オセロ (遊戯)
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オセロ(Othello)は、日本で発表されたボードゲームである。2人のプレイヤーが交互に盤面に石を置き、最終的に石の数の多かった方を勝者とするゲームである。ルール上偶然の要素はなく、ゲーム理論では将棋や囲碁と同じく二人零和有限確定完全情報ゲームに分類される。双方が最善を尽くした場合、引分になる可能性が高いと言われている(盤面を6×6=36マスに縮小した場合、15対21で後手が必勝となる手順が既に解明されている)。単純なルールながらゲーム性は奥深く、“A minute to learn, a life time to master”(覚えるのに1分、極めるのに一生)をキャッチフレーズとする。
21世紀初頭の日本におけるオセロの競技人口は9000万人と言われるが、この競技人口にはルールを知っている人全てが含まれていると考えられる。商品名や商標に厳しいNHKニュースでは「白と黒の石を取り合うゲーム」と表現された。
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[編集] 遊び方・ルール
8×8の升目で構成された盤面を用いる。石は両面が白と黒になっており、黒のプレイヤーは黒い面で、白のプレイヤーは白い面で石を打つ。
まず中央の4升に白と黒の石をそれぞれ2個ずつ互い違いに置き、黒が先手となる。石を打つとき、縦・横・ななめ方向に相手色の石を自色で挟むと、挟まれた石を自色に返すことができる。石を打つときは、1枚でも返せる升にしか打てない。打てる升がない場合はパスとなり、パスの回数に制限はない。打つ場所が両者ともなくなった時点でゲーム終了となる。
なお、「オセロ」の初期配置は図のように石を置くのが公式ルールであるが、後述する「リバーシ」ではそうではない(中央に下図のように置いても良い)。
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オセロでは横の座標をa~hの小文字のアルファベットで、縦の座標を1~8の数字で表す。h1からa8までの対角線をブラックライン、a1からh8までの対角線をホワイトラインと呼ぶ。
[編集] オセロとリバーシ
全世界的には「リバーシ(Reversi)」として知られている。リバーシはオセロに大変よく似た遊び方と構成をしたゲームでその発祥は19世紀のイギリスである。諸説あるが、ウォーターマン(Lewis Waterman)とモレット(W. Mollett)の2人が先人争いをしている(モレットは、「リバーシは自分の発明したゲーム『アネクセイション』の改良に過ぎない」と主張している)。ちなみにハナヤマから発売されている逆転リバーシのパッケージの裏面には1888年頃にイギリス人によって考案されたと記載されている。
現在では、リバーシという言葉に2つの意味がある。1つは「19世紀のイギリス発祥の8×8のリバーシ」であり、もう1つは「駒(石)を挟んで裏返すゲームの総称」である。
19世紀イギリスのリバーシは、8×8の升目の盤と、表と裏のある円形の駒を使用するといった点でオセロと共通する部分がある。ルール上の違いとして、一方のプレイヤーが持っている駒がなくなったらその時点で終了だった(参考:世界遊戯法大全)。
駒(石)を挟んで裏返すゲームという意味でのリバーシについては、オセロが8×8=64個の升目で濃緑色の盤面に黒い罫線、駒は白と黒に限定されているのに対し、リバーシにおいてはそのような制限はない。また、最初の駒の置き方も、オセロでは白黒を必ず互い違いに置くが、リバーシでは白黒を同じ列に置いたり、最初の4手を中央の4升に交互に自由に置いてもよいし、先手が黒でなく白であってもよい。盤面も8×8の正方形に限らず、色々な大きさ・形がある。そして、リバーシでは「駒」、「(駒を)置く」と呼ぶところを、オセロではそのベースになったとされる囲碁と同じように「石」、「(石を)打つ(最初に4枚の石を置くときを除く)」と呼んでいる。そういった意味では、リバーシの特別な形がオセロということになる。
