ライブドア・ショック
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ライブドア・ショックとは、2006年1月16日、証券取引法違反容疑で、東京地検特捜部がライブドア本社などに強制捜査を行い、これを受け翌1月17日から始まった「株式市場の暴落」のこと。
前年12月に起こった「ジェイコム株大量発注ミス事件」に続く、株取引における大事件として、各種メディアが大々的に報道し、一般人にも株取引を浸透させる一因にもなった事件である。
- 注意事項
- なお、この用語は一般的に、ライブドア関連銘柄の暴落だけを指すのではなく、「株式市場全体の急落」を指すことが多い。一部の報道機関では、ライブドアが起こした一連の事件すべてを「ライブドア・ショック」と呼んでいるが、ここでは「株式市場全体の急落」のみを取り上げるものとする。
目次 |
事件前の背景
2005年7月以降、日経平均は、7月の1万2000円台から1万6000円台にまで回復するなど、日本経済の復活を象徴するかのような、株価上昇が注目されていた。株式市場は活況を呈しており、1980年台後半の所謂バブル景気時代を彷彿させる状態であった。このような状況においてライブドア粉飾疑惑事件が発覚し、ライブドア・ショックは起こったとされる。(日経平均チャート参照)
粉飾決算疑惑(容疑)
2006年1月16日16時頃、「東京地検特捜部が、証券取引法違反の疑いでライブドア本社および社長の堀江貴文容疑者宅・新宿の事業所などに強制捜査」、とNHKをはじめテレビ各局で報道された。当初ライブドア社はこれを否定したが、強制捜査は現実のものとなった。
偽計取引の疑いが持たれているのは、ライブドアが約75%の株を持つバリュークリックジャパン(現ライブドアマーケティング)が2004年10月、出版社のマネーライフを完全子会社化した株式の等価交換。バリュークリックは同年11月の決算短信で、業績を水増しして株価を上げようとした「風説の流布」の疑いも持たれた。
この一連の報道を受けて、業務提携を結んでいるフジテレビジョンは、「業務提携解消を含めた対応を検討する」と発表した。自社が保有しているライブドア株は、契約上2007年9月まで第三者への売買が禁止されてたが、堀江容疑者の社長辞任で契約が失効した。フジテレビ側はライブドアに対して、フジテレビが受けた株価損失に対し損害賠償請求を求めるものと思われる。
2006年1月23日午後7時40分過ぎ、東京地検特捜部は、証券取引法違反の疑いでライブドア社長の堀江貴文容疑者、財務担当の取締役宮内亮治容疑者、関連会社ライブドアマーケティングの社長を兼ねる取締役岡本文人容疑者、金融子会社ライブドアファイナンスの社長中村長也容疑者の計4名を逮捕した。
2006年1月25日には、堀江・宮内・岡本の3容疑者は、ライブドア関連グループ全ての取締役から辞任しグループ経営から完全に退くこととなった。新しいライブドア社長には平松庚三が就任(執行役員であり代表権はない)、代表取締役に熊谷史人がついた(後に逮捕)。新生ライブドアは「堀江氏を後で招くことはない」と完全に「"脱"堀江」宣言をし、堀江の経営手法を批判した。
2006年3月13日、証券取引等監視委員会は、2004年9月期の連結決算を粉飾した疑いで堀江貴文元代表取締役社長、宮内亮治元財務担当取締役、熊谷史人元代表取締役、関連会社ライブドアマーケティングの元社長の岡本文人元取締役、金融子会社ライブドアファイナンスの中村長也元社長4名と法人としてのライブドアを証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で東京地検特捜部に告発した。また、同日ライブドアでも記者会見を行い、山崎徳之代表取締役・羽田寛取締役・熊谷史人取締役が退任することを決めた。 フジテレビはライブドアとの提携を解消し、持ち株95億円をいUSENの宇野康秀社長に譲渡しフジテレビが受けた損害額345億円の賠償をライブドアに起こすことに決めた。
2006年5月10日、ライブドアが粉飾のために自社株を売却して、売り上げに計上し市場を欺いてきた手法を、東京検察庁は「ライブドア商法」と命名し、堀江氏に約150項目に及ぶ釈明を求めた。
2006年6月5日には、この事件が波及する形でライブドアのニッポン放送買収工作に絡んで堀江と連携していたと言われている村上ファンドの村上世彰がインサイダー取引の疑いで逮捕されている。
市場の動き
