ルパン三世 ルパンVS複製人間
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『ルパン三世 ルパンVS複製人間』は、漫画家モンキー・パンチ原作の人気アニメ『ルパン三世』の劇場映画第一作である。
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[編集] 概要
当時、日本テレビ系全国ネットで放送されていたTV第2シリーズの高視聴率を受けて製作された本作品は、1978年12月16日に封切られ、賢者の石をめぐって、ルパンと、自らを神と名のる謎の人物マモーとの息をつく間もない争奪戦を描く。宣伝で謳われた「世界初の長編アニメビジョン」とは、ビスタサイズを想定して作画され、通常より大判のセルを用いて制作されたことを指す。
本作は「初期の頃の大人向けのルパンが見たいという声にお応えします」という制作趣旨が明示されており、当時放送中だったTV第2シリーズの低年齢層向け作風とは異なりTV第1シリーズ初期の作風に近づけるという意向が明言されていた。東宝宣伝部によると本作は007シリーズのアニメ版という位置付けとし、ポスターと本編にヌードや性的表現を登場させるなど、ターゲットとする観客層は大人を想定していた。地方での同時上映作品はアガサ・クリスティ原作、ジョン・ギラーミン監督の「ナイル殺人事件」という大人向けの作品である。ところが公開してみると、事前の予想とは異なり実際の観客層はTV第2シリーズを視聴中の子どもが中心だった。そのため、10億円の配給収入を上げて次回作の製作が決定すると、ターゲットとする観客層は15~16歳中心に改められた。
TV第1シリーズのキャラクターデザイナーである大塚康生は、少し先行して製作されていた未来少年コナンの影響で参加が遅れたため、前作ともTV第2シリーズとも異なるキャラクターデザインがなされた。そして服装は、ジャケットこそTV第2シリーズと同様に赤いものの、その下は違った。青いシャツにパンツは白、ネクタイは淡いピンクの第2シリーズとは異なり、上下ともに第1シリーズと同じ黒、そしてネクタイは黄色だった。ちなみに、(出崎統が参加している)初期のTVスペシャルのキャラクターデザインは本作をイメージした物であり、馬面ルパンと呼ばれている。
声の出演ではマモーに後に水戸黄門となる俳優の西村晃、エジプト警察署長に演歌歌手の三波春夫、大統領として漫画家の赤塚不二夫、書記長として同じく劇画原作者の梶原一騎が出演するなど豪華な顔ぶれが揃っている。特に梶原一騎は製作を担当した東京ムービー新社社長藤岡豊と「巨人の星」以来親交があり、共同で三協映画を設立するほどの仲だった。三波春夫は本作品のエンディングテーマである「ルパン音頭」を歌っており、これも藤岡豊の指示で挿入されたものである。
なお、この作品の劇場公開時の正式なタイトルは「ルパン三世」で、画面のタイトルクレジットは現在でも「ルパン三世」のみである。「ルパンVS複製人間」というサブタイトルがついたのは家庭用ビデオソフト(当時はVHSとともにベータマックス版も発売)として発売された際、内容を明確化するためにつけられたものである。
この作品公開当時の1978年の日本はSFブームで、本作もクローン技術をテーマにしたSF作品となっている。本作が製作された1978年にはSFブーム以外にもイギリスでは「試験管ベビー」と呼ばれた世界初の体外受精児が誕生して、生化学への関心が向上していた時代でもあった。同じくクローン人間をテーマとした小説『ブラジルから来た少年』が映画化されたのも1978年であり、アメリカで大富豪が自分のクローン人間を誕生させていたという内容のデービット・ロービックの『複製人間の誕生(In His Image:the Cloning of a Man)』がノンフィクションという触れこみで刊行され、日本でも翻訳されてマスコミで真偽が話題になったのも同じく1978年と、クローンは当時の旬のテーマであった。
