Privacy Policy Cookie Policy Terms and Conditions 大西洋の戦い (第二次世界大戦) - Wikipedia

大西洋の戦い (第二次世界大戦)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

大西洋の戦い
Uボートに雷撃される商船
Uボートに雷撃される商船
戦争: 第二次世界大戦
年月日: 1939年9月3日 - 1945年5月7日
場所: 大西洋北海ラブラドル海
結果: 連合国の勝利
交戦勢力
イギリス海軍
カナダ海軍
ドイツ海軍
イタリア海軍
指揮官
ダドリー・パウンド
アンドリュー・カニンガム
エーリヒ・レーダー
カール・デーニッツ
戦力
損害

大西洋の戦い(たいせいよう — たたかい、英:Battle of the Atlantic, 独:Atlantikschlacht)は第二次世界大戦中に大西洋全域で行われた連合国枢軸国戦い1939年ヨーロッパでの戦争勃発と同時に始まり、100以上の輸送船団と約1,000隻の艦船が戦闘に巻き込まれた。1940年6月にイタリアが参戦し、1940年の中期から1943年の後期にかけて山場を迎えた。双方で新型兵器の開発と新しい戦術、対抗策が開拓されたため、1945年ナチス・ドイツが降伏するまでの6年の間、戦術的優位は両者を行き来し、第二次世界大戦で最も長い戦いとなった。

北アメリカや南大西洋からイギリスロシアに向かう輸送船団をドイツ海軍が阻止しようとしたが、イギリス海軍は徐々にドイツ海軍を圧倒するようになり、1941年の中期までにドイツ海軍の水上艦(戦艦ポケット戦艦巡洋艦)を封じ込め、1943年の3月から5月にかけて行われた輸送作戦においてUボートを駆逐した。

目次

[編集] 当時の戦略

植民地帝国であり、島国でもあったイギリスは、海外との貿易による輸入に依存している部分が大きかった。食料を確保しながらドイツとの戦いを続けるには100万トン以上の食料などの物資を必要とした。実質的に大西洋の戦いは、イギリスに送る物資の輸送を止める枢軸国とそれを維持しようとする連合国の輸送力戦争 (Tonnage war) であった。ドイツは1942年から、ヨーロッパ大陸への反攻を未然に防ごうと、イギリスに駐屯する連合国軍の部隊と装備の強化を妨害しようとした。

[編集] 対抗手段

エーリヒ・レーダー(1916年)
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エーリヒ・レーダー(1916年)

戦争が始まる前にドイツ海軍の潜水艦艦隊司令官カール・デーニッツは、群狼作戦(独:Wolfsrudeltaktik)の採用を主張した。それはUボートが群になって輸送船団を同時に攻撃し、護衛艦に対応させる隙を与えないというものだった。デーニッツはイギリスを再起不能にさせる十分な損害を与えるのに、航洋型のVII型Uボート300隻を必要とすると計算した。しかし、世界の海軍国は潜水艦に対する評価は低く、それはドイツ海軍でも同様だった。肝心のドイツ海軍総司令官エーリヒ・レーダーは潜水艦よりも戦艦などの主力艦に予算を回すべく行動した。

イギリス海軍の主な対潜水艦兵器は、初期のアクティブソナーであるアズディック (Asdic) と爆雷を装備した駆逐艦を使って護衛させることであった。イギリス海軍とほとんどの海軍国は1920年代から1930年代の間、対潜戦闘への意識が欠けていた。それらはヴェルサイユ条約によって無制限潜水艦作戦が禁止され、海軍本部もアズディックの開発により潜水艦に悩まされることはなくなると信じ、対潜戦闘の研究は防衛意識過剰という見方が強かった。

初期のアズディックは最大で約2.7km(3,000ヤード)の探知距離があり、船の艦底にドーム状に設置された。アズディックから発した幅の狭い音波は海中の目標に反射し、精密な目標との距離と方角を知ることができたが、時に海中の異なる温度の層によって音波の反響が狂い、海流や魚の群れで間違うこともあり、アズディックをより効果的に運用するには経験豊富なオペレーターが必要であった。また、15ノット以上で走る船の騒音で、海中からの反響はかき消されるため、アズディックは低速で航行する時にしか効果を期待できなかった。

