ミンククジラ
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ミンククジラは、ナガスクジラ科の中で最小のヒゲクジラ。南極海と、北大西洋、北太平洋の3つの系統がある。北半球のミンククジラは、胸ビレに白い斑がある。最近は、南半球のミンククジラを‘クロミンク’と区別して呼ぶ。1950年代~60年代の捕鯨全盛期には、小型で素早く泳ぐミンククジラは効率が悪いと見向きもされなかった。捕鯨対象となってからの歴史が短いので、他のクジラと比べ捕獲圧による影響が少ない。減少した他種の隙間をうめて増えたと「海のゴキブリ」呼ばわりされることもあるが、1産1子で10ヵ月の妊娠期間をもつという生理は「進化」していない。一方で個体の大型化と成熟の早期化が起きており(原因は温暖化や内分泌撹乱物質等が疑われている)、個体数が増えている原因ではないかと言われている。92年まで「南極海に76万頭」といわれてきた個体数は、2000年のIWCで「もはやその数は正確ではない。ずっと少ないと指摘する科学者もいる」という科学委員会の報告(根拠が不明確であり、一方で100万頭以上で増え続けているという指摘もある)で現在仕切り直し中。
日本沿岸にはオホーツク海のミンク個体群と日本海の個体群が分布している。そのうち、日本海個体群は過去の捕鯨による影響から回復しきれていない。しかし、調査捕鯨で捕獲され、国内流通しているオホーツク個体群のミンククジラの中に、以前からこの日本海個体群の肉が相当数混じっているという指摘がある。政府は2001年から定置網に混獲されたクジラ肉の商業流通を許可したために、日本哺乳類学界が「保護すべき」としている日本海個体群の流通量が増す可能性大である。
ミンククジラの餌は、南極海では主にオキアミだが、北半球では、魚なども食べている。このため海洋汚染の影響を受け、体内に汚染物質の蓄積があって一部皮質は食用には適さないと流通がストップしている。北太平洋ミンククジラのオスの精巣の20%はなんらか異常があるという報告もあり、汚染や温暖化がクジラの生存への脅威になる可能性がある。