シルビオ・ゲゼル
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シルビオ・ゲゼル(Silvio Gesell, 1862年3月17日 - 1930年3月11日)は、ドイツ人実業家・経済学者。現在はベルギー領になっているザンクト・フィット (Sankt Vith) に生まれる。若い頃より商業に関心があり、1886年(24歳)にアルゼンチンのブエノスアイレスに移住し、兄の店の支店を開く。事業は成功するものの、インフレとデフレを繰り返すアルゼンチン経済を問題視するようになり、金融問題の研究への関心を深めてゆく。1900年に欧州に戻り、晴耕雨読の生活を続けながら主要著書「自然的経済秩序」 (Die Natuerliche Wirtschaftsordnung) などを著す。1919年にバイエルンで結成されたランダウアー内閣に入閣するが、この内閣は1週間で瓦解してしまい、それ以来ゲゼルは苦渋の日々を送る。なお、アルゼンチン・ブエノスアイレス州にあるビジャ・ヘセル (Villa Gesell) は、シルビオの息子であるカルロスが開拓した保養地である。
彼の主要著書「自然的経済秩序」では、あらゆるものが減価するのに通貨だけが減価しないために金利が正当化され、ある程度以上の資産家が金利生活者としてのらりくらり生きている現状を問題視し、これを解決するために自由貨幣、具体的にはスタンプ貨幣という仕組みを提案した。一定の期間ごと(1週間あるいは1月)に紙幣にスタンプを貼らないといけないようにすることで通貨の退蔵を防ぎ、流通を促進させ貸出金利を下げるのが目的である。この他、男性に経済的に依存することなく女性が子育てに専念できるようにするため、自由土地の思想に基づいた母親年金もゲゼルは提唱している。
なお、地域通貨との関連でシルビオ・ゲゼルの名前が話題に出されることが多いが、ゲゼル自身は地域通貨(正確には国家以外が管理する通貨)には反対であり、あくまでも国家が責任を持って管理し、インフレもデフレもなく流通する通貨制度が彼の理想であったことは指摘しておく必要がある。
[編集] 外部リンク
- シルビオ・ゲゼル研究室:ここで「自然的経済秩序」の日本語訳が無料で読める
- 中立貨幣:ここで減価のしくみがわかりやすいグラフで紹介されている
- [1]:ゲゼルに関連した書籍を販売しているドイツの出版社(ドイツ語)。