イギリス海軍の駆逐艦エクスプレス
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イギリス海軍の駆逐艦エクスプレス

潜水艦の位置が判明すれば駆逐艦などの護衛艦が駆けつけ、目標の上を通過する際に、設定した深度で爆発するように整えた爆雷を投下する。潜水艦を破壊するには潜水艦の船体から約6m(20フィート)以内の距離で爆発しなければ、潜水艦を撃沈することはできなかったが、それらの戦術を現実的な状況でテストすることはできなかった。晴れて穏やかな天候という状況と1隻の潜水艦に対して1隻か2隻の駆逐艦を割り当てる、といった制限が設けられるなど、対潜戦闘の課題は多かった。

連合国にとってより悪いことに、Uボートはイギリス海軍やアメリカ海軍の潜水艦よりもずっと深く潜ることができ、それはイギリス海軍の爆雷の最深設定された深度よりも深かった。1930年代の世界恐慌による経済低迷と多種に渡る緊急の再軍備の要請は、対潜用の艦艇や兵器に予算を使われないことを意味した。イギリス海軍は大部分の予算とエリートを戦艦部隊につぎ込んだ。それらの結果、対潜戦闘の経験が豊かな将兵と海上輸送の護衛などが不十分なまま、第二次世界大戦へと突入した。また、イギリス空軍の沿岸軍団は海軍よりも酷い状態だった。

[編集] 前哨戦

[編集] 機雷戦

ドイツの触発式機雷
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ドイツの触発式機雷

ドイツ海軍は開戦前から連合国へ海上封鎖を試みるための戦力が不足していた。その代わり、ドイツ海軍は主力艦、仮装巡洋艦、潜水艦、航空機を使った通商破壊の戦略を当てにした。全ての使用可能な潜水艦と装甲艦(ポケット戦艦)のドイッチュラントアトミラル・グラーフ・シュペーは1939年8月までに出航した。宣戦布告がなされた時には、すでに大西洋への進出を果たし、開戦と同時に攻撃を開始した(装甲艦2隻は9月26日に通商破壊作戦を開始)。緒戦におけるUボート艦隊の規模は小さく、主力となった57隻の小型で航続距離の短いII型Uボートは、イギリス近海での任務と機雷敷設任務で活躍し、初期のドイツ軍は海上輸送の妨害のため、Uボートだけでなく、航空機、駆逐艦によるイギリスの港湾への機雷敷設を必要とした。

ドイツは早い時期に機雷敷設を初め、まず、イギリス近海と船団の航路へ触発式機雷を敷設した。それは船体が機雷に接触しないと爆発しなかったため、間もなく新型の磁気機雷を採用した。これは艦船が離れていても、爆発の衝撃波で損傷させることができた。

[編集] 襲撃と追撃

空母アーク・ロイヤルと雷撃機ソードフィッシュ(1939年)
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空母アーク・ロイヤルと雷撃機ソードフィッシュ(1939年)

開戦に際してイギリスとフランスは、ドイツに対して経済封鎖を行ったが、ドイツの産業への即効性は皆無であった。イギリス海軍も直ちに護衛艦と何隻かの輸送船を集団で航海に出す輸送船団システムを導入した。通商保護のため、徐々にその範囲を広げ、パナマボンベイシンガポールまで達した。

イギリス海軍の将校、その中でも第一海軍卿(海軍大臣)のウィンストン・チャーチルは攻勢戦略を求め、イギリス海軍はドイツ海軍のUボート捜索やアイルランド沖の進入路 (Western Approaches) を哨戒しながら潜水艦狩りを行うために、空母(航空母艦)を主力にした専用のハンティング・グループを編成した。しかし、Uボートは艦影が小さく、Uボート側も発見される以前に潜水することが常々あったため、この戦略には欠点があった。空母の艦載機は潜水艦を見つけることができたものの、この段階で有効な対潜兵器がなかったため、艦載機から掩護されることもなかった。そのため、艦載機で見つけられる潜水艦も、水上艦が駆けつける頃には立ち去っていた。

