ローズ・トゥ・ロード
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ローズ・トゥ・ロードは日本のテーブルトークRPGである。 デザイナーは門倉直人で、1984年、ツクダホビーから発売された。
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[編集] 概要
ジャンルとしては異世界ファンタジーRPGであり、背景世界ユルセルームは指輪物語の影響を受けている。1984年版では「四王国時代」を背景としている。
後に出版元を遊演体に変え、舞台となる時代とともに版を変えた。
「薄暗がりの時代」の「ビヨンド・ローズ・トゥ・ロード」(1989年)、「大旗戦争(たいきせんそう)」前後の時代を舞台とする「ファー・ローズ・トゥ・ロード」(1993年)を経て、2002年7月5日発行元をエンターブレインに変え、再び「ローズ・トゥ・ロード」の名前でリニューアルしている。
[編集] 舞台
『ローズ・トゥ・ロード』は、「舞台となる背景世界”ユルセルーム”の幻想的な雰囲気を、いかに遊び手に感じさせるか」ということを主題においてデザインされているゲームである。
そのため、ユルセルームという世界はファンにとってはゲームシステム以上に重要な要素となっている。
- 魔法世界ユルセルーム
- 俗にいう「剣と魔法の冒険ファンタジー世界」ではあるが、非常に幻想性を強調しており、魔法は体系的な技術ではなく、夢想の中に揺らめく神秘として存在する。人は誰でも夢の中で魔法の力を得ることができ、知識ではなく想いを持って魔法を使うことができる。
- 魔法の業も火の玉を出すような戦闘志向なものだけでなく『洗濯物を綺麗にする魔法』や『シチューをおいしくする魔法』など、およそ実際のゲームでは使えないような魔法が、ユルセルームの幻想性を表すために重要な要素としてゲームのデータに大量に組み込まれている。
- そして、ユルセルームの魔法の最大の神秘は、「何かを成したい」という強い想いをもって「自分だけの魔法」を誰でも作り出すことができることである。魔法の自作というのは、マジックイメージというルールでゲーム的にも可能になっており、ローズ・トゥ・ロードの大きな特徴になっている。
- 王の道を往く
- ユルセルームでは、指輪物語のエルフのような不死の妖精族たちが、俗世を超越した貴族的存在として権威として君臨している。また、ドワーフをモチーフにした小人族などもおり人間たちは新しい種族とされている。
- 古代のユルセルームでは国はたった一つしかなく、あらゆる種族がその偉大な王国「統一王国」の下で平和に暮らしていた。しかし、戦乱により統一王国は瓦解してしまい、今では多くの国に分裂してしまっている。統一王国の復興はこの世界の人類全ての夢であり、ユルセルームの大きなテーマとなっている。(これは中世ヨーロッパにおけるローマ帝国への幻想のオマージュでもある)
- ゲームのタイトルである『ローズ・トゥ・ロード』(Roads to Lord)は「王の道」を意味し、ユルセルーム大陸を東西に貫くシルクロードのようなものである。統一王国時代は誰もが当たり前に通れたこの道も、今は国ごとに分断されている。「王の道」は昔日への夢想と現在への悲哀を表す、ユルセルームを象徴する存在になっている。
[編集] ゲームシステム上の特徴
ローズ・トゥ・ロードは、下記のように何回もゲームデザインされ、そのたびにゲームシステムは変わっているが、初代から受け継がれている共通のコンセプトがある。
[編集] キャラクターメイク
キャラクターの生まれ(種族や出身階級)は、D100ダイスによりランダムに決定される(これは『ルーンクエスト』などの影響を受けたもので、本作の独創ではないものの、国産TRPGの系譜のなかでは他に例はない)。 一方、いわゆる固定された「クラス」の概念はなく、「戦士」「魔法使い」といった区分はない。条件にあえば誰でも剣を使うことができ、誰でも魔法を使うことができる。ただし、出生による有利・不利はある。 妖精(エルフ)、小人(ハーフリング、ドワーフ)などのほかに「シェイプチェンジャー(獣に変身する種族)」が標準的な種族であるのもTRPGにおいては珍しく、『指輪物語』の影響を感じさせる。
[編集] コミュニケーション
初代には「コミュニケーション表」が搭載され、簡単な表ながら、コミュニケーションの結果「戦闘」になったり「恋」が芽生えるようになっていた(いっぽう、結果は「Cr(魅力)」の数値に左右されるため、キャラクターがCrを偏重する風潮も生んだ)。 以後シリーズを通して「キャラクターの外見・魅力」と「NPCとのコミュニケーション」は、重要な要素となっている。
[編集] 魔法
前述のように、本作では「魔法」が重要な要素である。全作を通して魔法は「カード」によって表現され、システムはタイトルごと異なるものの、「めくるまで、術者にも正体がわからない」という共通コンセプトを持つ。