日本においては「リバーシ」という名称であってもオセロのルールで行われるのが普通である。ただし、知的財産権の関係かオセロの配色(濃緑色の盤面に黒い罫線)を意図的に避け、淡緑色の盤面に白い罫線などにしていることが多い。両面に白黒を配した石(駒)はそのまま用いられている。また、初期配置もオセロではd4とe5に白石が置かれることがルールで定められているが、リバーシでは逆にd4とe5に黒駒が置かれることもある(ハナヤマのリバーシの説明書ではd4とe5に黒駒が置かれている)。
[編集] ニップ
あまりメジャーではないが、ニップというオセロと類似したゲームがあり、ハナヤマから(リバーシを含む10種類程度のゲームのセットの中のひとつとして)発売されている。円形のボードを使用する。基本的なルールはオセロと変わらないが、隅が存在しないので全ての方向(縦、横、ななめに加えて円周も)の駒を返すことができる。そのため終盤でも展開が非常に読みにくい。
交点の数はオセロより少ない52個である。初期配置はリバーシと同じくd4とe5に黒駒を置く。外周を円形にしているため、図のa3~b3やc1~c2などの交点が接近している場所は駒が置きにくいという欠点がある。
[編集] オセロの歴史
リバーシは明治期に日本にも輸入され、「源平碁」(赤と白の駒を使う)および「レヴァルシー」「裏がへし」という名前で広まったが、長く楽しまれることはなく廃れた。
その後、1973年に日本の長谷川五郎が独自に現在のオセロのルール及びパッケージを発表した後は、リバーシとオセロは同一のゲームであると認識されている。最初に発売されたオセロの石のサイズ(35mm)は牛乳瓶の紙蓋とほぼ同じ大きさである(これは長谷川が初めてオセロを試作した際牛乳瓶の紙蓋を用いて石を製作したためである。現在も公式試合ではこのサイズを用いる)。名称の由来はシェイクスピアの「オセロ」のストーリーが黒人と白人の関係がめまぐるしく変わる様であることから取ったという。このネーミングは長谷川の父親の長谷川四郎によるものだ。
さて、オセロはオセロとリバーシの項で述べたとおり、囲碁をベースにして生まれたゲームだが、長谷川が中学時代に思いついた、囲碁の黒石、あるいは白石を挟んだらその度に挟んだ相手の石を取るというルールのゲームが発端だという。しかし、それではゲームが進行するごとに石を取り替える手数が増えるため、両面が白と黒の石をボール紙で作って遊びやすくしたのである。前段で述べた牛乳瓶の紙蓋を用いた石はその後に登場し、商品化の際の試作にも使われた。
現在は長谷川のオセロは、ゲーム製品として「オセロ(Othello)」という商品名で各国にライセンスされ発売されている。日本では玩具メーカーのツクダが商標登録を行い同年4月に発売した。盤と石がマグネット式で、盤が折り畳み可能なもの、盤に石ケースが内蔵されたものなど、オセロの製品バリエーションはその後徐々に充実していった。後にオセロに関する権利は子会社のツクダオリジナルに移され、ツクダオリジナルは2003年3月にワクイコーポレーションと合併してパルボックスとなり、2005年4月にメガハウスのパルボックス事業部、翌5月に同社の第四事業部となっている。
2004年7月にオセロ極(-きわめ)が発売されている。これはオセロ盤の各升の内部に石が置かれていない状態・黒石が置かれた状態・白石が置かれた状態の3つの状態を持った回転体が仕込まれており、石を紛失することがなく、石の反転もスムーズにできるといった利点がある。翌年2月にこれを小型化し、持ち運びに便利にしたオセロ極Jrも発売された。
[編集] 大会
全日本オセロ選手権大会(1973年~)や世界オセロ選手権大会(1977年~)など、幅広く大会が行われている。ちなみに2006年に行われた第30回世界オセロ選手権大会は、三十(みと)と、オセロの発祥地である水戸をかけて、同市で行われた。