トーマス・カーライル
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トーマス・カーライル(Thomas Carlyle、1795年12月4日 - 1881年2月5日)は、イギリスの評論家、歴史家。スコットランドのダンフリーシュシャー(Dumfriesshire)に生れる。父は石工。エディンバラ大学に学び、初め牧師を志したが、のち数学、法律を学んで一時数学の教師となり、次第に文学に心を寄せた。ウェルシュ(Jane Baillie Welsh)と結婚し(1826年)、ダンフリーシュシャーの荒野グレーゲンパットクにある彼女の農場に隠遁した(1828-34年)。ドイツ文学を研究して、『シラー伝』(Life of Shiller、1925年)を書き、ゲーテの『ヴィルヘルム・マイスター』その他を翻訳した。またゲーテと文通し、大いにその影響をうけた。1834年からロンドンに移住し、ドイツ、フランスを訪れたことはあるが死に至るまでそこに定住した。狷介な性格のため交友は限られていたが、ジョン・スチュアート・ミルの友人でもあった。ただし、1865年のジャマイカ事件では奴隷制度擁護派の代表格として、エア擁護委員会に参加しミルと論争になっている。
歴史家としては、『フランス革命史』(French Revolution、1837年)によってその位置を確立し、偉人の伝記を主に著した。これらは偏見その他の欠陥はあるが、克明な研究、精彩ある描写力、鋭い洞察にみちた特色ある史書である。物質主義、功利主義に反対し、魂と意志の力とを信じ、俗衆の勢力に対して英雄、天才の優越を高唱する人生観、社会観は『衣服哲学』(Sartor resartus、1838年)、『英雄および英堆崇拝論』(On heroes and hero-worship、1841年)、『過去と現在』(Past and present、1843年)に溢れ、後のニーチェを思わせる。文体はごつごつして難解であるが、力強く感銘深い。
[編集] 主要な著書
前出のほか
- 『チャーティズム』(Chartism、1840年)
- 『クロムウェル伝』(Oliver Cromwell's letters and speeches、1845年)
- 『ジョン・スターリングの生涯』(The life of John Sterling、1850-51年)
- 『フリードリッヒ二世の歴史』(The history of Friedricb II、1858-65年)
- 『カーライル選集』全6巻 日本教文社