んだ。この句には次の二種がある:
- 喚体句(未分化)
- 述体句(分析的で、主述の構成)
そして単一の句からなる文を「単文」、複数の句からなる文を「複文」または「重文」とした。
文の成立について、山田は「陳述」という用語を用いた。この「陳述」というものの性質については後に様々な考察を喚起することになるが、尾上圭介による、「山田は『陳述』をテクニカル・タームとしては用いていなかった」という見方もある。「陳述」の内実は今後の研究をも待つ必要があるかもしれないが、山田が用言と陳述の関係をどのように見ていたか、簡単に触れる。山田は文を終止させる用言は陳述を持つ、とした。この陳述は係り結びの現象と深い関係にあり、「結び」とはすなわち陳述であり、「係り」とは陳述との呼応関係であるとした。連体修飾の用言は陳述を担わないため、係りはそれを超えて文末に影響する。例えば
- 鳥が飛ぶ時
では「鳥が」は係助詞を持たないため、連体修飾句の中に影響がとどまるが、
- 鳥は飛ぶ時
では「鳥は」が係助詞「は」を持つため、連体修飾句を越えて文末の陳述に影響する。この観察は三上章、南不二男によってより広範な現象のなかに位置づけられることになるが、そのような研究の端緒として重要な観察である。
また山田の理論においては、用言と助動詞の複合体は切り離されず、複雑な用言として「複用言」と呼ばれた。これについては分類があまりにも大雑把過ぎた、という金水敏などの評言がある。
山田文法については『日本文法論』、『日本文法概論』で知ることができる。