ハンティング・グループの戦略は、数日のうちに失敗を証明した。9月14日に新型空母のアーク・ロイヤルがU-39の雷撃を受けた。3発の魚雷は命中前に爆発し、アーク・ロイヤルはかろうじで沈没を免れた。逆にU-39は護衛の駆逐艦による攻撃で、第二次世界大戦で初のUボート損失となったが、戦訓を生かす間もなく、3日後の9月17日に空母カレイジャスがU-29に撃沈された。

帰還したU-47と巡洋戦艦シャルンホルスト(1939年)
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帰還したU-47と巡洋戦艦シャルンホルスト(1939年)

Uボートを捜索する護衛駆逐艦は、開戦後の最初の年においてイギリス海軍の対潜戦略の特徴となったが、Uボートは見つけにくく、護衛を失った輸送船団が大きな危険に晒されることが判明した。

カレイジャス撃沈の1か月後にはギュンター・プリーン指揮するU-47が、イギリス海軍の拠点であるスカパ・フローに侵入して戦艦ロイヤル・オークを撃沈し、カレイジャスを凌ぐドイツの成功となった。ギュンター・プリーンは瞬く間に英雄となった。

南大西洋ではアトミラル・グラーフ・シュペーの進出によってイギリス海軍は緊張状態にあった。そして、アトミラル・グラーフ・シュペーは開戦後の最初の3か月で、南大西洋とインド洋において9隻(50,000トン)の商船を沈めた。イギリス海軍とフランス海軍はアドミラル・グラフ・シュペーと北大西洋で活動していたドイッチュラントを捜索するため、巡洋戦艦3隻、空母3隻、巡洋艦15隻で、いくつかのハンティング・グループを編成した。これらのハンティング・グループはアトミラル・グラーフ・シュペーを捕捉するまで、何か月も海上を捜索していた(ラプラタ沖海戦)。

[編集] ドイツ側の不備

カール・デーニッツは開戦した最初の年で最大の成果を出すことを計画していたが、緒戦の爆発的活動は徐々に下火になった。ほとんどのUボートは9月から燃料と魚雷の補給や修理を受けるため港に戻る必要があり、活動のレベルを維持することができなかった。また、1939年と1940年の厳しい冬でバルト海の港は結氷してしまい、新型のUボートがバルト海に閉じ込められ、ドイツの攻勢を妨げた。

ノルウェーのトロンヘイム港に停泊するドイツ艦隊(1940年)
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ノルウェーのトロンヘイム港に停泊するドイツ艦隊(1940年)
詳細は北欧侵攻を参照。

1940年の春季にはアドルフ・ヒトラーデンマークノルウェー攻略計画であるヴェーザー演習作戦 (Unternehmen Weserübung) に備えて、水上艦と大半の航洋型Uボートが引き上げた。狭いフィヨルドはUボートにほとんど行動の余地を与えなかったが、イギリス側の輸送船や補給艦の集結は、Uボートにいくども攻撃の機会を与えた。しかし、ノルウェー沖での作戦行動によってUボートの主要兵装である磁気魚雷の欠陥が明らかになった。魚雷が命中前に爆発したり、命中しても爆発しなかったり、標的の下を通過してしまうなど、Uボートは無傷で走り去る船を追跡することが繰り返しあった。あるイギリスの水上艦はUボートの襲撃を20回以上も受けて沈まないことすらあった。これらの知らせはドイツ海軍の潜水艦艦隊に広まり、士気の低下をまねいた。魚雷開発を担当する監督はそれが乗組員に過失があったと主張した。この問題は1942年前期まで解決されることはなかった。

イギリスの数多くの艦船は、ドイツが敷設した機雷を掃海した港から出航し、上手く大西洋を横断して苦難を切り抜けたが、この時、代替する艦船が失われていた。ウィンストン・チャーチルは新型の機雷を無傷で回収するように優先事項として命じた。幸運にも1939年11月にドイツの航空機が投下した機雷がテムズ川の泥地に落ち、イギリス海軍はこれを回収することができた。