事件翌日の1月17日より、ライブドア関連銘柄だけでなく、新興市場を中心に株価が大幅に下落。しかしながら「当日のチャート」を見れば、前場の日経平均がプラスで引けていることからも明らかな通り、狭義での「ライブドア・ショック」は前場で終わっていると考えられる。13時過ぎには一部上場銘柄も下落し始め、狼狽売りと信用買いの手仕舞いが重なり日経平均株価も急落し、一般に「ライブドア・ショック」と呼ばれた。
2006年1月18日には、株式市場全体に個人投資家などからの大量の注文が殺到したため、14時40分に東京証券取引所の約定件数が約438万件にまで達し、東証の売買システムの処理可能件数である450万件に迫った事から、異例の「全銘柄取引停止」措置がとられた。なお、19日から後場立会開始時刻を遅くし、30分短縮となっている。
売買件数が膨らんだ背景には、マネックス証券が、ライブドアとライブドアマーケティングおよび、事件とはまったく関係の無いライブドア関連銘柄(ライブドアオート、ターボリナックス、ダイナシティ)などの信用担保能力をゼロとしたために、他の証券会社が追従するのではないか(岩井証券がライブドア、ライブドアマーケティングについて信用担保能力ゼロで追従した。)との思惑や、信用担保能力が突然ゼロとされてしまった投資家が追証(追加保証金の差入れ)発生により、投売りなどを行った結果、1月18日売り注文・買い注文が交錯し、売買高・注文件数が共に急増し、東証のシステム処理能力の限界に迫ったため、30分繰り上げて取引終了となることとなった。この東証の失態と株価暴落は世界に大きく報道され、全世界の株式市場に影響が及び、軒並み暴落した。これら一連の出来事をマスコミは「ライブドア・ショック」と名付けたが、投資家などは「マネックス・ショック」、「マネックス追証事件」として記憶した。
2006年1月19日、東京証券取引所は、システム処理能力の限界による取引停止という事態を回避するとの理由から、同証券取引所のシステムを利用している全ての銘柄の立会時間を後場は通常12時30分から15時までのところを13時から15時までに30分短縮制限した。
2006年1月23日、東京証券取引所は、1日の約定処理件数を450万件から500万件に、引き上げる緊急措置を実施したが、注文処理件数は850万件のまま変わらず。
2006年1月24日、東京証券取引所は、マザーズ市場に上場しているライブドア株式の取引時間を1月25日より午後1時30分から午後3時までの1時間半に制限すると発表した。
2006年1月25日、東京証券取引所は、ライブドア株式が強制捜査後6営業日ぶりに取引時間中に売買が成立した事を受けて、1月26日よりさらに30分間短縮した、午後2時から午後3時までにすると共に信用取引を禁止および買付代金の即日徴収を行うと発表した。
マネックス・ショック
2006年1月17日(火)の後場、マネックス証券がライブドア株およびその関連会社の担保能力を予告なく「掛け目ゼロ」にした。そのため、ライブドア株やその関連会社の株を代用有価証券として信用取引を行っていた投資家は、追加証拠金を積むか、あるいは他の銘柄に対して「換金売り」を行う必要に迫られるのではとの連想も働き、売注文が増加した。
マネックス証券が予告なく行った前例のない「担保能力変更措置」が引き起こした狼狽売りが真の暴落の引き金であると言えるため、内外投資家やその関係者からは「ライブドア・ショック」ではなく、「マネックス・ショック」だとの批判的な声が出ている。同社の行った措置は規則上違反ではないが顧客や投資家への周知の点で見れば問題があると指摘されている。
2006年1月19日(木)、与謝野馨金融・経済財政担当相から、マネックス証券の「担保能力変更措置」に対し、「担保価値をどうするかは証券会社の判断であり、制度上は問題ない」としながらも「証券会社は投資家を大切にする姿勢で経営してほしい。大切にしない会社はいつかは投資家に捨てられる」とこれを非難する声明が出されている。マネックス証券は与謝野担当相の声明に反論しつつも、同日ライブドアオートに対する担保能力変更措置を元に戻している。
関連会社
ライブドア系列会社
- 4753 ライブドア(2006年4月14日上場廃止)
- 4759 ライブドアマーケティング(2006年4月14日上場廃止)
- 7602 ライブドアオート
- 3777 ターボリナックス
- 8901 ダイナシティ
- 9937 セシール
- 3746 メディアエクスチェンジ