ワルシャワ蜂起
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ワルシャワ蜂起(Warsaw Uprising)とは、第二次世界大戦中ナチス・ドイツ占領下のワルシャワで起こった武装蜂起である。
1944年、ソビエト軍によるバグラチオン作戦の成功によりナチス・ドイツは敗走を重ねた。解放地域がワルシャワ付近に及びそれに呼応するような形で8月1日、ワルシャワで武装蜂起が行われた。しかしながらソビエト軍はその進軍を止め、イギリスの度重なる要請にも関わらず蜂起を援助する姿勢を見せず、イギリスによる支援も妨害した。その妨害が除かれた時はすでに手遅れな状態であり、ドイツ軍による懲罰的攻撃によりワルシャワは徹底した破壊にさらされ、レジスタンス・市民約22万人が虐殺され、10月3日鎮圧された。死亡者数は18万人から25万人の間であると推定され、鎮圧後約70万人の住民は町から追放された。
生き残った少数のレジスタンスは地下水道に逃げ込み、ソ連軍進駐後は裏切ったソ連を攻撃目標とするようになり、共産政府樹立後も、要人暗殺未遂などしばらく混乱が続いた。
[編集] 背景
ワルシャワ蜂起を指導したのは亡命ポーランド政府である。ポーランドには第二次世界大戦勃発時にパリそしてその後にロンドンに亡命した亡命ポーランド政府が存在した。亡命ポーランド政府にとってソ連は自国をドイツとともに侵略した国家であったが独ソ戦開始後は亡命ポーランド政府はソ連に接近する。さまざまな問題により決してよい状態でなかった両政府の関係はカチンの森事件の発覚により決定的に悪化することとなった。
東欧を解放してきたソ連は亡命ポーランド政府とは別にポーランド新政府という親ソ的なポーランドによるポーランド支配を計画しており、西側諸国の亡命政府指導による祖国解放は受け入れられるものではなかった。
この状況に似たものとしてはベトナム戦争におけるテト攻勢にも見られる。
[編集] ワルシャワ蜂起を題材とした作品
- 「世代」・「地下水道」(1957年、ポーランド映画):反独レジスタンスを描いたアンジェイ・ワイダ監督の三部作の第一作・第二作。「地下水道」はカンヌ映画祭審査員特別賞を受賞している。
- 「灰とダイヤモンド」(1958年、ポーランド映画):同名の長編小説を、作者の協力を得て映画化したもので、反ソ化したレジスタンスの生き様を描いたワイダ監督の三部作の第三作。平凡に生きようとするが生きられず、共産党要人暗殺を命じられ、最後はゴミ捨て場で死ぬ様は、共産政権下でありながら、かなり中立的な視点で描かれている。ヴェネチア映画祭批評家連盟賞を受賞しており、映画史上でも評価が高い。
- 「鷲の指輪」(1992年、ポーランド映画):「灰とダイヤモンド」により共産政府の不興を買っていたワイダ監督が、共産政権崩壊後再びワルシャワ蜂起を問い直した映画。
- 「戦場のピアニスト」(2002年、フランス・ドイツ・ポーランド・イギリス映画):ワルシャワ蜂起が映画のクライマックスになっている。
[編集] 関連項目