公開当時のパンフレットには、冒頭でルパンの刑死によって目的を達成した銭形は退職し、山寺の寺男になっているというあらすじが書かれており、実際にこのくだりは制作されたが、最終的にカットされた(序盤でルパンの検死報告が流れるシーンの背景が仏像なのはこの山寺のシーンに直結していたための名残である)。なお劇場用予告編にはカットされた山寺のシーンが一部使用されている。
なお脚本は大和屋竺、吉川惣司の連名であるが、実際は吉川が一人の執筆である。打ち合わせは二人で重ねていたものの、プロデューサーへの提出用に吉川一人で書き上げたものが初稿。その後、大和屋に直しを打診したがそのままでいいと了解を得たため。吉川の大和屋への敬意から連名クレジットとなった。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] あらすじ
ルパンが処刑された!?そんな噂がルパンの宿敵である銭形警部の耳に入る。真相を確かめるべく銭形はルパンの棺の中身を確認するため、棺の埋葬されている古城へと出向く。しかし、棺のふたを開けると、中から姿を現したのは死んだはずのルパン三世その人であった。追いかける銭形を尻目にルパンはまんまと逃亡する。
その後ルパンは、不二子の依頼でエジプトにあるファラオの眠るピラミッドに「賢者の石」を盗むべく潜入し、見事に盗み出すことに成功する。
だが、不二子はその石を自らを神と名のる謎の人物マモーに手渡してしまった。その石に不老不死の力が宿っていることを知ったルパンは、マモーの追跡をかわしながら逃げていたが、そこへ再び不二子が現れる。ルパンに愛想をつかした次元と五ェ門はルパンのもとを去り、ルパンは不二子に裏切られて万事休す。マモーの手中に落ちてしまう。
カリブ海にあるマモーの住む孤島に連れ込まれたルパンがそこで見たものは、ナポレオンやヒトラーなどの歴史的偉人達であった。しかも彼らは今も生きているのだ。実はマモーは1万年も前から自己を複製し続けてきた複製人間(クローン)で、ルパンも自分のコレクションに加えようとしているのである。ルパン危うし・・・と思ったその時、次元と五ェ門が建物内に乱入。次元がマモーを射殺し、ルパン一味はボートで逃走する。
コロンビアの田舎町にあるホテルへやってきたルパン、次元、不二子の3人であったが、そこへなんと死んだはずのマモーが現れ、不二子を連れ去ってゆく。「神様ならインチキなしの奇跡を起こしてみろ!この場で天変地異でも見せてもらおうじゃねえか!」と叫ぶルパンに対し、マモーは「よかろう、神の怒りを知るがいい!」という意味深な一言を残して空の彼方へ飛び去ってしまった。
まもなく、その街を大地震が襲い、次元までがマモーを本物の神でないかと言い始める。だがルパンは、街のはずれにとてつもない大穴が開いているのを発見。そこがマモーの所有する地下原子力発電所の跡地で、それを爆破することで地震を誘発させたということを知る。ルパンは単身でマモーの本拠地に乗り込み、ついにマモーとの決闘を迎える。
ルパンVSマモー、果たして世界史をぬりかえるのはどっちだ!?
[編集] スタッフ
- 原作:モンキー・パンチ(双葉社刊)
- 監督:吉川惣司
- 製作:藤岡豊
- 脚本:大和屋竺 吉川惣司
- 音楽:大野雄二
- 監修:大塚康生
- 作画監督:椛島義夫 青木悠三
- レイアウト:芝山努
- 美術:阿部行夫
- 撮影:黒木敬七
- 録音:加藤敏
- 編集:相原義彰
- 製作補:郷田三朗 片山哲生
- 選曲:鈴木清司
- 挿入歌:「ルパン音頭」(テイチク・レコード)
- 作詞:モンキー・パンチ
- 作曲/編曲:大野雄二
- 唄:三波春夫
- オリジナルサウンドトラック:「ルパン三世 ルパンVS複製人間」
- 連載誌:週刊Weekly漫画アクション・パワァ・コミックス
- 配給:東宝株式会社
- 製作:東京ムービー新社
[編集] 声の出演
- ルパン三世:山田康雄
- 次元大介:小林清志
- 峰不二子:増山江威子
- 石川五ェ門:井上真樹夫
- 銭形警部:納谷悟朗
- マモー:西村晃
- 警視総監:富田耕生
- スタッキー大統領特別補佐官:大平透
- ゴードン:柴田秀勝
- フリンチ:飯塚昭三
- 科学者:村越伊知郎
- 職員:嶋俊介
- 警官:宮下勝
[編集] 声の特別出演
[編集] 参考資料
- DVD「ルパン三世 ルパンVS複製人間」の冊子