イギリス海軍は対抗策として、大部分の艦隊に一時的に磁気機雷の感応を無効にするに処理を施した。これらは1939年の後期に始められ、小型の軍艦と商船には1940年から始められた。大方の機雷の掃海が終了するまで、数か月に1回の割合で処理が施された。4日間に渡るダンケルクからの撤退で、機雷を無効化する艦船が多くの脱出を成功させた(ダンケルクの戦い)。

[編集] 群狼作戦の開始

[編集] 降伏の影響

フランス海軍の駆逐艦ル・ファンタスク
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フランス海軍の駆逐艦ル・ファンタスク

1940年6月以降、大西洋含む海洋で戦争の流れが大きく変わった。ドイツ軍はノルウェーの占領後、1940年5月から低地地方(ベネルクス)とフランスへの電撃的な侵攻(フランス侵攻)を初めた。1940年の時点でフランスは世界4位の海軍国であり、フランスの降伏(休戦)によってイギリスは最大の同盟国を失うこととなった。フランス海軍の艦隊は任務から離れたが、少数の艦船は自由フランス軍に加わってドイツとの戦いを続けた。後に自由フランス軍には、少数のイギリス製コルベットが加わり、規模こそ小さかったが大西洋の戦いでは重要な役割を担った。

Uボートはフランスの降伏に伴い、基地と大西洋の往復を直接できるようになった。フランスのブレスト、ロリアン、ラ・パリス、ラ・ロシェルなどの港湾は、北海に面するドイツの基地よりも大西洋に約720km(450マイル)近く、通商破壊戦に効率の良い地点へ向かうのに、イギリス諸島を迂回する必要もなくなった。また、大西洋におけるUボートの進出距離も広げ、以前よりも西に位置していた輸送船団への襲撃ができるようにもなり、より長く哨戒に時間を費やせるようになった。これらはUボート部隊の実兵力を二倍にさせた。

7月の初期から大西洋で哨戒を終えたUボートは新しいフランスの基地に戻れるようになった。後にドイツ海軍は大西洋に面するフランスの基地に、Uボート・ペンとして知られるコンクリートで強化された巨大なブンカー(防空壕)を建設し、大戦を通じていかなる爆撃にも効果を発揮した。

1940年の夏季頃にイギリス海軍は深刻な脅威に直面した。4月と5月のノルウェーでの作戦行動を支援するため、通商航路から旧式の駆逐艦を引き抜き、それらをフランスから撤退する連合国の支援のためイギリス海峡へと送られた。駆逐艦は侵攻してくるドイツ海軍の艦隊を迎え撃つ位置で待機したが、駆逐艦の対空兵装が不十分であったため、ドイツ空軍の攻撃で大きな損害を被った。ノルウェーでの戦いで7隻、ダンケルク撤退で6隻、さらにイギリス海峡と北海で10隻を失い、他にも多数の駆逐艦が損傷した。

6月には枢軸国としてイタリアが参戦し、イギリス海軍は地中海艦隊を強化する必要が出てきたため、フランス海軍の役目を継ぐことも併せ、イギリス海軍はジブラルタルで新しくH部隊を編成した。イギリスはドイツがデンマークを占領し、デンマーク領であったアイスランドフェロー諸島がドイツの手に落ちることを防ぐため、アイスランドとフェロー諸島を占領した。

通商破壊にも従事したドイツ海軍の軽巡洋艦ケルン
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通商破壊にも従事したドイツ海軍の軽巡洋艦ケルン

ドイツの西欧攻略は、Uボートがノルウェーでの作戦行動から開放され、通商破壊戦に復帰することを意味した。しかし、大西洋で哨戒するUボートが増加し始めた時、連合国側の輸送船団の護衛に使用できる護衛艦は大きく減っていた。イギリスにとって唯一の利点は、オランダなど占領された国々の大型の商船を使用できるようになったことであった。