[編集] シナリオ「ミレアの黒塔」
初代には、ゲームブック形式のダンジョン探索シナリオ「魔女の洞窟」と、それに連結した「ミレア島の黒塔」というシナリオが掲載された。シリーズを通じて微妙に内容を変えながら毎回このシナリオが掲載され「定番シナリオ」となっているのも特徴である。Bローズには門倉直人が書き下ろしたその続編にして完結編「アウル・アエンダ」も掲載された。Fローズには「魔女の洞窟」の後日談的なカード・ランダムダンジョン形式のシナリオ「精霊の洞窟」が掲載されている。
[編集] ローズ・トゥ・ロード(初代)
ツクダホビーより、1984年発売。ボックス型。ボックスアート加藤直之。精密戦闘に使用するヘクス(六角形のマス)を使用したマップや紙製のモンスター駒、小型のメタルフィギュアなども含んだセット。 キャラクターは成長のなかで様々な「称号」を得ることができ、最高位の称号は「ロード」だった。
統一王国瓦解後、大国同士がバランスよく各地を統治している「四王国時代」を舞台とする。ローズ・トゥ・ロードのシリーズではもっともオーソドックスな「剣と魔法の冒険」ができる時代でもある。
[編集] サプリメント
- ナーハン&ラムザス編
- (ツクダホビーから出版):シナリオ&追加データ集
- ストラディウム編
- (ツクダホビーから出版):シナリオ、追加データ、アクセサリーなど。
[編集] ビヨンド・ローズ・トゥ・ロード
通称「Bローズ」。遊演体より、1989年発売。ボックス型。ボックスアート加藤直之。初代ローズの舞台から約200年後の「薄暗がりの時代」を背景とする。世界規模の呪いがかけられ、世界の存在そのものがあやふやになっているという非常に危険な時代であり、ローズ・トゥ・ロードのシリーズではもっとも幻想性が強い。
多数の独特のシステムが搭載された幻想性の高いゲームシステムと世界観は、高い評価を得ている。いっぽう運用が難しいシステムでもあり、オーソドックスな冒険を求める初代ローズのファン層からは批判の声もあった。
より強調された幻想性を表すため、魔法が「マジックイメージ」の組み合わせで自由に生成できるなど、意欲的なシステムを採用していた。大いなる種族(いわゆる神や悪魔)の設定を有坂純が担当しているが、PCが到底かなわないような存在が多数登場するのも特徴である(有坂が日本語訳を担当した『クトゥルフの呼び声』の影響も感じられる)。雑誌展開などは、小泉雅也、水原静などが中心に行なった。
本作のルールブックは通常の製本されたものではなく1ページごとにバラバラの状態のものをバインダーに閉じることで、図表をコピーしたり必要なページのみを抜いてプレイヤーに見せるといった使い方が出来るようになっていた。なお、初版ではバインダーの止め具がリングではなく棒状になっていたため、ページを開こうとしただけで破れる、勝手にバインダーの止め具が外れる、などといった問題がしばしば発生して不評であった。そのため、再版時にはリング状の止め具に変更された。
[編集] サプリメント
- 変異混成術師の夜
- (遊演体より出版):未踏の海域である「南西諸島」を舞台にしたワールドガイドと、様々な異形の魔法使いを生み出す(基本セットとはまた異なる)ルールシステムが含まれる
[編集] ファー・ローズ・トゥ・ロード
通称「Fローズ」。遊演体より、1993年発売。ボックス型。ボックスアート熊倉宏。Bローズから約100年後の「大旗戦争」前後の時代を背景とする。統一王国復興を目指して大陸規模の戦争が起こる時代であり、一種の戦記ロマンとしての背景ももつゲームである。
初代「ローズ・トゥ・ロード」のユーザー世代が制作側となった作品であり、門倉直人原作のもと、司史生、高橋まこと、伊豆平成、坂東いるか、田中桂などが制作スタッフとなった。ゲームシステムデザインは藤浪智之が担当している。
「経験表」や「散策表」といったフレイバーテキスト付の各種イベント表、「感情」が大きな要素となったシステム、日常生活面が充実した魔法や装備品といったデータは、「ローズ・トゥ・ロード」に新しい側面を見せ新たなファンを獲得した。サプリメントがもっとも充実したタイトルでもあり、追加ルールを使用することにより、アーティクル(意識を持つアイテム)や「大いなる存在」(幽魔族)、龍や小鬼などの異種族をPCにすることもできた。
いっぽう、ランダム性の強いシステム(アクシテンド表の類の影響が大きい)、数値化されて管理される「感情」、あるいはユーザー世代制作陣による「お遊び」(初代で誤植の産物だった「すべて転倒」を公式のルールに採用する等)は、ユルセルームの幻想性を好むファンからは批判の声もあった。
[編集] サプリメント
(すべて遊演体から出版)
- スィーラの芝居小屋
- マスタースクリーン、自作用カード、シートなどのアクセサリ
- 剣と魔法
- 追加魔法ルール、武術ルール(専用カードが含まれたブックスタイル)
- 月歌物語
- 都市ガイド&キャンペーンシナリオ集
- ユルセルーム博物誌
- 追加クリーチャー
