ウクライナ語
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
この項目の一部の版または全体について、削除の手続きに従って、削除が提案されています。
この項目の執筆者の方々へ: まだ削除は行われていません。削除に対する議論に参加し、削除の方針に該当するかどうか検討してください。
この項目は著作権侵害が指摘され、現在審議中です。
審議の結果、該当する投稿以降の版全てもしくはこの項目自体が、履歴も含めて削除される可能性があります。この版の編集や引用はしないで下さい。著作権上問題のない自分の投稿内容が削除される可能性のある方は、早めに控えを取っておいて下さい。(→詳しくはこちらの解説をお読み下さい。)
該当する投稿をされた方へ: ウィキペディアでは、著作権上問題のない投稿のみを受け付けることになっています。他人の著作物を使うときをお読み頂いた上で、審議にご協力をお願いします。
審議が終わるまで、このお知らせを除去しないでください。
ウクライナ語 українська мова |
|
---|---|
話される国 | ウクライナ |
地域 | 東ヨーロッパ |
話者数 | 3940万人 |
順位 | 26 |
言語系統 | インド・ヨーロッパ語族 |
公的地位 | |
公用語 | ウクライナ |
統制機関 | |
言語コード | |
ISO 639-1 | uk |
ISO 639-2 | ukr |
ISO/DIS 639-3 | |
SIL |
ウクライナ語(Українська мова)はインド・ヨーロッパ語族のスラヴ語派の東スラヴ語群に属する言語。ウクライナの国家語および公用語。キリル文字を使用する。ロシア語、ベラルーシ語と極めて近縁の言語であり、純言語学的には同一言語内の変種と見做される。
目次 |
[編集] 文字
ウクライナ語で使われるキリル文字の呼び方は次のようである。
アー | ベー | ヴェー | ヘー | ゲー | デー | エー | イェー | ジェー | ゼー | ゥイー | イー | ィイー | イョト | カー | エル | エム | エヌ | オー | ペー |
А | Б | В | Г | Ґ | Д | Е | Є | Ж | З | И | І | Ї | Й | К | Л | М | Н | О | П |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
エル | エス | テー | ウー | エフ | ハー | ツェー | チェー | シャー | シチャー (シシャー) |
ムヤークィー ズナーク |
ユー | ヤー | |||||||
Р | С | Т | У | Ф | Х | Ц | Ч | Ш | Щ | Ь | Ю | Я |
А、И、У、Е、Оは硬母音。Я、І、Ї、Ю、Єは軟母音。Йは子音。
硬音記号としてアポストロフィーを用いる。
ウクライナ語のキリル文字 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
А | Б | В | Г | Ґ | Д | Е | Є | Ж | З | И | І | Ї | Й | К | Л | М | Н | О | П | Р | С | Т | У | Ф | Х | Ц | Ч | Ш | Щ | Ь | Ю | Я | |||||
а | б | в | г | ґ | д | е | є | ж | з | и | і | ї | й | к | л | м | н | о | п | р | с | т | у | ф | х | ц | ч | ш | щ | ь | ю | я |
[編集] 正書法・音声・音韻
- 正書法はベラルーシ語同様、表音主義の立場をとっているため、ロシア語に比べ、発音どおりに綴る傾向が強い。例;Россия /rossija/ [rasija] - Росія /rosija/ [rosija]
- 硬母音Оに対応する軟母音は、Оの前に子音Й, 軟音記号Ьをつけて表す。例;цього、йому
- ロシア語のЪが原則として接頭辞の直後にのみくるのに対し、ウクライナ語のアポストロフィ(ロシア語のЪに相当)はそれ以外の位置にもくる。例;любов'ю
- アクセントのある母音は強く、やや長めに発音するが、アクセントの有無による母音の目立った音変化は見られない。
- И({y})は語頭に来ず、Ї({ji})は子音の後に来ない。
[編集] 音韻的対応
- ポーランド西部からウクライナ・ベラルーシにかけて、スラヴ祖語の/g/を[h]で発音する傾向がある。これはチェコ語・スロヴァキア語とも共通している。
- І/i/、Ї/ji/はロシア語ではЕ/je/になっている場合が多い。これは、東スラヴ語群祖語のѢがウクライナ
