信頼性設計
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信頼性設計(しんらいせいせっけい)とは、工学分野において、システム・装置または部品が使用開始から寿命を迎えるまでの期間を通して、予め期待した機能を果たせるように、すなわち故障や性能の劣化が発生しないように考慮して設計する手法のこと。
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[編集] フェイルセーフ設計
フェイルセーフ設計(Fail safe design)とは、機械は必ず故障が発生するということを念頭に置き、故障が発生した場合にも、常に安全側にその機能が作用する設計思想。
機械であれば、「壊れたまま動作することで、周囲に損害や危険を及ぼすことの無い設計」をいう。(例えば「壊れやすい部分を設けておき、高い負荷がかかった場合に意図的にその部分が壊れるようにしておくことで、全体が動作しなくなる」など) 電気のヒューズは電気機械のショートなどによる過電流が流れると焼き切れ、機器の過熱による他の部品の故障や、使用者への危険を回避することができる。
[編集] フールプルーフ設計
フールプルーフ(fool-proof)は日本語では馬鹿除けまたは馬鹿避けとも言い、なんら知識をもたない者が誤った用法で事故に至らないようにする仕組みと知識を持たずとも簡単に操作できるようにした相反する仕組み・設計・思想を指す。同じ意味としてフールセーフティ (Foolish Safty)を用いる場合もある。
乳幼児などは目に付くものを手に取り、口に入れることが多く、医薬品などの蓋を開けて中身を飲み込み重篤な事故に至ることがある。医薬品を製造する企業はこれら事故への方策として、蓋を回すだけでは開かない仕組みとして特定のボタンを押しながら回さないと開かない仕組みを考案して対処した。
人間工学の観点からはパニック時に予期せぬ行動をとることを観察して、万一の場合にも重大な事故が起きないように複数手順を経なければ実行できない仕組みや検証を行なった。この過程からフィードバックという事後処理への対処方法が生まれ、その後、予期できることはあらかじめ対処するフィードフォワードの考え方が生まれた。
[編集] 冗長性設計
(Redundancy design)機械は普通、多くの部品から成り立っており、そのうちのひとつが壊れても機械全体が連鎖的に停止してしまう場合がある。このようなことが起きないためには部品が故障しても他の部品により機能を代替できるようにするなど、故障を予め考慮した構成の機械とする。このように故障時の代替機能を果たす機能を「冗長系」という。冗長系を有するような設計、すなわち冗長性設計を行い、信頼度を高めることができる。
特に故障により人命や財産が失われたり、企業における営業活動が大きな打撃を受けるよう機器・システムの場合、冗長性設計が必須である。例えば、中型以上の航空機ではエンジンを複数備え、1基が故障しても残ったエンジンで飛行が継続できるのが普通である。電化された鉄道では変電所を複数もち、どこかの変電所が故障しても、他から電力を供給することによって一定の運転を続けることができる。また9.11テロの時、NYの企業の多くは「バックアップ・オフィス」で仕事を継続した。