ユスリカ
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ユスリカ科 | ||||||||||||
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オオユスリカのオス |
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分類 | ||||||||||||
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亜科 | ||||||||||||
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英名 | ||||||||||||
"non-biting midges" |
ユスリカはハエ目糸角亜目ユスリカ科に属する昆虫の総称。「カ」に良く似た大きさや姿をしているが、刺すことはない。またカのような鱗粉ももたないため、カと見誤って叩いても、黒っぽい粉のようなものが肌に付くことはない。大部分の種は幼虫が水生で、川、池などほとんどあらゆる淡水域に棲んでいる。他には海の潮間帯に棲むものや陸生のもの、水辺の朽木の中や土壌中などに棲む半水生的なものなども少数ある。中には水生昆虫や貝類に寄生する特殊なものも知られている。
釣り餌に使われるアカムシはオオユスリカやアカムシユスリカなどの幼虫である。成虫はしばしば川や池の近くで蚊柱をつくる。名前は幼虫が体を揺するように動かすことに由来すると言われる。水田で稲を揺するからとの説もあるが、実際に揺するとは考えられない。
非常に種類が多く、世界から約1万種、日本からは約1000種ほどが記載されているが、実際にはこれらの数字よりもずっと多くの種が存在することは疑いない。水生昆虫の中では1科で擁する種数が最も多いものの一つである。
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[編集] 特徴
カによく似ており、電灯の灯などにもよく集まるため、しばしばカと間違えられて叩き殺されるが、カとは科が異なる昆虫で、人を刺すことはない。よく見れば、カに見られるような針状の口器がないことが分かるはずである。他の双翅目の昆虫同様、翅は2枚のみで、後翅は平均棍という微小な器官に変化している。成虫は微小~小型で、体長は0.5mmから1cm程度。メスの触角は普通だが、オスのそれは全方位に生えた多数の横枝がありブラシ状を呈し、カのそれよりも短めでふさふさに見える。メスグロユスリカなど雌雄で体の色が異なるものもある。
幼虫は通常細長い円筒形で、本来の付属肢はない。頭は楕円形で、眼、触角、左右に開く大腮や、そのほか多くの付属器官があり、これらの微細な形態が幼虫の分類に使われる。口のすぐ後ろには前擬脚と呼ぶ1つの突起があり、その先端には多くの細かい爪があって付属肢の様に利用する。腹部末端にも1対の脚があり、やはり先端に爪があり体を固定したりすのに役に立っている。また通常、体の後端には数対の肛門鰓をもっており、ユスリカ属 Chironomus など一部のグループには腹部にも血鰓(けっさい:血管鰓とも言う)を有するものもある。
川や用水路などで発生するが、特に生活排水などで汚れた「どぶ川」では大量発生することがある。ドブの泥を集めて棲管を作り、そこから上半身をのりだしてゆらゆらするのがよく見られる。ただし、種数からすればドブにすむものはごく一部で、富栄養化の進んでいない普通の川や池沼、あるいは清流にすむものも多い。ウミユスリカ類の幼虫は潮間帯や珊瑚礁に棲む。また渓流の落ち葉に潜り込むもの、岩の上に棲管を張り付かせるもの、わずかに水が流れる岩の上に棲むもの、土壌中に棲むもの、その他、特殊な生息場をもつものも知られている。周囲の泥や砂をつづって巣を作るものもあり、ナガレユスリカ属のように巣の入り口に特殊な縁飾りを作るものや、トビケラ目に似た可携巣を作るものなどがある。食生はデトリタスを食べるものが多いと考えられるが、モンユスリカ亜科のように肉食のものや、他の水生昆虫に寄生するものなどもある。蛹は蚊のそれであるオニボウフラを細長くしたような姿で、水面に泳ぎ上がって、水面で羽化が行なわれる。
羽化した成虫は川の近くで、たくさん柱状に集まって飛んでいることがよくある。 いわゆる「蚊柱」をつくっている虫である。蚊柱は、1匹の雌と多数の雄で構成されている。
[編集] 人間とのかかわり
人を刺すことはなく、水に棲む幼虫が、泥中や水中の有機物から体を作り、やがて成虫となって水外に飛び去ることで、川や池などの浄化に役立つという意味では基本的に益虫であるといえる。
しかし、生活排水による川の汚れなどにより、川の富栄養化が進むと大量発生して害となる。川のそばを歩くのも困難なほど大量発生すると、川の近隣住宅においては、洗濯を干せない、窓を開けられないといった問題が起きる。こうした、ユスリカの大量発生による問題は、全国各地の川や、池のある公園などでも起きており、琵琶湖や霞ヶ浦におけるオオユスリカの大発生などがよく知られており、発生場所を有する各自治体などはユスリカ対策に悩まされることになる。
また単に不快というだけでなく、ユスリカを抗原としたアレルギー性の鼻炎や「ユスリカ喘息」と呼ばれる呼吸器疾患も知られている。これらの疾患は、大量発生したユスリカが交尾産卵して死滅した後、死骸が風化する過程の微細な粒子が、空気中に浮遊したり家屋内に堆積し、それらを人が吸引することで起こると考えられている。したがってユスリカが大量発生する場所の住民に多く発症する可能性が高い疾患であるが、特殊な例では、ユスリカの幼虫を魚の餌に加工する仕事をしている人にも同様の疾患が見られた例があるという。
富栄養化した水域で特に多く発生するとは言え、川などが完全に汚れて、有害物質がいっぱいになると、発生しない。つまり、都会の川では、下水道の整備などで川の浄化がある程度進んだ時点で、大発生することもあるわけだ。川にユスリカがいるのは普通のことなので、「まったくいない」もしくは「大量発生」するといったことで、川の汚染の状態を計る自然のバロメーターともいえる。すなわち、指標生物として使える。しかし幼虫によるユスリカの種の判定は例外を除けば極めて困難で、実際には属レベルまでの同定でも口器その他の微細な器官の形態を調べなければならず、それなりの熟練が必要である。大ざっぱな見方としては、赤いユスリカ幼虫の生息する環境は富栄養で汚染がすすんだ場所と見ていい。赤い色素は、ヘモグロビンの様に酸素を蓄えるものであり、そのようなユスリカの生息地は、有機物分解がさかんで、酸素欠乏状態になりやすい場だと見られるからである。渓流生のユスリカ幼虫は、緑や茶色で、赤くないものが多い。
他に、高等学校理科の教材として、唾腺染色体の観察に用いられることがよくある。
蚊柱は、夏の季語。
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[編集] 参考文献
近藤繁生、平林公男、岩熊俊夫、上野隆平(共編)『ユスリカの世界』 培風館、2001。ISBN 4563077615
[編集] 外部リンク
- The Chironomid Home Page
- Identification manual for the larval Chironomidae (Diptera) of North and South Carolina--ノースカロライナ州のユスリカ科幼虫の検索 --幼虫の形態や分類の実際の凡そを理解できる。