語では/i/、/ji/に、ロシア語では/je/に統合されたためである。例;Лето /ljeto/ - Літо /lito/(夏)
[編集] ウクライナ語の文法
[編集] 名詞
名詞は、男性、中性、女性の3つの性に分かれ、単数形・複数形を持つ。 名詞の語尾は、男性名詞は子音、-й、-ь、-о、女性名詞は子音、-а、-я、-ь、中性名詞は-о、-е、-яである。子音で終わる女性名詞があり、яで終わる中性名詞の語尾もロシア語に比べて多彩であるため、性の見分けはロシア語に比べてやや困難である。
名詞の格は主格、呼格、生格、与格、対格、造格、前置格の7種類である。
[編集] 人称代名詞
単数 | 複数 | |
---|---|---|
一人称 | я -私は(I) | ми -私達は(we) |
二人称 | ти -君は(you) ви -貴方は(敬称) |
ви -貴方達は(you) |
三人称 | він -彼は(he) вона -彼女は(she) воно -それは (it) |
вони -彼らは 彼女らは それらは(they) |
表中は全て主格を用いている。
[編集] ウクライナ語小史
ウクライナ語は、東スラブ人の最古の国家であるキエフ・ルーシの崩壊後、ロシア語やベラルーシ語とは別の独自の発展を遂げてきた。長らくポーランド王国の影響下に入った西ウクライナからドニエプル・ウクライナにかけての地域ではポーランド語の影響がより強く見られ、ベラルーシとともにリトアニア大公国の支配下に入った北ウクライナからドニエプル・ウクライナにかけての地域では、ベラルーシ語の特徴であるアーカニエの欠如などベラルーシ語の影響が見られた。キエフを含む東ウクライナが、ヘーチマーン国家としてポーランド・リトアニア連合の支配下から脱した17世紀以降、ヘーチマーンの庇護の下、ドニエプル・ウクライナを中心にウクライナ語文化の著しい発展が見られた。また、ポーランド王国のもとに留められた西ウクライナでは、リヴィウを中心にウクライナ語文化の独自の発展が見られた。だが、その後ヘーチマーン国家はモスクワ大公国・ロシア帝国のより強い影響下に置かれるようになり、18世紀のうちには東ウクライナは完全にロシアに併合された。その後、ポーランド分割を経てウクライナの大半はロシア帝国の領土に収められた。ロシア帝国の強力な中央集権体制の下で、ウクライナ文化は分離主義的であるとして弾圧され、ウクライナ語の使用も制限されるようになった。そもそも、ロシア帝国ではウクライナ語という言語の存在は認められていなかった。ロシア帝国では、これを「ロシア語の小ロシア方言]]と規定しており、公式文書や「真面目な」文学作品などはすべてロシア語で記述された。
ウクライナ文化圏では、従来ロシア語、ポーランド語、ドイツ語、そしてウクライナ語など多言語による舞台用喜劇脚本が多く物されてきた。そうした中で、初めてのウクライナ語文学と認められているのはポルタヴァのイヴァン・コトリャレフスキイによって18世紀末に書かれたパロディー叙事詩『エネイーダ』であった。コトリャレフスキイはオペレッタ『ナタールカ・ポルターウカ』でも知られ、ウクライナ近代文学の祖とされている。これらは、いずれも喜劇やパロディーという性格を持ち、当時は「真面目な」文学からは明確に区別された分野の作品であった。ニコライ・ゴーゴリなどのようなより「真面目な」作品を書いて世に認められることを望む作家は19世紀を通じてロシア語での執筆活動を続けた。この時代の作家は、ウクライナ語=小ロシア方言で書いて文壇に認められることはありえなかった。なお、ニコライ・ゴーゴリの父ヴァシーリ・ホーホリ(ロシア語名:ヴァシーリイ・ゴーゴリ)はウクライナ語の喜劇作家であった。
ウクライナ語の歴史は、文語として長らく用いられた教会スラヴ語と口語として用いられたいわゆるウクライナ語との関係の間に成り立っていた。現代ウクライナ語の父とされるタラス・シェフチェンコは、ウクライナ語の豊富化を図るため積極的に教会スラヴ語からの借用を行った。しかし、このやり方はのちの作家・言語学者に拒否され、以降ウクライナ語は口語を中心に外来語や各地の方言を取り入れて発展させられていくことになった。イヴァン・フランコやレースャ・ウクライィーンカも、ウクライナ語の発展に大きな貢献のあった人物として知られる。
ウクライナ化政策の採られた1920年代のウクライナ社会主義ソビエト共和国では、1927年に初めての正式な正書法である「1927年正書法」が定められた。しかし、これは1930年代の反ウクライナ化政策の時代に改竄され、ロシア化が行われた。
現代のウクライナ語はこの「1927年正書法」に拠っている。この正書法は基本的にドニプロペトロウシクの方言に拠っていると言われ、それに西ウクライナ・ハリチナーなどの方言が加えられている。
[編集] 主な表現
- はい Так. ターク
- いいえ Ні. ニー
