シンナー
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シンナー (thinner) はラッカー、ペイント、ワニスなどの塗料を薄めて粘度を下げるために用いられる有機溶剤である。「うすめ液」とも呼ばれる。英語 thin は「薄い」を意味する形容詞である。シンナーは独特の臭いを持ち、この臭いを嫌う人も多い。
塗料に含まれる樹脂・セルロース誘導体・添加物を析出しない、平滑な塗面を与える、などの特性を持つことが要求され、トルエン、酢酸エステル類、アルコール類などが利用される。
[編集] 毒性
特にトルエンを主として、シンナーに含まれる有機溶剤には中枢神経麻痺作用があり、蒸気吸引により酩酊状態になる。
依存性があり、吸引常習者は感情不安、意識障害、幻覚、妄想、一時的意識喪失などの症状が現れ、脳神経が冒されて中毒性精神病になりやすく、また大量に吸引すると呼吸麻痺をおこして死ぬこともある。
[編集] 作用
中枢神経麻痺作用があるのは、アルコール(酒)と同様に有機溶剤が脂溶性であり、大脳の構成物質も脂肪の一種であるリン脂質であることから、血液脳関門を容易に突破するためである。
[編集] 社会への影響
シンナーの依存性や毒性から、古今東西社会問題となる例が相次ぐ。そのため何らかの規制が敷かれることもあり、特に現代では法律によって規制される例が多い。
日本では、シンナー蒸気吸引が1967年ごろから青少年の間にシンナー遊びとして流行して社会問題化したことをきっかけに毒物及び劇物取締法を一部改正し、1972年8月1日より使用、販売等が規制されている。このことにより日本の法律ではシンナー蒸気吸引が非合法となり、違反を行なったものの取り締まりが行なわれるようになった。
また、シンナー遊びにおいてシンナーを詰めた袋のことを俗にアンパンという。袋からシンナーを吸う様子があんぱんを食べるさまに似ていることから。