- 大旗戦争
- 大陸規模の戦記キャンペーンを扱うためのデータ集。コンピュータゲーム『忘れえぬ炎』と連動している。
[編集] ローズ・トゥ・ロード(新版)
通称「ローズR」。エンターブレインより、2002年発売。カバーアート加藤直之。カード付ブックスタイルとなり、初代ローズのリメイクの意味合いが強い。背景となる時代も再び「四王国時代」となった。サプリメントや雑誌展開は小林正親が中心となり、新たなファン層を獲得した。 本タイトルは基本システムこそ初代のリメイク的なシンプルな内容であるが、サプリメントやリプレイにおいて、BローズやFローズで描かれていた設定・要素を再び取り入れ、シリーズ集大成的な内容を試みている。
[編集] サプリメント
- ザ・ストレンジソング
- (アークライトから出版):リプレイ&追加データ
- タトゥーノ~“風に絵を書く”かりそめの魔法~
- (アークライトから出版):専用カードを同梱した追加魔法ルール
- ゲームマスター・スクリーン~忘却の呪縛、近づく頃~
- (アークライトから出版)
[編集] 関連作品
[編集] コンピューターゲーム
- 忘れえぬ炎
- (遊演体より。PC-9801用):人間族の国家ストラデュウムへの魔国デュラ軍の侵攻「大旗戦争」を背景としたコンピュータRPG。大戦争を背景に少数のキャラクターのパーティが伝説の「大旗」を探索するストーリーで、指輪物語を思わせる。ボックスアートは加藤直之。グラフィックは山田章博。
[編集] ゲームブック
- 失われた体
- 闇と炎の狩人
- 1987年にハヤカワ文庫から出版されたゲームブック。著者は門倉直人。時期的には、初代ローズとBローズの間に制作されたもので、「マジックイメージを組み合わせる魔法」などがシステム化されている。
[編集] 小説
- ホシホタルの夜祭り
- 1990年、RPGマガジンに掲載された門倉直人による短編小説。商業発表された唯一の門倉直人によるローズ・トゥ・ロードの公式の小説である。単行本未収録。現在は、作者の許可を得て、有志のファンがネット上に公開している。
[編集] リプレイ
- ビヨンド・ローズ・トゥ・ロードでわかる実践RPG入門
- 1991年、BNN出版より出版された。菊池たけし、鈴木猛(イラスト含む)、門倉直人による共著。Bローズを用いた解説書で、コミカルかつヒロイックなリプレイと解説が主体。Bローズのルールリファレンスと、使いやすくリデザインされたキャラクターシートが含まれた。幻想性の高いBローズを「きくたけ流」に描いた本書は、理解が難しかったシステムを分かりやすく解説したことで高い評価を得たいっぽう、幻想性を重んじるBローズファンから批判の声もあった。
- 精霊の大地―ビヨンド・ローズ・トゥ・ロードでわかる実践RPG入門 2
- 上記「ビヨンド・ローズ・トゥ・ロードでわかる実践RPG入門」の続編。菊池たけしによる新作リプレイとそのリプレイに使われたシナリオが付属している。この新作リプレイはプレイヤーのミスによる「バッドエンド」になっていて、数ある商業リプレイでもここまで後味の悪いものはほとんどない。リプレイに使われていたシナリオも付属しており、失敗例としてのリプレイとの比較によって逆説的にとても有用なガイダンス記事になっている。
- また、『タクテクス』誌に掲載された、門倉直人がGMを担当したリプレイ「水晶と犬」が再録されている(文章は菊池たけし)。このリプレイは短編だが、後の菊池たけしの作品に幾度となくパロディ(「危険が近づくと寝る犬」等)に使われている。
- ソングシーカー~失われた歌を求めて~
- 著:小林正親、監修:門倉直人。イラストは相沢美良。Role&Rollに連載されたローズRのリプレイ連載。2006年、新紀元社より単行本化された。本リプレイは、TRPG初心である反面、俳優や声優の卵であるという人物たちがプレイヤーとなっているのが特徴で、模索しながら「参加者全員が物語を創っていく」TRPGの一面が強調されている。余談だがプレイヤーの一人は鈴木銀一郎で、それまで本格的なTRPGプレイの体験のなかった鈴木がそれを深く理解し、後に自らTRPGをデザインするきっかけにもなった。
[編集] 読者参加企画
- 水晶の王者
- さまよえる白銀宮
- 1989~90年にわたって「マル勝PCエンジン」に連載された、小泉雅也による、読者参加企画。イラストは中村博文(当時新人だった中村が遊演体と接点を持ち、後に蓬莱学園のヴィジュアルを手がけるきっかけとなった)。
[編集] その他
ローズトゥロード(Roads to Lord)の略称は「RtoL」が用いられることが多いが、これは「指輪物語」(the Lord of the Rings)の略称「LotR」を逆に並べたものと一致する。ただし門倉直人が意図した命名か偶然の一致であるかは不明である。
[編集] 外部リンク
- Roads to Lord Plaza:ファンサイト。「ホシホタルの夜祭り」が著者の許可を得て公開されている。