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ゲティスバーグの戦い

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ゲティスバーグの戦い

戦争: 南北戦争
年月日: 1863年7月1日 - 7月3日
場所: ペンシルヴァニア州アダムズ郡近郊
結果: アメリカ合衆国の勝利
交戦勢力
アメリカ合衆国 (United States of America) アメリカ連合国 (Confederate States of America)
指揮官
ジョージ・ミード ロバート・E・リー
戦力
83,282人 75,054人
損害
死傷者 23,049人(死亡3,155人、負傷14,529人、捕虜/不明5,365人) 死傷者 28,000人(死亡3,500人、負傷18,000人、捕虜/不明6,500人)

ゲティスバーグの戦いBattle of Gettysburg)は、南北戦争における事実上の決戦。ゲティスバーグ戦役の中核を成し、アメリカ合衆国軍とアメリカ連合国が総力を結集して、最大の激戦となった。この戦いが転換点となり、合衆国軍が優勢となる(異論もある)。

目次

[編集] 背景

チャンセラーズヴィルの戦いが南軍の勝利に終わり、勢いに乗ったリー将軍は北部に更なる攻撃を企図した。目標はボルティモアフィラデルフィアでこれを攻略することにより北部の継戦意欲を失わせようとした。折も折、北軍は司令官をジョージ・フーカーからジョージ・ミードに変更した。6月3日に衝突が始まるとリー将軍は戦場に兵士を集結させ、騎兵を町の北西にある丘陵の尾根に配置した。だが実際には7月1日午前5時から本格的な戦闘が開始されている。それまでは取るに足らない小競り合いがあっただけであった。

[編集] 地理的背景

ゲティスバークは当時のアメリカにとってはとても重要な地点であった。それは、ゲティスバークが鉄道や主要道路が集まる交差点であり、そこを確保できれば戦争を有利に進められることも背景 にあった。つまりゲティスバークは補給と部隊増強が簡単に出来た場所だったのである。

しかし、実際には南軍、北軍とも動こうとはしなかった。理由としてはここに部隊を送り込むと必然的に衝突が避けられないこと(先に述べたとおり、両軍にとって補給及び部隊集結が容易に出来たからである)、衝突が起こることにより援軍増強による大規模な戦いが予想されたとされる。また、両軍の司令官はこの戦いを望んではいなかったが、6月ごろから起こり始めた小競り合いに尾ひれがつきついに衝突することとなった。

実際のところ両軍とも司令官が遠隔地にあることから意図的にこの戦いを避けていたとも言われる。

[編集] 戦闘経過

ゲティスバーグの戦い (破線は騎兵の動向) ██ アメリカ連合国軍 (南軍) ██ アメリカ合衆国軍 (北軍)
拡大
ゲティスバーグの戦い (破線は騎兵の動向)

██ アメリカ連合国軍 (南軍)

██ アメリカ合衆国軍 (北軍)

[編集] 序盤

ゲティスバーグの戦いは6月初旬ごろから起こっていた小競り合いから発展した戦いである。当初勢いのあった南軍は、北軍の勢力下にあったゲティスバーグを偵察する目的から部隊を送り込んだとされる。しかし、先に述べた地理的要因から衝突は頻繁に起こるようになったため、両軍は援軍をゲティスバーグに集結させた。このことにより、運命の7月1日午前5時を迎えることとなる。

[編集] 第一日

7月1日午前5時早朝、南軍の歩兵が北軍の騎兵を射撃したのがゲティスバーグの戦いの始まりとされる。当初はいつもどおりの小競り合いだったが、この日は両軍とも兵力がいつもより多く、大きな戦いに発展した。このとき衝突した部隊は北軍4個騎兵大隊に対し、南軍は2個歩兵旅団であった。北軍は援軍を待つ間、兵力面から見ても優勢な南軍の歩兵隊の前進をくい止めることに傾注、結果的にこれに成功した。

