デジタル・デビル・ストーリー
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『デジタル・デビル・ストーリー』(Digital Devil Story)は、西谷史による伝奇SF小説。挿絵は北爪宏幸。
コンピュータから召喚された悪魔(デジタル・デビル)と、私怨と好奇心で彼らを呼び出してしまった天才高校生プログラマーの戦いを、日本神話からの転生を絡めて描いている。
目次 |
[編集] 概要
天才プログラマー・中島朱実の戦いを描いた『デジタル・デビル・ストーリー』三部作と、それから4年後の物語『新デジタル・デビル・ストーリー』六部作で構成されている。
1986年に徳間書店・アニメージュ文庫で書き下ろされた第一作『女神転生』は、翌年にOVA化。メディアミックス作品として、日本テレネットからパソコン用アクションゲームが、ナムコからファミコン用RPGが発売された。その後、ファミコン用RPGは開発元のアトラスによって原作小説とは無関係にさまざまな機種でシリーズ化され、『真・女神転生シリーズ』として現在も続いている。
アニメージュ文庫が1998年に刊行を終了したため文庫版は絶版となったが、2004年よりアトラスの携帯電話サービス「メガテンα」にて、文庫版を加筆修正したデジタルノベルが配信されている。また、2005年から翌年にかけて、シリーズ全作を大幅に加筆修正した『愛蔵版 デジタル・デビル・ストーリー 女神転生』全三巻がブッキングより復刊されている。(この加筆は携帯電話版とも異なる)
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] デジタル・デビル・ストーリー
[編集] ストーリー
1980年代後半、インターネットという概念が未だ人々に浸透していなかった時代。
東京・国立市にある十聖高校の3年生・中島朱実は、その美貌から、他の男子生徒の羨望や嫉妬を招きがちであった。プログラマーとしての天賦の才にも恵まれていた彼は、コンピュータ理論と魔術理論の類似性に着目し、ひそかに「悪魔召喚プログラム」の制作に没頭していた。自らプログラムを組みながらも、悪魔を召喚する目的が見つからなかった朱実は、稼動実験を躊躇していたのだが……。
そんなある日、朱実の身にプログラム稼動を決意させる出来事が起こってしまった。彼に振られた高見沢京子の逆恨みで、空手部の主将・近藤弘之に暴行されてしまったのだ。深い私怨に衝き動かされた朱実は、ついにプログラムを稼動、人間界に悪魔(デジタル・デビル)を召喚し、近藤と京子を殺害、復讐を果たしてしまうのだった。
それから二ヵ月後。朱実のクラスに白鷺弓子という少女が転入してきた。彼女は朱実に強い既視感覚を覚えるが、朱実は全く取り合おうとしない。それが二人の前世からの深い因縁によるものであり、これから先の運命を大きく変えていく前兆でもあることなど、弓子はもちろん、朱実自身全く知る由もないことだった。
その日の放課後、朱実は古文担当の小原教諭をCAIルーム(コンピュータ学習室)に呼びつけた。好奇心に抗いきれず、CAIルームに忍び込んだ弓子の目前で繰り広げられる、禍々しい悪魔降臨の儀式……。コンピュータによって召喚された悪魔「ロキ」は、復讐を果たす代償として、女の生贄を要求していたのだった。
不幸にも、次の生贄に弓子が選ばれてしまった。先日の一件以来、彼女のことが気になりだしていた朱実は、躊躇しながらも、ロキの求めるままに生贄の儀式を行ってしまう――。
[編集] 主要登場人物
- 中島朱実(なかじま あけみ)
