地方交付税
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地方交付税(ちほうこうふぜい)は、日本国の財政制度のひとつ。 国が地方公共団体(本章においては都道府県及び市町村(特別区を含む。)をいう。)の財源の偏在を調整するもの。地方財政調整制度。
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[編集] 目的
地方交付税は、地方公共団体の運営の自主性を損なうことなくその財源の均衡化を図り、国が必要な財源の確保と交付基準の設定を行うことにより地方行政の計画的な運営を保障することによって、地方自治の本旨の実現と地方公共団体の独立性を強化することを目的としている。
[編集] 財源の調整
全国の地方公共団体は、基礎的、広域的な行政機関としてその規模、機能、能力、運営の内容について、一定以上の均質的な水準が要求されるが、これらを賄う原資となる地方公共団体の税収入は、全国的に見た場合、地域の地理的、経済的、社会的環境によって著しく偏在しているのが実態である。 そのため、国が地方交付税を交付することにより、税収入(財源)の偏在を是正し、地方公共団体間の不均衡や過不足を調整し、均衡化を図っている。
[編集] 財源の確保(マクロ)
地方交付税の原資は国税の一定割合と法定されており、このことによって地方交付税の総額が国の予算において確保されている。 また、国が策定する地方財政計画において、地方財政のマクロの財政需要が確定され、必要な財政措置(地方交付税、地方債)が国において行われる。
[編集] 財源の確保(ミクロ)
個々の地方公共団体に交付される地方交付税の額は一律の基準に基づき算出されるが、このことによって、個々の地方公共団体において必要な財源が確保されることとなる。
[編集] 原資
地方交付税の原資は、国税のうち下記のものとなっている。
上記の割合は法定のものであるので、国税の収入に基づき、地方交付税の総額はほぼ自動的に確定される。 (なお、地方交付税の原資には、国の会計間の借入金、返済金など財政技術的なものも含まれるが、本章では割愛する。)
[編集] 地方交付税の性格
[編集] 地方公共団体の固有の財源であること
目的の項で述べたとおり、地方交付税は財源の偏在を調整するための制度であり、地方公共団体の固有かつ共有の財源である。原資は国税の一定割合となっているが、これは国が地方公共団体に代わって便宜的に一括徴収している地方税であるとされている。
[編集] 地方公共団体の一般財源であること
地方交付税は国庫補助金と異なり、使途が限定されない一般財源である。
[編集] 国と地方の税収の補完をしていること
国と地方の支出の比率は2対3と言われているが、税収入の比率は逆に3対2となっている。国が地方公共団体へ地方交付税を交付することにより、この比率の補完を図っている。
[編集] 地方交付税の種類
地方交付税には下記の2種類がある。
[編集] 普通交付税
- 交付税総額の94%が普通交付税として交付される。
- 一般的な財政需要(日々の行政運営に必要な経費)に対する財源不足額に見合いの額として算定され交付される。
- 財源不足額の算定は地方交付税法の規定に基づく一定の計算方法により行われるが、基準財政需要額に対して基準財政収入額が超過しているとされた地方公共団体に対しては地方交付税は交付されない(このような地方公共団体を「不交付団体」という。例:東京都、長野県軽井沢町等)。
[編集] 特別交付税
- 交付税総額の6%が特別交付税として交付される。
- 普通交付税で措置されない個別、緊急の財政需要(地震、台風等自然災害による被害など)に対する財源不足額に見合いの額として算定され交付される。
[編集] 普通交付税の算定方法
各地方公共団体に対する普通交付税の額は、下記のとおり算定される。
普通交付税額 = 基準財政需要額 - 基準財政収入額
基準財政需要額は、標準的な財政需要額として下記のとおり算定される。
基準財政需要額 = 単位費用 × 測定単位 × 補正係数
- 単位費用とは、測定単位(例:市道1メートル)当たりの費用をいう。
- 測定単位とは、その地方公共団体における状況(例:市道総延長100キロメートル)をいう。
- 補正係数は、寒冷降雪の状況等に応じた係数(例:降雪地帯は道路に降雪対策が必要なので余計に経費が必要になる等)
- 実際の基準財政需要額の算定に当たっては、地方公共団体の個々の支出項目(道路費等)をそれぞれ算出し、それらを合計する方法を用いている。
基準財政収入額は、標準的な財政収入額として下記のとおり算定される。
基準財政収入額 = 標準的な税収入額 + 特例交付金の一定割合 + 地方譲与税
- 標準的な税収入額とは、標準税率によって算定された地方公共団体の法定普通税収等の見込額に、基準税率(都道府県、市町村共に75%)を乗じた額である。
- 上記の法定普通税収等の見込額のうち、基準財政収入額に算入されなかった額を留保財源と呼び、地方公共団体の税源涵養努力を反映させることや、基準財政需要額が実際の財政需要を完全に捕捉できないこと等を理由として設定される財源である。
- 超過課税の実施等により、標準税率によって算定された地方公共団体の法定普通税収等の見込額と、実際の税収見込額が乖離しても、当該団体の基準財政収入額に影響を与えない。
[編集] 地方交付税をめぐる議論
地方交付税については、財源調整機能など地方サイドにおいては評価するものが多い。現実に、税財源が乏しく財政基盤の脆弱な市町村においては地方交付税が歳入の半分近くを占めるものすらあり、交付税は地方財政の支えとなっている。
その反面、次の批判もある。
- 地方の国に対する甘えを助長しているのではないか。
- 国が借金までして地方団体に配分するのは行き過ぎではないか。(交付税特会)
- 地方の行政改革インセンティブを阻害しているのではないか。
- 不交付団体の数が少なすぎ、本来自立すべき地方団体にまで交付されているのではないか。
- 仕組みが複雑過ぎるのではないか。
さらに、小泉内閣において「三位一体の改革」の実施過程において削減が続いてきたが、総額抑制もさることながら、その仕組みの抜本的見直しが必要との意見も多い。
竹中総務大臣は2006年「新型交付税」構想を表明している。
[編集] 関連項目
- 財政
- 市町村の合併の特例等に関する法律 - 合併算定替など
[編集] 参考文献
- 地方交付税制度研究会(編著)『地方交付税のあらまし』(財団法人地方財務協会) 各年刊行