この初期の戦いが行われている間、ゲティスバーグの地理を生かし、両軍の大多数の援軍が集結する。午後になると南軍の総司令官リー将軍も到着した。北軍側は騎兵隊の応戦により南軍の進撃を止めていたものの、優勢とはいいがたかった。実際のところゲティスバーグの北と西の尾根の攻防戦では南軍側が優勢であり、この戦いで北軍の司令官レノルズ将軍が戦死した(砲撃による戦死とされる)。北軍側は後任としてハンコック将軍を任命した。ハンコックは防衛戦闘に優れる指揮官で、ゲティスバーグの南の丘に陣地を構築させ、さらにカルプス・ヒル、セミタリー・ヒル、セミタリー・リッジ、ラウンド・トップ、リトル・ラウンド・トップの防衛線を築いて守備隊を配置した。この防衛線によって、数キロにも及ぶ味方との連絡や援軍の増派がきわめて容易に行えるようになり、戦闘が有利に運ぶもととなった。不利であった北軍は徐々に勢力を盛り返し、均衡を保つことに成功した。

南軍のリー将軍は、北軍の陣地の構築が終わる前に攻撃をかけるべきだと判断し、配下の将軍に命令を出した。しかし、命を受けた将軍は南軍の損害を過大に評価しておりこの日の攻撃を中止した(7月1日)。この日の夜、北軍司令官のミード将軍がようやく戦場に到着する。彼は戦況を把握するとハンコック将軍が築かせた陣地を主体に防衛戦を続行することを決断した。

[編集] 第二日

攻撃を中止していた南軍は2日の早朝に攻撃をかけることを目標としていたが準備に手間取り、結局一日の終わりに近い午後4時ごろになって攻撃体制が整った。このことは北軍の有利に結びつくはずだったが、北軍ではシクルズ将軍の判断ミスにより、セミタリー・リッジより南側の守備軍を配置換えし、最前線に移動させていた。

この配置換えで手薄になったリトル・ラウンド・トップ陣地に南軍が攻撃を開始した。北軍はまたもや戦況不利となる。しかし、たまたまリトル・ラウンド・トップ陣地に通信兵がおり、南軍の行動をいち早く察知し報告、このとき戦況把握をしていたウォーレン将軍がこの情報を受け南軍の動きを確認した。リトル・ラウンド・トップ陣地が陥落すれば、北軍の戦闘不利が決定的であると察知したウォーレンは、出来る限りの部隊を移動させた。このとき移動させた部隊は数隊だったとされる。南軍の攻撃は熾烈をきわめ、陣地の近くの森と草原において展開された。ここで起きたリトル・ラウンド・トップの戦いはゲティスバーグの戦いの中でもっとも激しかったと言われている。

4時間にわたる熾烈な戦闘が行われたが、北軍のミード将軍の巧みな戦闘指揮により南軍は陣地の突破に失敗した。このとき北軍は兵力が不足していていたが、ミード将軍は南軍が突破しようとする所を変えるたびにその場所へ兵を移動させたのである。このころになって、この戦いに呼応するかのように、北側でも南軍の攻撃が開始されたがあっけなく敗退した。


[編集] 第三日

リー将軍は三日目の戦いも基本的には二日目の戦いと同一線上で行なう構想だった。即ち、ロングストリート将軍は北軍左翼を攻め、イーウィル将軍はカルプスヒルの北軍を攻撃するというものである。しかし、ロングストリートが攻撃準備を完了する前に前日の失地奪還を意図する北軍第12軍団のカルプスヒルへの砲撃が開始された。これに対し南軍のカルプスヒルへの2回目の攻撃が実施され午前11時迄7時間の苦しい戦いが継続された。

これによりリー将軍は作戦構想の変更を余儀なくされた。修正後の作戦ではロングストリートは揮下の第1軍団所属のジョージ・エドワード・ピケット将軍が率いるバージニア師団に、ヒルの軍団から抽出した6個旅団を加え、セメタリ-リッジに陣取る北軍左翼中央部の北軍第2軍団に対し攻撃を加える事になった。また、この攻撃を支援する為、南軍砲兵による北軍前線に対する砲撃が行なわれる事になった。