これらの状況下で1940年5月10日に首相となったウィンストン・チャーチルは、アメリカ大統領であるフランクリン・ルーズベルト宛に最初の手紙を書き、旧式駆逐艦の貸与を要請した。それは特定のニューファンドランド島バミューダ諸島西インド諸島にあるイギリス軍の基地を99年間の賃貸を引き替えに、駆逐艦基地協定 (Destroyers for Bases Agreement) を結び、50隻の旧式駆逐艦が貸与され、アメリカのイギリスとその連邦国への最初の加担となった。貸与された駆逐艦は9月にイギリスとカナダへ引き取られたが、全ての駆逐艦の武装を改善してアズディックを装備させる必要があり、旧式駆逐艦が大西洋で活躍する前に多くの月日がかかった。

ドイツを支援するためイタリア海軍の潜水艦は、1940年8月からボルドーを基地に大西洋の通商破壊を始めた。イタリア潜水艦は地中海での作戦行動を想定して設計されていたものの、艦隊型潜水艦であったため小型のUボートよりも大西洋での活動に向いていて、イタリアの潜水艦32隻は数年間で109隻を沈めた。1940年7月から10月までに連合国の艦船220隻以上が沈み、オットー・クレッチマー指揮するU-99、ヨアヒム・シェプケ指揮するU-100、そしてギュンター・プリーンなどのようなUボートのエースが成果をあげ、フランスを基地としたUボートの活動は、劇的な成功をおさめていた。Uボートの乗組員はドイツの家庭で英雄視された。

[編集] 連絡と連携

1941年まで第一線で活動していたU-52
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1941年まで第一線で活動していたU-52

Uボートの大きな課題は広大な海上で輸送船団を捜索することであった。フォッケウルフ Fw200がフランスのボルドーとノルウェーのスタバンゲルから偵察に使われたが、主な情報源はUボートであった。

Uボートは連合国の輸送船団を単独で攻撃していたが、中央から無線通信で集団として統制され始めた。ドイツは暗号解読に努め、イギリス全商船の暗号表を解読することに成功したため、ドイツは輸送船団がいつ、どこに現れるのか予想できるようになった。

Uボートは輸送船団の航路を二分するように長い哨戒線を張って散開した。最初の哨戒線で、Uボートがソナーを使ってスクリューの音を拾うか、水平線に輸送船団が出す煙を双眼鏡で探した。ひとたびUボートが輸送船団を発見すれば、攻撃せずに本部に連絡して他のUボートを待ってから攻撃した。攻撃は主に夜間を狙った。輸送船団の護衛は1つの襲撃に直面する度に、1群あたり約半ダースのUボートを相手にしなければならなかった。オットー・クレッチマーのような大胆な指揮官の場合は、前衛の護衛に潜り込むだけでなく、輸送船団の隊列内から攻撃を仕掛けることもあった。護衛艦艇のアズディックは、水中の目標に対して役割を果たしたが、ただ1隻で夜間に浮上して攻撃してくる潜水艦に対抗する術はなかった。

1940年9月21日、ハリファックスを出発した商船42隻のHX-72船団が夜間に4隻のUボートに攻撃され、11隻が沈み、2隻が損害を負った。10月にスループ2隻とコルベット2隻に護衛されたSC-7船団が襲撃に合い、59%の商船が失われた。翌日に攻撃されたHX-79船団はSC-7船団よりも悲惨だった。駆逐艦2隻、コルベット4隻、トロール船3隻と掃海艇に護衛されたにも関わらず、ドイツ側は損失なしで4分の1の船を沈めた。この9月と10月における集団戦術の大成功は、一連の通商破壊戦に衝撃的な影響を与え、イギリスの対潜戦術が完全に不十分であることを証明した。

12月1日にはドイツのUボート7隻とイタリアの潜水艦3隻がHX-90船団を捕捉し、10隻を沈めて3隻を損傷させた。これらの輸送船団に対する集団戦術の成功によって、カール・デーニッツは群狼作戦を標準の戦術にするよう促進した。

フォッケウルフ Fw200 コンドル
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フォッケウルフ Fw200 コンドル

