パブリックドメインDVD
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パブリックドメインDVDとは著作権者の許諾の必要が無い、著作権の保護期間が満了したものや著作権を放棄したとみなされたパブリックドメインの映像作品をDVDに記録したものをいう。
格安DVD、激安DVDとも呼ばれている。著作権者の許諾を得ている正規盤と比較して非正規盤とよばれることもあるが違法な海賊盤とは異なり合法的な製品である。
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[編集] 製品の概要
[編集] 歴史
DVD登場以前のビデオテープ、レーザーディスク、VIDEO-CDなどの時代にもそれぞれの記録媒体でパブリックドメインな映像作品は販売されていた。しかし正規盤と大差のない価格帯ということと作品ラインナップが貧弱なため普及しなかった。DVD黎明期になるとこれまで同様にパブリックドメインDVDが販売されるがやはり価格が正規盤と大差のない2000円から5000円台と比較的高価なため一部の映画マニアにしか普及しなかった。21世紀に入り保護期間の満了した映像作品の増加とともに格安、激安とされる300円から500円台の製品が出現するようになりパブリックドメインDVDは一気に普及した。2006年現在は380円、500円の製品が主流であり、10社以上が参入し数百本の作品が各社から重複してリリースされている。
[編集] マスターの供給源
昔はフィルムの管理が甘く公開の終了した映画のフィルムは所有権が放棄された状態となりコレクターに転売されたり映画館や配給会社等の倉庫に放置されていた。 パブリックドメインDVDはこのようなフィルムを発掘しマスターとしている。またマスターをDVD製作会社に供給する専門の業者も存在している。
[編集] 製品の字幕
オリジナルの映像作品が日本語以外の場合、オリジナルの映像作品がパブリックドメインになっていても日本語に翻訳した日本語字幕はオリジナルの映像作品とは別の著作物となり、日本語字幕がパブリックドメインなっていない時は「創作的に表現した」部分を販売業者が新たに日本語字幕を作っている。
[編集] 製品の画質
マスターフィルムの保存状況が良好とは限らないため画質、音質はばらつきが激しい。製品化にあたりリストアがなされた製品もあれば手付かず状態の製品もあり玉石混淆である。 また各社の登録商標などがクレジットされるオープニングやエンディングではその部分がカットされる場合があり、ストーリに関係のない部分ではあるが厳密には完全版とは呼びがたいケースが間々ある。
[編集] 製品化される作品
映画史に残る名作もあれば箸にも棒にもかからない駄作もありこちらも玉石混淆である。中には駄作であっても大スターの無名時代の出演作品など興味深いものも存在している。またマスター供給元が同じためか製作会社は違っても似たような製品ラインナップが多いのも特徴である。そして作品の内容よりもパブリックドメインとして使用できるマスターの有無が製品化にあたっての重要な要素であるためシリーズ物であっても歯抜けでリリースされるものもある。
[編集] 邦画の状況
邦画であってもパブリックドメインの原則は適用されるので多くの邦画作品がパブリックドメインに該当する。しかしマスター供給会社が欧米の会社であるためか邦画作品のパブリックドメインDVDは殆ど存在していない。(韓国版の「野良犬」「羅生門」などの黒沢作品が一部で流通している程度である:2006年現在) 邦画が殆ど無いことについて一部には邦画界による陰謀論を唱えるものもいるが一般にはマスター供給会社から見た邦画作品の市場規模の小ささに起因するものと考えられている。
[編集] 主なパブリックドメイン作品
・作品中に著作権表記がないために権利放棄とみなされパブリックドメインとなった作品
「シャレード」「キリマンジャロの雪」「真昼の決闘」「バリ島珍道中」「恋愛準決勝戦」など
・日本での著作権保護期間が満了し日本国内ではパブリックドメインとなった作品(日本以外に持ち込むと海賊盤と判定される場合がある)
「イースター・パレード」「雨に唄えば」「ウィンチェスター銃'73」など
・本国でも著作権保護期間が満了し全世界的にパブリックドメインとなった作品
「オズの魔法使い」「風と共に去りぬ」「平原児」「カンサス騎兵隊」など
[編集] パブリックドメインDVDへの反響
正規盤を扱う業者からは「他人の褌で相撲を取る」、「質の劣るマスターを使用し作品の質を損ねている」などと批判的な見方が多い。 一方一般の映画ファンからはおおむね好評である。「お手ごろ価格でDVDが入手できる」、「日本未公開作品や廃盤、未リリース等の死蔵されていた作品が復活した」などである。
[編集] 正規盤業者の対応
合法な製品であるため一部を除き表立った動きはしていない。但し公式サイト等において正規盤である旨を強調した告知がなされたり映像特典を充実させるなど製品の差別化を図っている。あるいは保護期間を延長するように働きかけるといった行動が見られる。また近年は600円台等、より低価格な正規盤製品も見受けられる。
1953年に発表された映画作品については、2004年1月1日に施行された改正著作権法の解釈を巡って、2003年12月31日をもって保護期間が満了したので以後は自由に使用して良いとする見解と、保護期間は2023年12月31日まで延長されるとする見解が対立している。⇒1953年問題
尚、正規盤の中には自社所蔵のマスターフイルムを元にデジタルリマスター、ダスト&スクラッチリダクション、等のデジタル処理を、時間と手間を掛けて施し、画質を向上させることにより他社から発売の廉価版との差別化を図るものもある。