- 本作の主人公。十聖高校の3年生。プログラマーとしての天賦の才に恵まれた美少年。日本創造神・イザナギ神の転生した姿でもある。私怨と好奇心から、自ら組み上げた「悪魔召喚プログラム」を稼動、人間界に悪魔ロキを召喚する。悪魔召喚に成功してしばらくは悪魔の力を借りて学校を支配し、前世の妻でもある白鷺弓子すら生贄として捧げようとするが、実体化したロキとの死闘の最中にイザナギ神としての記憶を取り戻し、悪魔を倒すことを決意する。改心した後は悪魔召喚プログラムによって招いた事態の責任を取るため、そして弓子を助けるために悪魔と戦っていくが、やがて自分の行った罪の重さに耐えかねて生と死の狭間で揺れ動くようになる。
- 白鷺弓子(しらさぎ ゆみこ)
- 札幌から十聖高校に転入してきた少女。イザナギ神の妻、イザナミ神の転生で、朱実とは深い因縁と絆によって結ばれている。
- 一度はロキによって殺害されるが、朱実とイザナミ神の助力によって再び命を取り戻した。イザナミ神の形質と強大な理力を受け継ぎ、生体マグネタイトを大量に保有する体質であるがゆえに、それを糧とする魔族から始終狙われる身となってしまう。
- 「イザナミ神の器」という、シリーズ全編にわたるキーパーソン。悪魔の跳梁や世界動乱などの周囲の喧騒には一切目もくれず、最初から最後まで、ただひたすら中島朱実との愛に生きた。
- 小原(おばら)
- 十聖高校の古文教諭。モデルを思わせる妖艶な美女。教え子の中島朱実によってロキの生贄として捧げられ、その子を身ごもってしまう。ロキを失った後もその恋慕と執着心は凄まじく、ついにはCAIルームに残されていた悪魔召喚プログラムを盗み出してしまった。
- ロキ
- 中島朱実によって人間界に召喚された最初のデジタル・デビル。奸智と美貌で知られた北欧神話の神。生贄として献上された小原を操り、人間界を我が物にせんと企んでいる。自らの肉体を不定形の原形質に変化させたり、ブロンズのように硬質化させることができる。また、蝿を使い魔にし、彼らから情報を収集する能力も持っている。人間界に実体化した際に弓子やクラスメイトたちを殺害するが、イザナミ神からヒノカグツチの剣を授かった朱実によって倒された。
- 中島朱実によって召喚された電子獣。ハンドヘルドコンピュータを介して召喚、実体化させることができる。悪魔としての強さはロキよりずっと劣るが、召喚者に忠実で朱実たちに忠義を尽くす。狂気に染まった朱実を見限り、一度は魔界に去るが、朱実が遺した悪魔召喚プログラムによって再び人間界に召喚され、礼子たちを救った。
- イザナミ
- 日本創造の女神。神々の母であると共に黄泉の統治者でもある。イザナギ神とは兄妹にして夫婦。白鷺弓子の前世の姿。
- 自身と夫の転生である弓子と朱実に助力し、悪魔達と戦うための力を与える。人間界に直接降臨することはできないが、弓子に憑依してその肉体を操ることはできる。
- チャールズ・フィード
- MIT(マサチューセッツ工科大学)教授にして、米国魔術界の総帥。魔術や錬金術を人類のために役立てようとしている。魔族に対抗するため、シリーズ全編にわたって朱実と弓子、明日香たちに助力する。
- イスマ・フィード
- チャールズ・フィードの弟。兄とは逆に邪悪な野望を抱き、魔族と手を結んで世界支配を企む黒魔術師。小原が盗み出した悪魔召喚プログラムを独自に改良し、デジタル・デビル「セト」の実体化を図る。性格は冷酷非情で、魔術にも精通し超能力のような力を身につけている。
- 成川(なるかわ)
- 内閣情報調査室、特務二部の捜査官。武芸百般にも優れ、内調の中でも最も優秀な男と評されている。フィード教授を護衛する任に就くが、中島朱実と出会った時から不思議な既視感覚を覚え、仕事の範囲を超えて彼に協力することになる。
