国鉄EF66形電気機関車
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EF66形電気機関車(EF66がたでんききかんしゃ)とは、日本国有鉄道(国鉄)及び日本貨物鉄道(JR貨物)が製造した直流電気機関車(抵抗制御方式)である。第12回(1969年)鉄道友の会ブルーリボン賞受賞。
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[編集] 概要
従来EF65形の重連で牽引していた東海道本線・山陽本線系統の高速貨物列車(コキ10000系1000t級・最高速度100km/h)を単機で牽引するために開発された。モーターは本形式用に新たに開発されたMT56を6基搭載し、定格出力はEF65形の1.5倍に相当する3900kWとなったが、定格引張力はEF65の2380Nに対し、本形式では2000Nと減少している。また、高速域からの減速時に制輪子と車輪の摩擦熱によって減衰する制動力を補うために、列車のブレーキシリンダ圧力を増加させる編成増圧装置を電気機関車で唯一、搭載している。
EF60やEF65では力行時に直並列、並列ステップの渡りに一部の主電動機を開放する短絡渡り方式を採用していたが、大出力の本形式では、牽引力の急激な変化による主電動機への影響を防ぐ目的で、EF62形、EF63形、EF64形と同様、橋絡渡り方式を採用している。また、高速域における牽引力変化に対応するため弱め界磁段が細かく設定されている。
台車も軌道への影響の軽減や高速走行時の安定性を確保するため、国鉄電気機関車では初めて可撓釣掛方式を採用した空気バネ台車DT133,DT134を装備している。
衝突事故時の安全性や高速運転時の前方注視の面から既存機よりも一段と高められた運転室に配置された運転台操作機器は、スマートな外見に相応しい当時としては斬新なもので、従来からのノッチ板を廃し電車のマスコンハンドルに似た様式になった主幹制御器ハンドルや、その主幹制御器筐体上部に配置されたダイヤル状の弱界磁ハンドル、視認性を配慮して一直線に並べられた各種メーター類を初めとする人間工学を駆使した計器板等、従来の機関車とは一線を画する機器類が使用されている。
EF66形の完成で、日本の電気機関車の出力・技術はようやくヨーロッパ並みになったと言われている。その後、1990年にEF200形が製造されるまでの間、国鉄・JR最強の機関車で、従来の国鉄電気機関車とは趣を異にする独特のスタイルで異彩を放っていた。
1966年に試作車EF90形(後の901号機、2001年廃車)が登場した。量産車は、1968年~1969年に1次車20両、1973年~1975年に2次車35両(大容量電動発電機の搭載により補機電動機の交流化が行われている)の計55両が製造された。新製以来、専ら本来の任務である高速貨物列車の牽引にあたってきたが、1985年3月の寝台特急「はやぶさ」・「富士」へのロビーカー連結に伴う牽引定数の増加により、旅客列車の牽引にも使用されるようになった。
1987年の国鉄分割民営化時には、日本貨物鉄道(JR貨物)に1~39・901の40両が承継されたほか、西日本旅客鉄道(JR西日本)にも40~55の16両が承継されている。そのうち、寝台特急の削減にともなって余剰となったJR西日本所属機の一部と老朽化及び動作不良により検査切れ後に運用離脱した車両が廃車・保留車となったが、41,44,52,54の4両がJR西日本からJR貨物に売却移管されている。
分割民営化後の1989年には、折からのコンテナ貨物輸送の好調にともなう増発及び編成延伸に対応してJR貨物による増備が行なわれた。この時の機関車増備には新型機関車を投入することも考えられたが、状況が逼迫していて新型機を設計開発し量産に至るまでの時間的猶予が取れなかったため、EF66形をリニューアルして投入することになったのである。これら増備車は100番台に区分され、各種機器類の改良の他、運転台への冷房装置の搭載や前頭部形状の変更、車体塗色の青と白をベースにしたJR貨物の新標準色への変更によりイメージを一新している。1989年に1次車8両、翌1990年からは前照灯の角型化等細部を改良した2次車25両の計33両が製造された。
JR貨物に承継された0番台機に対しては、1988年に運転台への冷房装置の搭載が試験的に実施され、1991年からは本格的に実施されている(電動発電機容量の小さい試作機と1次形は除く)。1993年からは延命・更新工事が実施され、大半が工事を終了している。施工済機は、車体塗色を100番台機に準じたものに変更している。なお、冬季は冷房装置が一時的に外されている状態で運用に入っている車両も見受けられる。
なお2003年にJR西日本から転用された54号機以降、更新工事と同時に国鉄色を思わせる新更新色に更新された物も出ている。現在、9,10,12,16,17,19,20,25,28,31,33,34,36,37,38,39,41,54号機が新更新色である。
唯一の国鉄特急色のJR貨物機である27号機は更新工事を受けたものの2006年9月12日に塗装変更されることなく出場した。但しJRロゴが単に「JR」のみの表記から「JR FREIGHT」へ変更されたり、車体腰板が撤去されメーカーズ・プレートの位置が上方に移動するなど入場前と若干の相違点がある。
近年は、試作車の901号機をはじめとしてJR貨物・JR西日本所属機双方に少数の余剰・老朽廃車が発生しているものの、JR貨物吹田機関区に配置された74両が貨物列車の、JR西日本下関地域鉄道部下関車両管理室に配置された10両が寝台特急列車の牽引にあたっている。
[編集] 保存機
[編集] 見出し
[編集] 事故の記録
- 1992年4月8日の午前0時頃、山陽本線須磨駅-塩屋駅間で55号機牽引の東京駅発長崎駅・佐世保駅行きの寝台特急「さくら」が、国道2号より転落したトレーラーと激突・脱線横転し、横転した機関車に201系電車が激突した。機関車は数分割されて現場より移動し修理されたが、現在55号機は廃車され在籍していない。
[編集] その他
スペイン国鉄の交流用電気機関車「251形」は、1970年代に日本から技術を輸出して生産されたもので、車体はEF66形に酷似したデザインとなっている。
[編集] 主要諸元
(基本番台)
- 全長:18200mm
- 全幅:2800mm
- 全高:3872mm
- 重量:100.8t
- 軸配置:Bo-Bo-Bo
- 動力伝達方式:1段歯車減速中空軸可撓吊り掛け駆動方式 歯車比:20:71(1:3.55)
- 電動機形式:MT56形 6台
- 1時間定格出力:3900kW
- 最大運転速度:110km/h
- 全界磁定格速度:72.2km/h
- 弱界磁定格速度:108km/h(40%)
- 1時間定格引張力(全界磁):19,590kgf
[編集] 関連商品
国鉄EF66形電気機関車はNゲージ鉄道模型として関水金属(KATO)、TOMIX(トミーテック)からそれぞれ発売されている。またプラレールでも製品化されている。
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- ED50-ED51-ED52 ED53 ED54 ED55(計画のみ) ED56 ED57
- EF10 EF11 EF12 EF13 EF14 EF15 EF16 EF18 EF50 EF51 EF52 EF53 EF54 EF55 EF56 EF57 EF58 EF59 EH10
- アプト式機関車 - EC40 ED40 ED41 ED42
- 私鉄買収機関車 - ED20 ED21 ED22 ED25 ED26 ED27 ED28 ED29 ED30/ED25II ED31 ED32 ED33/ED26II ED34/ED27II ED35/ED28II
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