ボブ・デービッドソン
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- アメリカ合衆国のアイスホッケー選手、ロバート・デービッドソン(Robert Davidson、1912年 - 1996年)の通称。
- アメリカの野球審判。本稿で詳述。
ボブ・デービッドソン(Bob Davidson、1952年8月3日-)は、アメリカ合衆国・メジャーリーグに所属する野球(MLB)の審判である。1983年、ナショナル・リーグの審判員となる。
第1回WBCで球審(2次リーグ アメリカ - 日本)、塁審(2次リーグ メキシコ - アメリカ)として試合を裁いたが、いずれもアメリカ側に有利となる疑わしき判定を行ったことから話題となった。
なお、以下本稿での試合日時等はすべて現地時間で表記する。
[編集] 誤審エピソード
- 千葉ロッテマリーンズのボビー・バレンタイン監督(元レンジャース及びメッツ監督)によると、彼には「ボーク・ボブ・デービッドソン」というニックネームがあるぐらい、自分を目立たせるためにボークをよくとる審判だということである。北海道日本ハムのトレイ・ヒルマン監督もまた、マイナー時代に判定を巡って対立していた。
- 1995年8月10日、一塁審判を務めたロサンゼルス・ドジャース - セントルイス・カージナルス戦で没収試合が宣告された(ただ、没収試合を宣告したのはデービットソンではなく、ジム・クイック審判である)。この試合は、当時ロサンゼルス・ドジャースに在籍していた野茂英雄が2桁勝利をかけて登板していた。ドジャースのトミー・ラソーダ監督の退場処分に抗議し、ファンがグラウンドにボールを投げ込んだことが原因だった。この日は運悪く、「ボール・ギブアウェイ・デー」(入場者にボールをプレゼントする日)であり、観客のほとんどがボールを持っていた。2005年時点で、メジャーリーグ最後の没収試合とされている。この措置は全米で物議を醸した。
- 1998年9月20日、マーク・マグワイアの66号ホームランと思われた打球を二塁打と判断し、“史上最低の誤審”又は“世紀の大誤審”とバッシングを受けた。これは、観客がフェンス手前に乗り出して打球に触れた妨害行為があったためとされるが、妨害者とされた観客は無実を主張し、法廷に訴えた。この観客は、試合観戦中に強制的に退場させられ、罰金を払わされた。当時、マーク・マグワイアとサミー・ソーサは、激しいホームラン争いをしていた。最終的なHR数はマグワイア70本,ソーサ67本。
- 1999年、メジャーリーグ審判の労使紛争でリーグ側に強硬な態度をとったためにメジャーリーグを解雇されたが2005年に復帰した。しかし、WBC開催時にはメジャーのアンパイアリングスタッフから外れていたという。
- もともと上記のような判定を下すことで評判は良くないが、2006年からメジャーリーグ復帰が決定しているため、WBCの球審などを務めていると言われている。そのために、アメリカ側に有利な判定をしているのではないかという疑いが持たれている。その一方で、WBCでの再三にわたる誤審は視力の低下が原因ではないかという説もある。
[編集] WBCにおける判定問題
2006年3月12日、WBC2次リーグAブロックの米国 - 日本戦の同点で迎えた8回表一死満塁で、岩村明憲(ヤクルト)が打ち上げたレフトフライを受けて西岡剛(ロッテ)が三塁からのタッチアップを行った。西岡は送球が捕手に渡るよりも早く悠々と本塁に到達し、日本に勝ち越し点が入ったかに思われたが、アメリカチームは「離塁が早すぎたのではないか」とアピール、三塁をカバーした二塁塁審はセーフとしたものの、マルティネス監督の抗議を受けた球審のデービッドソンはアウトと訂正した。4人制審判で一死満塁の場合、左翼への飛球は三塁塁審が追うため、三塁のカバーは二塁塁審(ただし、判定権限は球審)が行うことになっている。今回も三塁塁審が三塁を離れて左翼手ランディ・ウィンの捕球を確認、その後アメリカの三塁手のアピールに対して(本来権限はないが)離塁と捕球を両方見ていた二塁塁審がセーフの判定をした。このような場合の訂正は当該二塁塁審自身が行うことが通例とされる。しかし、監督の抗議後にデービッドソンは「この場合の判定権限は球審である自分の領域だ」と判断し、三塁走者の西岡はアウト(離塁が早い)であるとして判定を訂正した。日本は、主催者側に判定の訂正に対する質問書と、第2回大会は全参加国から審判を出すようにするようにという要望書を提出。主催者側は審判の判定は正当であるとした。主催者側の回答に納得できなかった日本は再度質問書を提出した。
二次リーグAブロックのメキシコ - アメリカ戦の3回裏、メキシコの先頭打者マリオ・バレンズエラがロジャー・クレメンス(アストロズ)から放った打球はライトポール際に飛び、直接ポールの中ほどに当たって大きくフェアグラウンドに戻ってきた(と見える)。しかし一塁塁審をしていたデービッドソンはこれをインプレーと判定、二塁打になった(直接ポールに当たったのであれば、ルール上はその時点でボールデッドとなり、ホームランとなる。またフェンスを高々と越えている時点でインプレーという判断はありえない)。メキシコは激しく抗議し、ボールに付着していたポールの黄色い塗料を審判のみならずTVカメラにも向けるなど強くアピールしたが、結局判定は覆らず、無死二塁から再開された。前日にディズニーランドで遊んでいたメキシコだったが、この判定に大奮起。ホルヘ・カントゥがタイムリーヒットを打ち先制点を奪う。5回裏にも追加点を奪ったメキシコは、バレンズエラ、ビニー・カスティーヤ(ナショナルズ)等の好守と緻密な8人の継投で2-1でアメリカに勝利。この結果、1勝2敗で日本、アメリカ、メキシコが並ぶことになったが、失点率の1番低かった日本が準決勝に進み、アメリカは2次リーグ敗退という皮肉な結果となった。試合後、メキシコのフランシスコ・エストラダ監督は「球場全体が本塁打だと思ったはずだが、審判だけがそう思っていなかった」と皮肉を交えてコメントした。
以上、2つのプレイはスタジアム内のスクリーンに何度もリプレイされ、その判定が「誤審」とされてもおかしくない状況が映し出されたことで場内は騒然となった。また、アメリカのメディアでも疑惑の判定(「カリフォルニアの陰謀」)と批判的な報道がなされた。また、「今大会のMVPはボブ・デービッドソンだ」、「この大会はワールド・ベースボール・クラシック(World Baseball Classic)ではなく、ワールド・ボブ・クラシック(World Bob Classic)だ」と揶揄する声もある。
また、このメキシコ - アメリカ戦にはその前にも伏線となるような誤審があったとされる。2回表、アメリカ無死一塁(走者アレックス・ロドリゲス)でバーノン・ウェルズが左翼に飛球を打ち上げた。左翼手が走り込みながらウォーニングトラック前で捕球し、中継の遊撃手へ、遊撃手から一塁手へ送球された。ロドリゲスは左翼手捕球時、二塁付近におり、そこから一塁にスライディングしながら帰塁した。遊撃手はアウトを確信しガッツポーズをしていたが、一塁塁審のデービッドソンはセーフと判定。しかし、リプレイによると走者より先に一塁手が触塁しており、アウトと判定してもおかしくないプレイであった。なお、このプレイがスタジアム内のスクリーンでリプレイされたかは不明である。
3月18日のドミニカ共和国 - キューバ戦で球審を、韓国 - 日本戦で二塁塁審を、キューバ - 日本戦(決勝戦)で一塁塁審を務めた。