Uボートだけが船団の脅威ではなかった。ノルウェーでの戦闘において、早い段階で海戦を支援することを経験したドイツ空軍は、1940年から少数の航空機を大西洋の戦闘に提供した。提供された航空機は主に長距離偵察機であった。最初はフォッケウルフ Fw200が中心だったが、後に海上哨戒機としてユンカース Ju290が提供された。初期のフォッケウルフ Fw200は偵察だけでなく、爆弾を搭載して輸送船を攻撃することもあった。

[編集] 水上艦の活動

緒戦の大成功にも関わらず、Uボートは通商破壊戦の主力と評価されるには至らなかった。カール・デーニッツを除けば、両陣営におけるほとんどの海軍将校は、最終的な通商破壊の艦種は水上艦だと考えていた。

ドイツ艦隊は1940年の前期にノルウェー侵攻のため集結し、大西洋にドイツ水上艦の姿は消えたが、1940年の夏季から仮装巡洋艦などの水上艦が順を追ってドイツから出航した。

ドイツ戦艦の威力は、1940年11月5日の装甲艦アドミラル・シェーアによるHX-84船団の被害によって証明された。武装商船ジャーヴィス・ベイの抵抗によって船団の船が散開して逃走すること許したが、アドミラル・シェーアは素早く5隻を沈めて、数隻を損傷させた。シェーアを要撃するためイギリス海軍は本国艦隊を派遣し、北大西洋における船団の航行を停止した。シェーアは南大西洋方面に逃走したため、捜索は失敗し、翌月にはインド洋に姿を現した。

戦艦に護衛される連合国の輸送船団(1941年)
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戦艦に護衛される連合国の輸送船団(1941年)

他のドイツ艦船も存在感を示すように活動を始めた。巡洋艦アドミラル・ヒッパーが1940年のクリスマスにWS-5A船団を攻撃したが、護衛していた巡洋艦バーウィックに撃退された。しかし、2か月後の1941年2月12日にSLS-64船団(19隻)を襲撃し、そのうちの7隻を沈めることに成功した。1941年1月からは巡洋戦艦シャルンホルストグナイゼナウの2隻が、ドイツを出航して大西洋に進出し、協同で襲撃を行うベルリン作戦 (Unternehmen Berlin) が実施された。この2隻は捕捉できる連合国の艦船よりも強力であったため、イギリス海軍はできるだけ多くの船団に戦艦を護衛として随伴させなければならなかった。HX-106船団は旧式戦艦ラミリーズの存在で、1か月後のSL-67船団も戦艦マレーヤの存在によって攻撃を免れ、2度の襲撃から輸送船団を救うことができた。

ドイツは大胆な襲撃を計画し、5月に新型の戦艦ビスマルクと巡洋艦プリンツ・オイゲンの2隻を投入するライン演習作戦が開始された。イギリス海軍は情報部から予め報告を受けていたため、アイスランド沖で要撃した。イギリスはデンマーク海峡で生起した海戦で巡洋戦艦フッドを失ったが、H部隊の空母から発進した雷撃機の魚雷が舵に命中したおかげで本国艦隊が追いつき、戦闘の末ビスマルクは自沈した。この作戦を最後に大西洋における戦艦の襲撃は終わりを遂げた。アドルフ・ヒトラーはビスマルクの損失とノルウェーへの反攻の脅威により撤退を促され、1942年2月にシャルンホルスト、グナイゼナウ、プリンツ・オイゲンがドイツ本国へ帰還するツェルベルス作戦 (Unternehmen Cerberus) が行われた。

あまりに早い開戦で、ドイツ海軍の拡張計画(Z計画)は未完成のまま中止された。輸送船団を護衛ごと一掃する強力な戦艦の計画概要には、戦艦に付随できる艦船が欠かせず、計画は達成されなかった。機雷、Uボート、航空機などの攻撃による損失と比較して水上艦の襲撃による被害は比較的少なかったが、水上艦の襲撃は連合国の輸送船団システムを崩壊させ、イギリスの輸入量を大きく減じた。

[編集] 外部リンク


大西洋の戦い
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