- 私はあなたが好きです Я вас люблю. ヤー・ヴァース・リュブリュー (本来は身近でない相手に対する言い方。現代では目上や自分の親くらいの年齢の相手、40代・50代を目安におじさん・おばさんと思われる相手、または複数の相手に対する言い方)
- 私はあなたが好きです Я тебе люблю. ヤー・テベー・リュブリュー (本来は身近な相手に対する言い方。現代ではそれに加えて一般に若い相手、30代くらいまでの相手に対する言い方)
- 私はこれが好きです Я це люблю. ヤー・ツェー・リュブリュー
- おはようございます Доброго ранку. ドーブロホ・ラーンク
- こんにちは Добрий день. ドーブルィイ・デーニ
- こんにちは Добридень. ドブルィーデニ
- こんばんは Добрий вечір ドーブルィイ・ヴェーチル
- おやすみなさい Добраніч ドブラーニチュ
- やあ、どうも、こんにちは (最も一般的な挨拶) Привіт. プルィヴィート
- さようなら До побачення. ド・ポバーチェンニャ
- ごめんなさい Вибачте. ヴィーバチュテ
- お願いします Прошу (вас / тебе). プローシュ(・ヴァース / テベー)
- お願いします Будь ласка ブージ・ラースカ
- はい、いいですよ、よろしい Добре. ドーブレ
- はい、よし Гаразд. ハラーズド
- オーケーです、大丈夫です、問題ありません、いいですよ Нормально. ノルマーリノ
- だめです、悪い Погано. ポハーノ
- だめです、してはいけない Не можна. ネ・モージュナ
- 私(女)はおなかが空きました Я голодна. ヤー・ホロードナ (男性の場合はЯ голодний. ヤー・ホロードヌィイ)
- お名前は? Як Вас ( / тебе) звати? ヤーク・ヴァース( / テベー)・ズヴァーティ?
- 私の名前は()です Мене звуть (). メネー・ズヴーチ・()
- 春 весна ヴェスナー
- 夏 літо リート
- 秋 осінь オースィニ
- 冬 зима ズィマー
- パン хліб フリーブ
- かぼちゃ гарбуз ハルブーズ
- ブリャーク буряк ブリャーク
- 雪 сніг スニーフ
- 雨 дощ ドーシュチュ
[編集] 日本語のウクライナ語転写
必ずしも日本語の発音通りとはならないが、日本語をウクライナ語アルファベットで表記する場合には以下のようなものが用いられている(大文字で表示)。ウクライナ語話者の間で日本語を勉強する人口がそれほど多くないこともあり、あまり研究されているとは言えないが、ソ連時代に盛んに行われたロシア語による日本語研究を背景に転写法は十分に整備されているといえる。
[編集] 段
ウクライナ語では「母音」となる。この他、ウクライナ語の仕組みに従い、日本語の「や行」も母音扱いされる場合がある。
- あ段 - А
- い段 - І
- う段 - У、但し、「です」(DESU)のように「短いう」であるとウクライナ(ソ連)の研究によって判定されているものに関しては、「У」ではなく「Ў」を用いることもある。
- え段 - Е
- お段 - О
[編集] 行
ウクライナ語では「子音+母音」となる。
- か行 - К
- さ行 - С、但し、「しゃ、し、しゅ、しぇ、しょ」については「С+軟母音」で表す場合と「Ш+硬母音」で表される場合がある。
- た行 - Т、但し、「ちゃ、ち、ちゅ、ちぇ、ちょ」については「Ч」で表される場合が多い。
- な行 - Н
- は行 - Х、但し、「Г」で表される場合もある。また、「ふ」は「Ф」が用いられる場合が多い。
- ま行 - М
- や行 - 「や、い、ゆ、いぇ、よ」の順に「Я、І、Ю、Є、ЙО」で表されることが多い。小さい「ょ」については「ЬО」が用いられる。
- ら行 - Р
- わ行 - В、但し、これでは「ヴァ行」の発音になってしまうため、「わ、うぃ、う、うぇ、うぉ」を表すために「У+母音」という方式が採られることもある。「を」は「お」と区別されない場合が多い。
- が行 - Ґ、但し、「Г」が使用される場合もある。鼻濁音は表記されない。
- ざ行 - ДЗ、但し、「З」が用いられることも多い。「じゃ、じ、じゅ、じぇ、じょ」に関しては発音の類似上「ДЖ」が用いられるが、「Ж」で代用されることも多い。
- だ行 - Д、但し、「ぢゃ、ぢ、ぢゅ、ぢぇ、ぢょ」に関しては「じゃ、じ、じゅ、じぇ、じょ」の場合と同様の表記が用いられることが多い。
- ば行 - Б
- ぱ行 - П
[編集] その他
- ん - Н、但し、発音は日本語の「ん」とは大きく異なり「ぬ」という印象が強い。
- ヴ - В