午後1時に170門の野砲による南北戦争最大規模の砲撃が開始された。砲撃に続いて実施されるであろう歩兵突撃に備え貴重な弾薬を節約する為、北軍砲兵は当初対抗射撃を行なわなかったが、15分程たってから、北軍野砲80門程が砲撃戦に加わった。大規模な砲撃ではあったものの南軍は弾薬不足で北軍に大きな損害を与える迄に至らなかった。

午後3時頃、砲火が静まり12,500人の南軍歩兵が姿を現して、1200メートル離れた北軍前線への前進を開始した。世に言う「ピケットの突撃(ピケット・チャージ)」である。激しい砲撃と北軍第2軍団からの銃火により、突撃した南軍兵士の過半数は自陣に帰還する事は無かった。北軍の前線は動揺し、防御用の低い石壁が部分的には破られたが、戦線への兵力増強が成功し、南軍の攻撃は撃退された。

この日は顕著な騎兵戦が2箇所で行なわれた。スチュアート将軍の騎兵部隊は南軍左翼の防御と歩兵戦の戦果を更に拡大し、北軍補給線と通信線を脅かす為、北軍右翼を迂回し、ゲティスバーグの5km東に進出し、ここで北軍騎兵と衝突した。グレッグ准将の騎兵師団とカスター准将の騎兵旅団である。長い互いにサーベルを交わす激しい白兵戦が戦われた。南軍ハンプトン旅団に対するカスターの突撃は南軍の攻撃を鈍らせ、北軍後背を脅かすというスチュアート将軍の目的を妨害する事となった。

一方、ピケットの突撃の後、ミード将軍は、キルパトリック准将に対し、ビッグラウンドトップ南西のロングストリート軍団歩兵陣地に対する騎兵攻撃を命じた。キルパトリック准将揮下のファーンズワース准将は、この行動の無益さを指摘し抗議したものの命令に従って攻撃を敢行したが、ファーンズワースの指揮する旅団は大きな損害を受け、自身も戦死した。

[編集] 戦闘の影響

3日合わせての被害者は両軍で50,000人を超えた。これ以降連合国軍はその勢力を漸減させていく。

[編集] エピソード

  • ゲティスバークは南北戦争最大の激戦だったが、砲撃の激しさもまた南北戦争最大であった。
  • ゲティスバークに南軍が残していった小銃を調べてみると、全小銃のわずか二十パーセントしか銃弾を使用していなかった。これは現在とは違って当時は、人を殺すことは道徳に反するとされていたと考えられている。(大規模な戦争はまだアメリカは体験していなかったため、人を殺すことを恐れていた兵士が多くいたという説もある)
  • ゲティスバークの戦いは世界最後の集団密集突撃が行われた戦いでもあった。
  • ゲティスバークの戦いの最後に南軍の大規模な突撃作戦が行われ、南軍は先頭に立った司令官以下陣地の突破に成功した。しかし成功した部隊は150名ほどだったといわれており、結局ほとんどが戦死して失敗に終わった。

[編集] 現在

当時の戦闘を再現するために、現在でも所々に詳細を説明する案内板とともに大砲やその他の武器が多数配置され、全米のみならず世界的に有名な古戦場の一つとして、夏季を中心に多くの観光客・見学者が訪れる。

[編集] 指揮官

[編集] アメリカ合衆国

[編集] アメリカ連合国

[編集] 関連項目

[編集] 参考文献

  • en:Battle of Gettysburg 6/12/2006 0:52 (UTC)
  • 「戦場の歴史:コンピュータマップによる戦後の研究」河出書房新社(1986)

[編集] TV

  • 「アメリカ南北戦争」NHK教育(1992)

[編集] 外部リンク

THIS WEB:

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