- ロキの次に出現したデジタル・デビル。エジプト神話にて全ての神々を敵に回し互角に戦ったと伝えられる恐るべき邪神。イスマとの契約によって人間界に降臨し、生体マグネタイトを得るために罪もない人々を大量殺戮する。静止衛星スタースコーピオンにて悪魔召喚プログラムを稼動され、宇宙空間にその実体を現すも、朱実と弓子によって倒される。
- かつて天界を追放された堕天使にして、数多の悪魔を従える魔族の王。金髪碧眼の美しい若者の姿だが、黄金色のオーラを身に纏い、魔王の名に違わぬ風格と強大な理力を有している。セイレーンや夢魔などの配下の小悪魔たちを使い、悪魔の知略で朱実と弓子を追い詰めていく。
[編集] 新デジタル・デビル・ストーリー
[編集] ストーリー
199X年。魔王ルシファーとイザナミ神の戦いから3年後。日本を含むほとんどの国家は既に魔族の支配下に置かれていた。魔族に抵抗した大和の神々は敗北し、降伏を拒んだイザナミ神は処刑されて諏訪下社でさらし者となっている。ある冬の夜、現世に転生した大和の神・タニグクは、今は死したイザナミ神を反魂の術によって蘇らせようと試みるのだが……。
それから1年後。十聖高校2年生の北明日香は、クラスメイトの木戸礼子を救ったことがきっかけで、魔族に抵抗する秘密組織「十字軍」と関わりを持つようになった。そして彼らの話から、魔族による世界支配の実態と、かつて憧れを抱いた女性・白鷺弓子が大和の神によって転生復活し、魔族に囚われている現状を知らされる。弓子が中島朱実の恋人であることを知りつつも、彼女への想いが未だに捨てられない明日香は、弓子を救い出すため、礼子や十字軍のメンバーたちと共に魔都と化した新宿特別区に潜入する。
[編集] 主要登場人物
- 北明日香(きた あすか)
- 新シリーズ主人公。十聖高校に通う2年生の男子生徒。中学時代に校門で覗き見た白鷺弓子に憧れを抱き、同校に進学した。
- 大和の神によって転生復活した白鷺弓子の行方を追って、クラスメイトの木戸礼子たちと共に魔都と化した新宿特別区に潜入する。
- 三貴子(みはしらのうずのみこ)の末弟・スサノオの転生で、中島朱実、白鷺弓子の両名とは深い因縁によって結ばれている。弓子と同じような念動力を行使し、潜在的に死者の魂を引き寄せる力を持っている。
- 木戸礼子(きど れいこ)
- 北明日香のクラスメイト。ボーイッシュで可愛らしい外見に反して、生真面目で正義感の強い勇敢な少女。
- 魔族に抵抗する秘密組織「十字軍」のメンバーでもあり、治安警察に連行されそうになったところを明日香に救われ、以後彼と行動を共にするように。三貴子の長姉・アマテラスの転生で、朱実と弓子、明日香とは前世からの深い因縁で結ばれている。明日香のように戦闘に特化した力は持たないが、あらゆるエネルギーを体内に取り込んで光に変えることができる。
- キララ
- 明日香たちが新宿特別区に潜入した際に出会った、少女を思わせる美貌を持つ少年。
- 暴行されていたところを助けられたのが縁で、明日香たちと行動を共にするようになる。
- 沢女(さわめ)
- 大和神族の一人で水を操る力を持つ。見た目は7、8歳の幼い少女だが、実際はかなりの年月を生きている精霊。
- 前世の確執から、明日香に対して猜疑心を抱く他の神族たちとは違って、無邪気に彼を慕っている。
- ルシファーの参謀。数千年を生きたともいわれる怪人で、卓越した頭脳を持つ。遺伝子操作による新生物の合成、実像を伴うホログラムやイグドラジルを用いた魔法陣の作成など、人智を超えた技術を駆使してルシファーによる世界支配を支えている。もっとも、忠誠心のみで彼に与しているわけではないが……。
- ルシファー直属の悪魔。面長で逞しい肉体を持つ誇り高き武人。中世の騎士のような鎧と剣に身を包んでいる。剣から強力な波動を発し、触れずして周囲の物体を断ち割ることができる。透視力や亡者を操る能力も持つ。
