バスカヴィル家の犬
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バスカヴィル家の犬 (The hound of the Baskervilles、1901年、「バスカービルの魔犬」とも)は、アーサー・コナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズ作品の1つ。世界的に高い評価を得ており、探偵小説の最高傑作に推す学者も多い。
ホームズの長編は4作あるが、この作品だけが二部構成を取っていない。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] あらすじ
魔の犬の伝説がある富豪のバスカヴィル家で、当主のチャールズ・バスカヴィル卿が死体で発見される。表向きには心臓発作による病死と発表されたが、卿の死体のそばには巨大な犬の足跡があった。
ホームズは事件の調査をチャールズ卿の主治医であり、友人でもあるモーティマー博士から依頼される。子息のいないチャールズ卿の正統な後継者は、チャールズ卿の甥にあたる若きヘンリ・バスカヴィル卿ひとりである。しかし、モーティマー博士に伴われてロンドンにやってきたヘンリ卿の元にも、バスカヴィルの館へ赴く事を警告する謎の手紙が届く。 ホームズはロンドンで別の事件に携わる必要があるといい、ワトスンが代わりにヘンリ卿の客人として入館に同行する。
委細ありげな執事のバリモアとその妻、脱獄囚のセルデン、近所に住む植物学者のステープルトンとその美しい妹のベリル嬢など、ワトスンは見聞きした事をホームズに向けた手紙や自らの日記に綴る。バリモアとその妻の不審な行動は何故なのか?凶悪な殺人犯セルデンは何処へ潜んでいるのか?ベリル嬢は何故自分や、彼女に求婚するヘンリ卿にここを立ち退くよう懇願するのか?そして、自分が湿地帯ではっきり聞いた恐ろしい声は「魔の犬」の咆哮ではないのか・・・・・。
更にそれらの誰でもない未知の人物が、身近に潜んでいる事をワトスンは知る。
[編集] 年代について
モーティマーがホームズの部屋に置き忘れたステッキに「1884」と年号が刻まれており、それを5年前といっていることから、事件が起こったのは1889年と考えるのが自然である。だが、1889年はワトスンが結婚生活に入っており、ホームズと同居していないため、矛盾が生じている。
研究者によってこの事件の発生年はまちまちであり、1886年から1900年までいろいろな説が出ている。
[編集] 備考
- 1893年に「最後の事件」で一度ホームズが葬られてから、8年ぶりで発表された新作だった。ドイルは、ホームズという役者がすでにいるのに、新しい役者を用意する必要もあるまいと思った、と語っている。書店に押し寄せた読者が失望させられたことには、事件は(上述のような、年代にまつわる議論はあるものの)ホームズがライヘンバッハの滝へ転落する以前に起こったものとされていた。ホームズが本当の意味の生還を遂げるには、読者はもう数年を辛抱しなくてはならなかった。
- 本作の刊行の翌年に、ドイルはナイト爵を受爵する。歴史的事実としては、これはボーア戦争の従軍記などの社会的活動に対して送られたものだった。しかし、当時の誰もがこれはホームズを死の淵から復活させたことに対する恩賞であると信じた。この誤解は、現在でもまれに信じられている。
- バスカヴィルの名は、バーミンガムの印刷業者であったジョン・バスカヴィルに由来するのではないか、という説がある。