双眼鏡
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
双眼鏡(そうがんきょう)とは、望遠鏡の一種で、二つの鏡胴 (対物レンズと接眼レンズを連結して保持し、レンズ以外からの光線の入射を防ぐ筒) を平行にならべ遠方のものを両眼で拡大して見る光学器械である。
目次 |
[編集] 双眼鏡の種類
双眼鏡にはその構造によっていくつかの種類に分かれる。
[編集] レンズ・プリズムの構成
- ガリレオ式
- ポロプリズム式
- 対物・対眼レンズとも凸レンズを使用する。そのままだと倒立像になるので2個または3個の直角プリズムで反転させて正立像を得る。もっともよく使われている。ダハプリズム式より重く嵩張るが、対物レンズが大きい分、明るい。スタジアムで売られるような安価な製品には、プリズムを一対の鏡で代用したものがある。
- ダハプリズム式
- 対物・対眼レンズとも凸レンズを使用する。像を2つのルーフ(屋根型)プリズムで反転させるものである。プリズムを山型にして、左右をそれぞれの面で反射させる。プリズム部分が嵩張らないので全体がコンパクトに仕上がるが、大口径の対物レンズは使えないことと、比較的高価になるという欠点がある。
[編集] その他
- 防水双眼鏡
- 防振双眼鏡(手ぶれ補正機能つき)
[編集] 双眼鏡の性能
対物レンズ有効径とは、対物レンズの径のうち固定リングなどに遮られない径をいい、双眼鏡の性能を決定する最も重要な要素である。倍率と対物レンズ有効径とは、日本製の双眼鏡では右側の鏡胴のプリズム部分に7x35などと表示されていることが多い。 対物レンズ有効径を倍率で割ると射出ひとみ径が得られる。射出ひとみとは双眼鏡を眼から離し対物レンズを明るい方に向けたとき接眼レンズに写る明るい円をいう。射出瞳径は双眼鏡の明るさの指標となる。人間のひとみ径は昼間の明るい場所で2mmほど、暗夜で7-8mmとなるので夜間用ないし天体観測用の双眼鏡には射出ひとみ径が7mm程度のものが要求される。通常の野外用のものなら5mm前後が普通。視野の広さもまた重要で、視野角あるいは1,000m視界(1,000m先の視界の幅)が単位として使われる。視野が広いと観察の対象を見つけだすのが容易である。
雑誌や新聞の広告にあるような、素人向けに高倍率を特にアピールした双眼鏡では、ひとみ径が小さく視野角が狭く、さらに手ぶれも大きくなるので実際にはとても使いにくい。
[編集] 使い方
[編集] 眼幅の調整
玩具や防振型、固定架台上の大型双眼鏡を除き、ほとんどの双眼鏡は中心軸(左右の鏡胴の中間にあり、双方を連結しているピン)のところで蝶番のように全体を折り曲げることで眼幅(左右瞳孔の間隔)に接眼レンズの光軸の間隔を合わせるようになっている。一度正しく調整した後は中心軸の接眼側にある目盛によって眼幅を知り、次回からすぐに合わせることができる。
[編集] 焦点距離の調整(ピント合わせ)
多くの双眼鏡ではセンターフォーカス(CF)方式といい、中心軸にあるリングで両方の鏡胴の焦点を同時に変更できるようになっているが、防水型では左右両方に調整リングがあり、それぞれ独立に調整するようになっている(独立調整(IF)方式)。動物とくに野鳥の観察には、すばやく焦点距離の調節が出来るCF方式が便利だが、防水式の主な用途である海上及び軍用では焦点の素早い調節はあまり必要でないため、左右独立式でも大きな不便はない。同様に天体観測用の大型双眼鏡もIF方式が多い。
[編集] 視度の調整
左右の眼の視力に差がある場合、両目ともにピントの合った像を得るためには左右の鏡胴の焦点距離に差を付ける必要がある。中央の調整リングで左右の焦点距離を同時に調整するタイプでは、片方の接眼レンズの近くにあるダイヤルで視度の調整を行う。一度調節すれば以後行う必要はないが、眼幅と同様、目盛を憶えておけばよい。左右独立に調整するタイプではもちろん毎回どちらかの調整リングで行う。
[編集] 持ち方
陸上では両手の指を全て(親指は下に)鏡胴にまわし、軽く掴むように持つのが普通だが、漁船など小型船舶では船の揺れに抗して対象を視野の中央に保つため、指をほとんどあるいは完全に開いて、両手の指の付け根あたりで鏡胴を左右から挟んで保持する方法も場合によっては使われる。
[編集] 用途
- 風景観察
- 観劇・スポーツ観戦
- 天体観測
- 動物観察(野鳥観察など)
- 船舶における安全のための監視
- 漁船における魚群等の捜索
- 軍事用
など