- ロキと正妻シギュンの間に生まれた嫡男。ルシファーに忠誠を誓い、大和特別区にあるイザナミ神の墳墓・白鷺塚を封印している。自らを周囲の環境に合わせるため、白衣黒袴に身を包み、和弓を武器にしている。兄弟の中では父の形質を最も色濃く受け継いでおり、肉体をブロンズのように硬質化させることができる。
- 惑星ニブルヘイムの女王。ロキと妖女アングルボーザとの間に生まれた娘で、ブロンドの髪と均整の取れた肢体を持つ美女。外見からは想像もつかない程の恐ろしい魔力を持ち、強烈な冷気を操り周囲の物体を凍結させる。ナリの異母妹だが、疎んじられて二人の兄フェンリル、ヨルムンガンドとともに辺境ニブルヘイムに追放されていた。自らの版図を広げるため、ニブルヘイムの巨人族を率いて地球へとやってきた。
- 崇徳上皇(すとくじょうこう)
- 大和神族によって、惑星黄泉に封じられていた日本最強の怨霊。明日香とベルゼブーによって封印を解かれる。
- 自らに過酷な運命を強いた最高神に復讐するため、部下である源為朝、藤原頼長と共に転生復活し、現世を滅ぼそうと画策する。
[編集] シリーズ一覧
[編集] アニメージュ文庫版(徳間書店刊)
※ 現在は既に絶版
- 旧シリーズ
- デジタル・デビル・ストーリー 女神転生 ISBN 4196695523
- デジタル・デビル・ストーリー2 魔都の戦士 ISBN 4196695582
- デジタル・デビル・ストーリー3 転生の終焉 ISBN 4196695760
- 新シリーズ
- 新デジタル・デビル・ストーリー1 捕われの女神 ISBN 4196696295
- 新デジタル・デビル・ストーリー2 氷界の女王 ISBN 4196696422
- 新デジタル・デビル・ストーリー3 神魔の惑星 ISBN 419669649X
- 新デジタル・デビル・ストーリー4 怒りの妖帝 ISBN 4196696562
- 新デジタル・デビル・ストーリー5 女神よ永遠に ISBN 4196696619
- 新デジタル・デビル・ストーリー6 転生の絆 ISBN 4199000054
[編集] 愛蔵版(ブッキング刊)
文庫版に大幅な加筆修正を加えた愛蔵版。2005年から翌年にかけて、全三巻がブッキングより復刊されている。
- 愛蔵版 デジタル・デビル・ストーリー 女神転生 ISBN 4835441834
- 「女神転生」「魔都の戦士」「転生の終焉」を収録。
- 愛蔵版 デジタル・デビル・ストーリー 女神転生2 ISBN 4835442350
- 「捕われの女神」「氷界の女王」「神魔の惑星」を収録。
- 愛蔵版 デジタル・デビル・ストーリー 女神転生3 ISBN 4835442369
- 「怒りの妖帝」「女神よ永遠に」「転生の絆」を収録。
[編集] OVA
1987年、第一作『女神転生』を原作としたOVA『デジタル・デビル物語 女神転生』が発売された。2002年にパイオニアLDC(現・ジェネオンエンタテインメント)よりOVAをリマスタリングしたDVDが発売。映像特典として「北爪宏幸イラスト・ギャラリー」が収録されている。また、2007年1月26日にハピネットよりTOKUMA Anime Collectionとして再度DVD化される。こちらはオリジナルのネガフィルムからニュープリントを起こしてテレシネしなおし、画質を向上させたバージョンとなる予定で、劇場版予告編や北爪宏幸ギャラリーも収録される。
[編集] スタッフ
- 原作:西谷史 「デジタル・デビル・ストーリー 女神転生」(徳間書店・アニメージュ文庫)
- 監督・脚本:西久保瑞穂
- キャラクターデザイン:北爪宏幸
- 作画監督:恩田尚之
- 音楽プロデューサー:難波弘之
- 音楽:うさぎ組
- 製作:徳間書店・ムービック
- 発売:徳間書店